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大人の富良野旅で出会う、ぶどう畑に息づく情熱――「カムイ・メトッ・ヌプリ」と「多田農園」が育む北海道産ワインの可能性

  • 2025.11.18

アルコール全般と地元・北海道をこよなく愛するライター・オサナイミカが、今こそ知ってもらいたい、北海道のワインのこれからを綴ります!

新旧4つのワイナリーで盛り上がる、富良野地区

Sitakke

以前、「50周年を迎えた、ふらのワインのこれからのこと」という記事でご紹介したことがありますが、今回は上富良野町や中富良野町にある3つのワイナリーも含めた、富良野地区のワインの魅力についてお伝えします。

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9月上旬に、ふらのバス(株)ふらの旅行さんが企画した【シニアソムリエ高橋克幸さんと行く 富良野エリアの4つのワイナリーを巡る 大人の富良野旅3日間】に同行し、ワイナリーを取材させていただきました。

最初に訪れたのは、2023年に開設された上富良野町の新しいワイナリー【カムイ・メトッ・ヌプリ】さん。アイヌ語で、十勝岳連峰の“神霊のある山の尾根”という意味。国内最大級の有機農場を運営する『トカプチ(更別村)』が運営しています。

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“自然と調和し、精神の伴うワイン造りを”
これがカムイ・メトッ・ヌプリが掲げている想い。ワイナリーにあるログハウスに使用しているカラマツの木は、自社農場の森林から新月伐採(※)したもの。月のリズムに合わせて森と共生する哲学が、自然と調和するという想いに繋がっています。ちなみにログハウスの屋根は八角形になっていて、循環する円をイメージしたそうです。さらにお隣りにある醸造所とつなげた形は、円環するメビウスの輪状を表現。なんという徹底ぶり!!

(※)新月伐採とは…新月の時期、またはその直前に木を切ること。月の満ち欠けを利用した、自然のリズムに合わせた伐採方法。

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そして最も印象に残ったのが、醸造に使用するテラコッタ(壺)!イタリアで特注して造ってもらったそうで、よく見ると形にかなりバラつきがあります(笑)

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カムイ・メトッ・ヌプリで栽培しているぶどうは全て山幸。北海道に自生していた山ぶどうのルーツを持つ品種。富良野地区は山々に囲まれた盆地で、寒暖差も厳しい場所。山幸は耐寒性もあり病気にも強いことから、より自然な環境でワイン造りをしていきたいカムイ・メトッ・ヌプリにとって、理想的なぶどうだったのです。

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厳格な自然はワイン造り(バイオダイナミック農法※)を行っているので、農場に撒く肥料もすべて自作。この辺りに興味がある方はぜひ、色々と深堀してみて下さい。

※バイオダイナミック農法とは・・・
化学肥料や農薬を使わず、天体の動きや自然界のエネルギーを農業に取り入れ、農場そのものを一つの生命体として捉える農業システム。

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ワイン造りに対する想いを丁寧に説明してくれた、遠藤さんと浜田さん。自社のワイナリーが完成するまでは、岩見沢の10Rワイナリーで委託醸造していただき、醸造技術も学んだそう。現在は7.5ヘクタールの畑で山幸を栽培し、約10トンを収穫。2024年ヴィンテージは約10000本のワインが誕生。また、近い将来直売所も予定しているそうです。

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今回は大人の富良野旅ということで、特別に醸造所内で“ミンツチ2024”を開けていただきました!
オサナイは何度も山幸のワインを飲んだことがあり、山ぶどう特有の渋みがあるワインだなという印象がありますが、ミンツチは言われなければ山幸とは思わないようなフレッシュなフルーツ感があり驚きました。ただ、あとからじんわりと山ぶどうらしさも感じることが出来、今までにない山幸の味わいに驚きを隠せませんでした。

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案内人の高橋シニアソムリエ(元ふらのワイナリーの醸造責任者で、2024年に独立)も、ちょっと驚いていた様子。山幸でこのような味わいが出るとは、北海道のワインの可能性がさらに広がった瞬間でした。

1901年に兵庫から入植した農家がワイナリーへ!

