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96年初頭、3人の歌声が重なった“愛の旋律” 静けさで心を掴んだ“40万ヒット”のワケ

  • 2025.12.27

「29年前、冬の街にどんな音が流れていたか覚えてる?」

冷たい風がビルの隙間を抜け、夕暮れが早く落ちてくる季節。まだ街に少しだけバブルの残り香が漂っていた1996年の始まり。そんな時代に、凛とした気配をまとって姿を現した1曲がある。

THE ALFEE『LOVE NEVER DIES』(作詞・作曲:高見沢俊彦)――1996年1月29日発売

冬の透明な空気の中で、このタイトルを聴いただけで胸がきゅっと締めつけられた人も多かったはずだ。THE ALFEEが見せた“静かな情熱”。その余白に、当時の街の空気がそっと映り込んでいた。

冬の気配をまとった、バンドの新たな表情

『LOVE NEVER DIES』は、THE ALFEEが1996年の幕開けに放ったシングルであり、3人が持つ音楽性のバランスが静かに研ぎ澄まされた作品だった。

作詞・作曲を手がけたのは、バンドの中心でもある高見沢俊彦。冬に似合う切なさと、永遠を思わせる強さが同居したメロディラインが印象的だ。

この曲は日本テレビ系ドラマ『奇跡のロマンス』の主題歌としてオンエアされたことで、当時の視聴者にも強く刻まれた。テレビから流れるたび、物語の温度感とリンクし、日常の中にそっと深い余韻を残していく。

発売当時、ランキングでも上位に入り、セールスは40万枚以上と広く支持を集めた事実が、作品の確かな存在感を物語っている。

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2006年、東京・台場で100人限定ライブを行ったTHE ALFEE(C)SANKEI

静かな熱を帯びた、揺るぎないメロディ

『LOVE NEVER DIES』の魅力の核は、やはりその“静かな熱”にある。

激しさではなく抑制された情緒で押し上げていくメロディは、聴くほどに深く沈み込むような美しさを帯びている。Aメロで静かに揺れるラインが、サビでゆっくりと開けていく。その構造が、曲全体をまるで“冬の夜に灯るひとつの光”のように見せているのだ。

加えて、3人それぞれの声が持つ個性がここぞとばかりに生き、コーラスワークの繊細さが楽曲の情緒を見事に支えている。長いキャリアで磨かれた“声の調和”が、言葉で説明しがたい温度をつくっているのだ。

1996年に刻まれた、ひとつの結晶

この曲が発売された1996年初頭は、音楽シーンが急速に多様化していく時代だった。

ダンスミュージック、ロックバンド、アイドル、アニメ主題歌。さまざまなジャンルがランキングを賑わせ、その中で『LOVE NEVER DIES』は“熱い静けさ”で存在感を示した稀有な作品だった。

29年が経った今、この曲を聴くと当時の街の風景がふと蘇る。白い息、曇った電車の窓、帰り道のコンビニの灯り。小さな情景が、メロディに触れた瞬間に鮮やかさを取り戻す。

愛は消えない。想いは途切れない。そんな普遍的なメッセージを、声高に言わずとも伝えてくれる曲。それが『LOVE NEVER DIES』という作品の本質なのだろう。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。