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24年前、トップギタリストとタッグを組んだ“挑発的タイトル” 「未来がない」と歌ったワケ

  • 2025.12.31

24年前の冬、街には世紀末の余韻と、新しい時代へのざらついた期待が同時に漂っていた。2001年という数字が現実味を帯び、未来という言葉がどこか軽く、しかし不安定に響いていた頃だ。

音楽もまた、前向きなメッセージだけでは足りなくなり、もっと直接的で、もっと荒々しい感情を求め始めていた。そんな空気の中で放たれたのが、この一曲だった。

相川七瀬『NO FUTURE』(作詞:相川七瀬・作曲:布袋寅泰)――2001年1月31日発売

タイトルからして挑発的。だがそれは、投げやりな絶望ではなく、「それでも進むしかない」という覚悟を孕んだ言葉だった。

叫ぶためではなく、立つためのロック

相川七瀬にとって『NO FUTURE』は18枚目のシングル。デビュー以降、ロック色の強い楽曲で存在感を築いてきた彼女だが、この曲はその中でもとりわけ“硬質”な質感を持っている。

作曲を手がけたのは布袋寅泰。日本のロックシーンを語る上で欠かせない存在であり、80年代から一貫して「個」を貫いてきたギタリストだ。その布袋が書いたメロディは、装飾を削ぎ落とし、鋭いリフと直線的な展開で構成されている。

そこに重なる相川七瀬のボーカルは、感情を過剰に乗せることなく、むしろ冷静な強さを帯びている。叫びではなく、宣言に近い声。それが、この曲を単なるハードなロックに終わらせなかった。

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2000年、六本木のハードロックカフェ東京でアコースティックライブを行った相川七瀬(C)SANKEI

“未来がない”と歌うことで、生き方を示す

『NO FUTURE』という言葉は、本来ならば破壊的で、ネガティブな響きを持つ。

だがこの曲では、その言葉が奇妙なほど前向きに響く。それは、未来が保証されていないからこそ、今を選び取るしかないという感覚。

先が見えない時代において、「希望」を語るよりも、「覚悟」を差し出す方が、よほど誠実だったのかもしれない。

2001年という時代背景を考えれば、この感触は決して偶然ではない。バブル崩壊後の停滞、価値観の揺らぎ、成功モデルの崩壊。そんな中で、この曲は“強がりでもいいから立っていろ”と、静かに背中を押していた

アニメというフィールドで鳴った、本気のロック

この曲は、TBS系アニメ『ZOIDS新世紀/ZERO』のオープニングテーマとして起用された。一見すると、ロック色の強いこの楽曲と、アニメ作品の組み合わせは意外にも映る。だが、作品の世界観と『NO FUTURE』の持つ緊張感は驚くほど相性が良かった。

戦い、選択し、前に進むしかないという物語構造は、この楽曲が内包するメッセージと自然に重なっていた。結果としてこの曲は、「アニメ主題歌」という枠を超え、作品の空気そのものを象徴する存在となった。

子供向けという言葉では括れない、硬派なロックが、日曜のテレビから流れていたという事実もまた、この時代ならではだ。

強さは、派手さとは別の場所にある

『NO FUTURE』は、相川七瀬のキャリアの中でも、派手な転換点として語られることは多くない。だが、聴き返すほどに、その芯の強さが浮かび上がってくる。

飾らない言葉、直線的なサウンド、逃げ道を用意しない構成。それらが合わさることで、この曲は「時代を映した一瞬」ではなく、「生き方の選択肢」として残った。

未来が見えないことは、弱さではない。むしろ、それを直視したうえで進もうとする意志こそが、ロックの本質なのだ。

24年経った今、この曲を聴くと、当時よりもはっきりとその意味が胸に響いてくる。不確かな時代は、いつだって続いている。だからこそ、『NO FUTURE』は今も、過去の曲では終わらない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。