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「ししゃものようにたくましく」町の主役を幻にしない…3年で見えた復活の兆しとは

  • 2025.11.16

シシャモの町として知られる、北海道・むかわ町。

生息地が、北海道の太平洋沿いに限られるシシャモは毎年10月下旬から11月まで、産卵のため、海から川へと遡上します。
そんな北海道固有の秋の味覚で、長年、むかわ町の港やマチはにぎわってきたのですが、今は静かな時間が流れています。そんな町のピンチは前回の記事でお伝えしました。

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地元でとれたシシャモを「すだれ干し」にして、店先に並べていた海産物の専門店・カネダイ大野商店。

大野秀貴代表は「いま販売しているししゃもは、北海道の襟裳地区や広尾町、大樹町といった、道東方面から新物ししゃもを仕入れて、製造・加工しています」と話します。

校歌にも「シシャモ」?

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むかわ町を歩いてみると、マンホールの蓋をはじめ、シシャモがデザインされたステンドグラスを施した街灯も。
ほかにも、意外な場所で、シシャモというフレーズを見つけることができました。

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『ししゃものようにたくましく』」

そう書かれたのは「校歌」です。

むかわ町農業水産課の岩舘宏樹主任は「鵡川中央小学校の校歌には、シシャモが入っています」と教えてくれました。

かつては庶民の味として、地元の食卓でも親しまれてきた、むかわ町のシシャモ。
子どもから大人まで、町民の誰にとっても大切な存在です。

分かれる明暗

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いち早くブランド化したことが功を奏し、いまや高級食材となったシシャモ。
マチの誇りともいえる名産品として知られています。

そんな町の主役はなぜ、激減してしまったのか。
道立総合研究機構では「むかわ沖の海水温上昇がシシャモの成長などに影響しているのではないか」という視点を含め、さらなる調査を継続しています。

一方、むかわ町から陸路で250キロほど離れた、太平洋沿岸東部の白糠町。
10月21日、シシャモ漁が解禁になり、漁港はにぎわっています。

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白糠漁協ししゃも部会の加藤直人部長は「きょう(10月21日)はうちの船で10箱くらいだね。13キロ入りのシシャモが10箱くらい獲れた。最初の予想では魚体が小さいと言われていたけれど、割と大きめだったね」と話します。
釧路でも10月中に漁が始まる見通しで、同じ太平洋沿岸で、明暗が分かれています。

復活をかけた挑戦

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こうした状況の中、むかわ町では「シシャモを幻の魚にしてはいけない」そんな強い思いから、町の主役復活をかけた取り組みが始まっています。

「むかわ町では、鵡川の河口から遡上してきたシシャモを捕獲して、このふ化場に収容します」

教えてくれたのは、むかわ町農業水産課の岩舘宏樹主任です。

むかわ町は3年前、7億5千万円以上を投じて、ふ化場を新設しました。ここを拠点に、卵から稚魚を育て、春に放流。未来へ向けた資源回復に取り組んでいます。

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2023年

「ふ化場に敷いた砂利に、卵が付着して、春になったらシシャモがふ化する」

2024年は、遡上してきた2万4千尾ほどを、ふ化場に収容。
徹底した水温管理の中、7300万粒もの卵を育て、今後、1億粒を目標にしています。
試験操業での明るい兆しに、シシャモの専門店・カネダイ大野商店も期待を寄せます。

「むかわ町でも試験操業、船を出して調査をした。5センチ前後の赤ちゃんシシャモがたくさん入ったらしい。ふ化場で産まれたシシャモが、たくさん帰ってきて来年以降に繋がっているんじゃないかなと、明るい兆しも見えますので、来年には期待しております」

町の宝を未来へ

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そしてむかわ町は今年、マチの条例で11月1日を『むかわ町ししゃもの日』と制定しました。
この日を復活への節目にしたい…、町はそんな願いを込めています。

「1が、三つ並んで漢字の『川』という字に見立てられるということ、1の持つ意味が「はじまり」「スタート」そういった意味もあることから、11月1日を『むかわ町ししゃもの日』として制定しました」と話します。

マチの宝であるシシャモが戻る日を待ち侘びて、むかわ町の取り組みは、静かに続いています。

復活への期待

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春に生まれたシシャモの稚魚は、多くの場合、翌年の秋には川へ戻って来ます。
3年前、むかわ町に新設された『ふ化場』生まれのシシャモも、その一部が帰って来ている…ということになります。
資源回復の取り組みは、着々と進んでいるようです。

11月1日(土)には、町が条例で制定した『むかわし町ししゃもの日』を初めて迎え、道の駅『むかわ四季の館」で、去年、ふ化場で産卵を終え冷凍していたシシャモを1000セット限定で無料配布したということです。

遡上するシシャモで川が埋まるようだった…という話もあり、早くからブランド化に取り組んだ、まさに「地域の宝」。
復活を期待する地元、むかわ町の思いは高まっています。

近い将来、以前のようなにぎわいが秋の漁港に戻ってくる日を、私たちも待っています。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年10月29日)の情報に基づきます。

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