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34年前、深夜に響いた“遊び” 伝説的バラエティが放った“疾走チューン”

  • 2025.12.24

「34年前、街の夜を駆け抜けていた“あのスピード感”を覚えてる?」

1991年のはじまり。世の中の空気はどこか軽やかで、夢も笑いも、テレビの前に座ればすぐに手が届くような気がしていた。週末の深夜、友達の家に集まって、ダウンタウンとウッチャンナンチャンの掛け合いに声を上げて笑っていたあの時間。そんな賑やかな空気の中で、この曲はひときわ強い存在感を放っていた。

ユニコーン『スターな男』(作詞:阿部義晴・作曲:奥田民生)――1991年1月21日発売

『働く男』(1990年)に続き、フジテレビ系バラエティ『夢で逢えたら』のテーマソングとして放たれたこの曲は、番組の“自由で軽快な空気”と完璧に呼応していた。

夜更けに響いた、自由奔放なバラエティの熱

『夢で逢えたら』といえば、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、清水ミチコ、野沢直子という豪華すぎるメンバーが、“深夜ならでは”の自由度で暴れまわった伝説的バラエティ。大人になっても笑い転げられる深夜番組って、あの頃の宝物だった

コントと音楽が自然に混ざり合い、視聴者も出演者も同じテンションで“遊んでいる”感覚があった。そこにユニコーンのポップでひねくれたロックが加わると、番組の世界観が一気に立ち上がった。『スターな男』は、その象徴のような存在だった。

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奥田民生-1996年撮影(C)SANKEI

ユニコーンの“遊び心”がはじける瞬間

軽快なギターの切れ味、ほんの少し皮肉の効いたポップメロディ、そして奥田民生の自然体で肩の力の抜けた歌声。ユニコーンらしい“遊び心”と“技術”が、ひとつの塊になって押し寄せてくる

キーボードの阿部義晴が紡いだ言葉は、日常をちょっと斜め上から眺めるようなテンションをまとい、奥田民生のメロディと絡むことで、ただのポップソングではなく“気分を変えてくれる音楽”に変わっていく。

当時のユニコーンは、各メンバーのアイデアが次々に形になる創造性あふれる時期。『スターな男』にも、その勢いがそのまま詰め込まれている。

番組の空気と完全に一体化した“軽やかさ”

『夢で逢えたら』のオープニングにこの曲が流れると、それだけで“週末モード”に身体が切り替わるようだった。

軽いのに強い、ふざけているのにかっこいい。そんな絶妙なバランスこそ、この曲の最大の魅力だった。

そしてもうひとつ特筆すべきなのは、バンド編成ならではの厚みだ。ギター、キーボード、ベース、ドラムスが生み出す“手触りのある”サウンドが、テレビ越しでもしっかりとロックの温度を運んでくる。その感覚は、当時の音楽シーンの中でも決して当たり前ではなかった。

時代のテンションに寄り添った“ユニコーンの魔法”

1990年代初頭は、お笑いも音楽も、テレビ番組も、境界がどんどん溶けていった時代だった。ユニコーンはその空気を見事に受け止め、音楽の側から“遊びの提案”をしてくれるバンドだった。

聴くと、あの深夜の笑い声や、始まったばかりの90年代の空気がふっと蘇る。それは、この曲が“その時代に生きていた人たちの体温”としっかり結びついていた証拠だ。

今聴いても古びないのは、そのポップさが表面的な軽さではなく、“ユニコーンが持つ確固たるセンス”で成り立っているからだろう。いつだって気分を明るくしてくれる、ユニコーンの魅力が詰まった一曲だ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。