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27年前、じわじわと80万ヒットへ育った“静かなロック” 激しくないのに鳴り続けるワケ

  • 2025.11.28
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2017年、神宮外苑花火大会で歌うthe brilliant greenのボーカル・川瀬智子(C)SANKEI

「27年前、あの春の街に漂っていた空気、覚えてる?」

夜になると肌寒さが残りつつも、どこか柔らかい風が吹いていた1998年の初夏。街の交差点には、まだCDショップの袋を抱えた人たちの姿があって、新しい音楽が日常を少しだけ彩る時代だった。

そんな季節の狭間に、ひっそりと、だけど確かな存在感をもって広がっていった曲がある。

the brilliant green『There will be love there -愛のある場所-』(作詞:川瀬智子・作曲:奥田俊作)――1998年5月13日発売

発売直後に爆発的に売れたわけではない。それでもこの曲は、ゆっくりと、まるで時間をかけて心に浸透する香水のように広がっていった。

優しくて強い、バンドの“新しい顔”

the brilliant greenにとって3枚目のシングルとなる本作は、TBS系ドラマ『ラブ・アゲイン』の主題歌としてオンエアされるたび、その印象的なメロディが聴く人の耳に残った。

英国的なロックの質感と、日本的な情緒を絶妙に掛け合わせるこのバンドにとって、本作は“初めて広く世の中へ届いた”節目の一曲でもある。

川瀬智子の透明感のある歌声と、奥田俊作のメロディセンス。それらが穏やかに寄り添いながらも、芯の強さを失わないサウンドは、当時のシーンの中では少し異質で、だけど確実に新しかった。激しくないのに、胸の奥でずっと鳴り続けるロック、そんな存在感をまとっていた。

静かに高まっていく“共鳴”

当初はランキングの中で大きく目立つ存在ではなかったものの、ドラマの放送とともに徐々に順位を上げていき、登場から5週目で1位を獲得。最終的には80万枚以上を売り上げるヒット曲となった。

この“ゆっくり上がっていく曲線”こそが、当時のthe brilliant greenの魅力を象徴していた。

サウンド自体は華々しくない。ギターのリフは控えめで、ドラムも過剰に主張しない。それでも、メロディラインには不思議な吸引力があり、気づけば口ずさんでしまうほど自然に耳へ馴染んでいく。

川瀬の声は甘さと気高さの間を漂う独特の質感で、曲全体を、一瞬で“特別な時間”へ変えてしまう力を持っていた。

ドラマと時代が後押しした“静かな名曲”

ドラマ『ラブ・アゲイン』の放送は、曲の世界観をさらに押し広げた。物語の中で描かれる感情と、この曲が持つ柔らかな切なさが、視聴者の心の奥で自然に重なっていったからだ。

タイアップという以上に、作品全体に流れる空気を同じ温度で共有していたと言えるだろう。

1998年といえば、J-POPが加速度的に派手さを増していた時代。そんな中で、“静けさ”と“余白”を大切にしたこの曲が広く愛されたことは、一種のカウンターのようにも思える。

いま聴いても、ふと胸に灯る“温度”

年月が経った今でも『There will be love there -愛のある場所-』は、聴くたびに当時の街の匂いや、夜風の温度を蘇らせてくれる。

大きなドラマチックさがあるわけではない。それでも、こうして時を越えて流れてくる曲には、かけがえのない力が宿っている。

the brilliant greenが描いた世界は、決して派手ではなかった。だけどその静かなまっすぐさは、確かに多くの人の記憶に深く刻まれ続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。