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29年前、“永遠”という壮大テーマを描いた軽快イントロ 透明ボイスで魅了した2人

  • 2025.12.13
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※Google Geminiにて作成(C)SANKEI

「29年前、この季節の街って、どんな音が流れていたんだろう?」

真冬の朝に差し込む淡い光、吐く息の白さ、ビルの間を抜ける冷たい風。そんな空気の中で、ふと胸の奥が軽くなる瞬間があった。勢いよく地平線へ向かうような、まっすぐで爽やかなギターロック。その音は、ときに日常の重さをそっと追い越し、聴く者の足取りをほんの少しだけ前へ押してくれた。

MANISH『この一瞬という永遠の中で』(作詞:牧穂エミ・作曲:西本麻里)――1996年1月22日発売

テレビ朝日系『NBA FAST BREAK』のオープニングテーマとして流れた。軽やかなイントロに、思わず心を奪われた人も少なくなかったはずだ。

ひと筋の光みたいに走り抜けた、MANISHらしい清涼感

MANISHといえば、ビーイング系らしいキラッとしたメロディと、透明感あるボーカルが真っ先に浮かぶ。1990年代半ば、女性ロックデュオとして活動した彼女たちは、一度ハマれば“爽やかさの中の芯の強さ”が忘れられなくなる、そんな独自の世界を確立していた。

『この一瞬という永遠の中で』も、まさにその魅力が真っ直ぐに表れた1曲だ。

西本麻里のメロディはスピード感がありながらも清らかで、聴き手の気持ちをやわらかく前へ押し出してくれる。そこに牧穂エミによる歌詞、そして編曲の葉山たけしが加わることで、ギターが“風のように駆け抜ける”サウンドへと仕上がっている。

ビーイング系の黄金期を支えた葉山ならではの、過度に派手にしないのに耳に残るアレンジ。そのミニマムな美学が、この曲の軽やかさをさらに際立たせているのだ。

MANISHという存在が持つ“まっすぐさ”がそのまま音に宿る

MANISHの楽曲は、どれも装飾を削ぎ落としたストレートさがある。女性ロックといっても尖りすぎず、ポップすぎず、ちょうどいい清涼感が絶妙なバランスで保たれている。

その魅力の根底にあるのは、声とギターとメロディの三つがまっすぐに並ぶ“素直さ”だ。

この曲でも、ボーカルの伸びやかさは飾り気がなく、感情を過度に乗せない分、風のように抜けていく言葉の響きが心地よい。

特にサビに向かう流れは秀逸で、一気に視界が開けるような高揚感がある。ギターのカッティングやバッキングもほどよく軽快で、跳ねるようなビートとともに、短編映画のワンシーンのように瞬間的な輝きが宿っている。

大げさに語られなかったからこそ、残った余韻

リリースから29年が経った今、改めて耳を澄ませると、その軽やかさは驚くほど色褪せていない。冬の透明な空気にも、朝のコーヒーの香りにも、どこか自然と溶け込む。

日常の隙間にふと寄り添うような、そんなやわらかなロックナンバーだ。時代の喧騒の中で、そっと吹く風のように通り過ぎるけれど、確かに心に触れていった音。『この一瞬という永遠の中で』は、そんな“永遠のような一瞬”を閉じ込めた、小さな宝石のような曲なのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。