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14年前、昭和歌謡を“爆速ダンス曲”へ変貌させた衝撃 「フィンガー5」が再燃したワケ

  • 2025.12.22

「14年前、あの正月の空気って覚えてる?」

街がゆっくりと動き出す1月。商店街にはまだお正月ムードが残り、子どもたちの笑い声と家族連れの足音が混ざり合っていた頃。そんな新年の空気に、どこか懐かしくて、でもまったく新しいリズムがふっと響いた瞬間があった。

Dream5『恋のダイヤル6700』(作詞:阿久悠・作曲:井上忠夫)――2011年1月1日発売

1973年に誕生したフィンガー5の大ヒット曲が、時代をまたぎ、10代のダンス&ボーカルユニットによってまっさらな光をまとって甦ったのだ。昭和の名曲が平成の空気と混ざり合ったその瞬間、街のざわめきに軽やかなときめきが差し込んだ。

新しい時代に飛び込んだ5人の“まっすぐなエネルギー”

Dream5は、2009年にNHK『天才てれびくんMAX』から誕生した男女混合のダンス&ボーカルユニット。キレのあるダンスと透明感あるボーカル、そしてメンバーそれぞれの等身大の魅力が、当時の子どもから大人まで幅広い層に親しまれていった。

ユニットとしてはまだ若く、フレッシュな印象が強かった2011年。そんな彼らが“昭和の名曲”に挑んだことは、当時の音楽シーンでも少し意外な選択に映った。だが、そのギャップこそが、カバーとしてのこの曲に特別な説得力を生んでいる。

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2014年、イトーヨーカドー「冬のドリームキャンペーン」のトークショーを行ったDream5。左から高野洸、大原優乃、重本ことり、玉川桃奈、日比美思(C)SANKEI

跳ねるビートに、時代の空気がのった

『恋のダイヤル6700』は、オリジナルのキャッチーさと軽やかなメロディをそのままに、編曲の守尾崇によって、より現代的でダンサブルなサウンドへと生まれ変わった。

イントロのシンセサウンドから一気に明るさが広がり、サビへ向けてテンションが上がっていく展開は、まさにDream5の真骨頂。彼らのダンスのスピード感や、はじけるような歌声と相性抜群だ。

そしてどこか懐かしいのに新しい、この絶妙な“リバイバル感”。昭和歌謡の温度をそのまま持ちながら、ポップスとしての抜け感やリズムの現代性が加わり、聴く人の世代を選ばない万能な魅力を獲得していた。

「知っている曲なのに、こんなに新鮮に聴こえる」

そんな驚きを与えてくれるのが、このカバーの最大の面白さなのだ。

カバー曲としての精度を高めた“音”の仕掛け

編曲を担当した守尾崇は、原曲の持つメロディの良さや勢いは崩さず、その上に今の時代にフィットするリズムとサウンドを丁寧に積み重ねている。

コーラスワークやハンドクラップ風のアクセントも、オリジナルの楽しさを継承しつつ、Dream5の個性を際立たせる役割を担っている。

また、メンバーの若々しいボーカルが、この曲特有の“恋の無邪気さ”をより鮮やかにしているのも特徴だ。オリジナルを知る世代にとっては懐かしく、初めて触れる世代には新鮮。そんな二重の魅力が自然に折り重なっていた。

音楽は時代を越え、記憶を結びつける

2011年の新しい年の始まりに響いた、あの軽やかなダイヤル音。昭和の空気が平成に混ざり、さらに今の時代にも受け継がれていくその感覚は、音楽が持つ“時間を結ぶ力”そのものだ。懐かしいはずなのに古くない。

若いはずなのに深みがある。そんな心地よいミックス感が、今聴いてもふっと胸を躍らせてくれる。次の季節が来る頃、またこの曲がふとどこかから流れてきたら、きっと当時の空気がやさしく蘇るだろう。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。