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27年前、“新体制バンド”が放った“青さの衝撃” 勢いではなく80万ヒットしたワケ

  • 2025.12.16

「27年前、あの春の風って、どんな色をしてた?」

季節が冬から春へゆっくり移ろう1998年。街には受験や卒業の気配が混じり、どこかそわそわした空気が漂っていた。交差点は新生活へ向かう人々の足取りで軽やかに揺れ、スピーカーからは未来へ一歩踏み出すような音が次々と流れていた。そんな季節の“青さ”をそのまま閉じ込めたような一曲が、ある日、街を覆い尽くす。

L’Arc〜en〜Ciel『DIVE TO BLUE』(作詞:hyde・作曲:tetsu)――1998年3月25日発売

リリースと同時にランキング初登場1位を獲得し、そこから2週連続1位。最終的には80万枚以上を売り上げるロングセールスを記録したこの曲は、“勢いだけでは説明できない何か”を確実に持っていた。

青空が突き抜けていくような、ひとつの“到達点”

『DIVE TO BLUE』はシングル『winter fall』でyukihiroが正式加入し、5枚目のアルバム『HEART』をリリースした直後、新体制が本格的に動き始めたタイミングで放たれた。いわば“新しいラルク”が大きく羽ばたいた象徴的な一曲でもある。

作詞を手がけたhydeの軽やかな語感と、tetsuyaらしいキャッチーで瑞々しいメロディ。その組み合わせが、当時の空気とぴたりと重なった。バンドが持つ耽美な世界観に鮮やかな風を通したようなこの曲は、どこを切り取っても“春の光”が差し込んでいる。

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1998年、L’Arc〜en〜Cielライブより(C)SANKEI

「爽快感」を音にしたようなサウンドの奔流

『DIVE TO BLUE』の最大の魅力は、聴き始めた瞬間に胸の奥がふわっと軽くなるような“風通しの良さ”にある。

tetsuyaの作るメロディは、まっすぐで、ひと筆描きのように滑らか。そこへkenのギターがスピード感とカラフルさを加え、hydeの声が空に放たれるように広がっていく。サビに向かってほんの少しずつ温度が上がっていく構成は、青空へダイブするような高揚感を自然に呼び起こしてくれる。

また、リズム隊のバランスも秀逸だ。特にyukihiroのドラムは、軽やかさの中にも芯の強さがあり、楽曲全体をしっかりと押し上げている。

90年代後半の“輝き”とリンクした、永遠の春歌

この曲の印象をさらに鮮烈にしたのが、竹石渉が手がけたミュージックビデオだった。衝撃的なのに楽曲にぴったりな開放感があり、ストーリーを感じさせる映像、そしてメンバー4人の躍動。曲のイメージを視覚にまで落とし込み、リスナーの記憶に強く残るものとなった。

1998年は、J-POPが大衆文化の中心にあった時代。カラオケ、CDショップ、音楽番組。あらゆる場で音楽が主役になれる、今より少し“夢のある”季節だった。

『DIVE TO BLUE』はそんな時代の空気をまるごと掬い取った曲だ。聴くと一瞬で気持ちが軽くなる“あの感じ”は、時代を越えて多くの人に受け継がれている。

春になるたびに思い出す曲。新生活を前に背中を押してくれる曲。ふとした瞬間に“あの青空”がよみがえる曲。27年前のあの日、この曲は確かに私たちの胸のどこかを軽くし、前を向かせてくれた。その輝きは、今も少しも褪せていない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。