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【齋藤飛鳥】あしゅが愛読書の世界を語る。エルヴェ・ル・テリエ著『異常【アノマリー】』

  • 2025.11.2

読書好きで知られる飛鳥ちゃんがオススメの本を1冊ピックアップし、その本の世界観をファッションやメイクなどときめく感性で表現する本連載。今回フォーカスした本が描く“日常に落とし込まれた異世界”を体現する飛鳥ちゃんの魅力溢れる姿をご覧あれ♡

現実世界に同じ人間が重複して存在する「異常」な現象は奇妙さと不穏さが入り混じる

ジャケット ¥22,000(レイ ビームス/レイ ビームス 新宿)、ワンピース ¥52,800(マリリンムーン/マリリンムー
ンオンラインストア)

2021年3月、パリ発ニューヨーク行きの航空機「AF006便」が猛烈な乱気流に巻き込まれたが無事に着陸。しかし、2021年6月に、まったく同じ機体に同じ乗客を乗せた「AF006便」が再び空港に着陸。3カ月の差で分岐した同じ記憶や人格を持つ自分が重複している現象に直面し、どちらが“本物の自分”なのか。そもそも、“本物”なのかー。政府はこの現象を「アノマリー(異常)」と呼び、世界各国が極秘に対応するが、宗教や科学的な視点でも大論争。周囲や重複者本人の様々な心理的解釈も描かれるが、その正解とは?


機体だけでなく現実世界をも揺さぶる不可解な乱気流を表現

Tシャツ ¥31,900、ワンピース ¥139,300(共にSANDY LIANG/LYDIA)

飛行中、激しい乱気流に巻き込まれたAF006便の機内は死の恐怖に包まれるが、幸い乱気流を抜け安定した飛行に戻る。しかし、乱気流を通過したばかりのAF006便は3カ月前にすでにニューヨークへ着陸した機体と同じで、この乱気流の瞬間に機体も乗客も複製され“もうひとりの自分”が現れてしまった形に。天候現象だけでない、物語全体をも象徴するような強烈なインパクトを放つ乱気流のシーンは、神秘的な側面と不安さが同居するような光に包まれる超越的瞬間で表現。ダイナミックなワンピースの煌びやかさも相まって、仮想的な異世界へと繋がる感覚を抱く。


とにかく難しい!(笑)混乱するけどシニカルなユーモアと衝撃で深く物語に引き込まれます

右:ニット ¥59,400、スカート ¥28,600(共にバウム・ウンド・ヘルガーテン)、グローブ ¥35,200(アニェル/全てS&T)、シャツ ¥56,100(イレニサ)、シューズ ¥132,000(RODO/メゾン・ディセット) 左:カーディガン ¥83,600、スカート ¥28,600(共にバウム・ウンド・ヘルガーテン)、グローブ ¥36,300(アニェル/全てS&T)、シャツ ¥36,300(イレニサ)、シューズ ¥140,800(RODO/メゾン・ディセット) その他はスタイリスト私物

「真っ赤なカバーがキャッチーで手に取ったのがきっかけ。後から知ったのですが、単行本のカバーもこの作品を象徴する描写で興味を持ちました。

読み進めながらも物語の展開やどこへ向かっていくのかが本当に難解で、専門用語も多発するので調べながら読んだり、巧妙に張り巡らされた伏線を回収するために何度もページを戻って読み返し登場人物を辿る作業を並行し……。それが本当に“読書”を楽しんでいる感覚を得られます。とっても好みな作品でした。

群像劇であるこの作品は、あらゆるキャラクターが発するセリフひとつひとつをとってもどこかシニカルでユーモアがあり、それも読んでいて面白さがありました。個性的な登場人物のなかでも私が印象的だったのが建築家の男性・アンドレ。聡明で賢く仕事をこなすけれど、自分のパートナーに対しての感情表現などプライベートな面はとても陰気くさくて、その人物像がとても人間らしくて想像しやすかった。

作品を読み終えてやっと、ここに出てくる登場人物は全員必要だったんだな、と理解しました。それまでは、もう多過ぎて誰が誰だか混乱の連続でした(笑)。

今回の撮影では、作品を象徴するキーワードを拾い表現。“乱気流”の描写シーンでは、照明や光感にもこだわり、カメラマンさんも空間に合う音楽を選曲してくださったりと、まさに神秘的かつ不可解な世界観の中で撮影をしました。

最終ページでは、乱気流によって重複された“もうひとりの自分”との対峙を表現。記憶も遺伝子も同じでどちらも間違いなく私なんだけど、自然と意識の置き所を変えて撮影に臨みました。もし本当に、作品と同じようなことが起こったら、もうひとりの自分を受け入れられるのかなぁ……。

正義と悪とか、かけ離れているならば話は簡単だけど、そうでもない。でも、仕事で忙しいときに、時々自分がもうひとりいたらいいのにな、と思うときはありますね(笑)。

不思議で奇妙で気味が悪くて、『異常』というタイトルがぴったり。読んでいくうちにどんどんと引き込まれていくので、読書を楽しみたい秋におすすめです」


今月の1冊!『異常【アノマリー】』エルヴェ・ル・テリエ著/早川書房加藤かおり 訳

2021年3月10日、パリ発ニューヨーク行きの旅客機エールフランス006便が凄まじい乱気流によって、機体も人物も複製されるという前代未聞の事態が発生。その「異常(アノマリー)」な事態に、世界中の政府や軍、宗教者、科学者などの識者たちが対応に追われるがー。物語に登場する様々な人物達は自分自身のコピーと直面し、どのように向き合い選択するのか、多視点で物語が進む。

model : ASUKA SAITO

photo : TOKI

styling : KOTOMI SHIBAHARA

hair & make-up : KENJI TAKAGAKI[SHIMA]

edit & text : MAIKO WATANABE

web edit : KIMIE WACHI

※記事の内容はsweet2025年10月号のものになります。
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください。

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