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2006年、40作目で人気バンドが見せた“初心” イントロ1秒で熱くなる名曲

  • 2025.12.25

「19年前、あのギターの音が街の空気を切り裂いた瞬間を覚えてる?」

冬の冷たい風が吹き抜ける2006年の始まり。通勤前の駅のホームでも、学校へ向かう朝の街角でも、そこかしこで“勢い”という言葉が似合う音が流れていた。

ニューイヤーの空気はどこかそわそわしていて、背筋をシャキッと伸ばしてくれる刺激を誰もが求めていたように思う。そんな時代に、まさに光の速さで飛び込んできたのがこの1曲だった。

B’z『衝動』(作詞:稲葉浩志・作曲:松本孝弘)――2006年1月25日発売

日本テレビ系アニメ『名探偵コナン』放送10周年記念主題歌としてオンエアされ、リリースと同時にランキング初登場1位、セールスは30万枚以上を記録するヒットとなった。

電撃のように刻まれた、20年目の衝撃

『衝動』はB’zの40枚目のシングル。すでに国民的ロックユニットとして数々の記録を塗り替えてきた彼らだが、2006年の幕開けに放ったこの曲は、そんなキャリアの重さを感じさせないほど“純粋に速く、鋭く、まっすぐ”だった

無駄な装飾を排したギターのリフが疾走し、ドラムが火を噴くように駆け抜ける。松本孝弘のギターは、1音目からすでにスピードを孕んでいて、稲葉浩志の突き抜けるボーカルがそこに重なると、楽曲全体が一気に前のめりになっていく。

アニメ『名探偵コナン』の10周年という大きな節目を飾る主題歌に選ばれたこともあり、放送開始と同時に“この曲、強すぎない?”という声が広がった。当時のコナンの主題歌は大ヒット曲が並ぶ激戦区。その中でも『衝動』の存在感はひときわ際立っていた。

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B'zコンサートより(C)SANKEI

“速さ”の中に潜む、B’zならではの確かな輪郭

『衝動』の魅力は、ただ速い、ただ勢いがあるというだけではない。

全体に轟くサウンドの中でも、稲葉のボーカルラインはクリアで、松本のギターはひとつひとつのフレーズに確かな輪郭を残す。B’zのロックは、どれだけアグレッシブな瞬間でも音が潰れない。むしろ速さが増すほど、彼らのサウンドは美しく整っていく。

そして、演奏と歌が衝突するのではなく、同じ方向へ“前へ進む”力として結びついていく。その一体感こそが、「衝動」というタイトルの説得力を19年経った今も失わせない理由なのだ。

あの年の冬を駆け抜けたスピードが、今も胸を打つ理由

『衝動』が19年を経ても色褪せないのは、聴いた瞬間に湧き上がる“走り出したくなる感覚”が、今の時代にこそ刺さるからだ。

日常の停滞感を突き破るようなサウンド。心の奥に眠る気持ちを一気に点火させる力。「あの時の自分なら、もっとできたかもしれない」という思いさえ呼び起こしてくれる。

そして、イントロの一秒で世界を変えるような瞬発力は、“衝動”という言葉そのものが音になったような説得力を持っている。まるで街の風景が一気に動き出すような、電光石火のエネルギー。20年前のあの日、冬の空気を震わせたこの一曲は、今もなお聴く人の心をどこかで前へ押し出している。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。