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次に訪れたのは、こちらも上富良野町にある【多田農園】さん。農園というだけに、最初はニンジンや玉ねぎを栽培する農家さんでした。

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それが今では約10000本・8種類のぶどうを植え醸造もする、富良野では2番目となるワイナリーに。

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写真に写っていらっしゃるのが、オーナーの多田さん。いったいなぜ、ワイン造りを始めることになったのでしょうか?

「実は昔からワイン造りには興味があり、書籍などを読んでおりました。その当時新しいワインの生産地として注目されていたナパ・バレーを視察する機会があり、25年前のワインに対する思いが少し蘇ってきました。そして2007年に偶然岩見沢にある宝水ワイナリーに立ち寄った際、当時の社長との出会いが縁で、余っていたぶどうの苗木を植えないかとの誘いを受け、700本のピノ・ノワールの苗木を譲り受けたのが始まりです。」

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そこからバッカスやミュラー・トゥルガウ、シャルドネなど、徐々に品種を増やしていったそうですが、寒冷地での栽培は苦労も多く、メルローは凍結で一度全滅したことも・・・そんなお話を聞くと、北海道の冬の厳しさを実感します。

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そして、苗木を植えてから10年目の2016年に自社ワイナリーを開設。野生酵母で造った、その土地そのものを感じることができる特徴的なワインを醸造しています。

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当初はワイナリーをするつもりはなかったと多田さんはおっしゃっていましたが、多田ワイナリーを地域のワイナリーとして育て上げ、地域文化づくりに貢献できたらという想いが生まれたそう。さらにワイン事業は自分の時代のみならず、次世代に引き継ぎ発展することができる事業だと実感。その想いが伝わったのか、2年前には息子さん夫婦が戻ってきて、ぶどう造りを手伝ってくれることに。
食事会での息子さんの挨拶を聞いて、すごく嬉しそうだった多田さんが印象的でした^^

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この日は多田農園さんの敷地内に一夜限りのレストランが出現!(さすが、大人の富良野旅!)

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沈む夕日を眺めながら頂いた、メルロ ブラン・ド・ノワール2024の美しさは一生の思い出となりました。
ちなみに多田農園さんは、期間限定ではありますが宿も営業しており、ぶどう畑に囲まれて、美味しい朝食を味わうこともできるそうですよ。

後半の記事では、さらに2つのワイナリーをご紹介します。

★カムイ・メトッ・ヌプリ https://tokapuchi.jp/natural-wine/
★多田農園 https://ninjin-koubou.com/
★ふらのワイナリー http://www.furanowine.jp/
★ドメーヌレゾン https://domaine-raison.com/

※参考資料 ふらのワイン旅2024
https://drive.google.com/file/d/1j0f2iRmeHyqt3GVlpaQ4yMGgocJhpF2r/view
★北海道ワイン教育研究センター【ワインテイスティング・ラボ】
https://www.instagram.com/wine_center_hokkaido_u
★ふらの旅行 https://www.furanobus.jp/tour-center/

※掲載の内容は取材時(2025年9月)に基づきます。

連載「#ソロ飲みのススメ」
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文・写真:オサナイミカ(一部、先方提供)
Edit:Sitakke編集部YASU子
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【ライター:オサナイミカ PROFILE】
札幌生まれ・札幌育ちの、アルコールをこよなく愛するアラフィフ、中学生の息子の母。 (株)リクルートが発行する情報誌生活情報サンロクマル(現Hot Pepper)の営業を経て、 2007年よりWEB情報サイトSapporo100milesの編集長として15年間、札幌や北海道の食と観光の情報を 【オサナイミカのつぶやき】を綴り続け、2022年11月からはSAPPORO YARDにて、【オサナイミカが行く!】をスタートしている。

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