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朝ドラヒロインに抜擢「間違いない」「作品ごとに姿かたちが違う」“7キロ増量”もいとわない“カメレオン女優”に期待

  • 2025.11.26

2027年前期の朝ドラ『巡(まわ)るスワン』のヒロインとして、女優・森田望智の起用が発表された。脚本を手がけるのは、ユーモアと独自の人間観察眼で知られるバカリズム。ヒロインは刑事に憧れて警察官となった生活安全課の巡査長という役どころだ。バカリズム作品特有の“ひねり”に満ちたストーリー展開を予感させる一方で、森田望智の確かな演技力があれば、どのような世界観にも現実味を吹き込んでくれるだろう。SNS上でも「ヒロイン決定嬉しすぎ」「作品によって姿かたちが違いすぎるカメレオン女優」「間違いない」と祝福や期待する声が多い。

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森田望智 (C)SANKEI

『全裸監督』で脱ぎ捨てた殻

森田望智が演じるキャラクターの多くは、決して大仰ではない。むしろ、静けさのなかに芯の強さや繊細な揺れをたたえている。そんな彼女の表現には、役としてそこに“存在する”という、いわば“憑依型”女優ならではの説得力がある。

森田が一躍注目を浴びたのは、2019年にNetflixで配信されたドラマ『全裸監督』での演技だ。彼女が演じたのは、実在の人物をモデルにした黒木香というキャラクター。トレードマークの腋毛をオーディション時から描いて再現するなど、身体的な表現にまで徹底して挑んだその姿勢は、視聴者に鮮烈な印象を与えた。

当時はまだ無名に近い存在だったが、決してセンセーショナルな演出や話題性に頼ることなく、欲望、羞恥、誇り、そして孤独という多層的な感情を、全身を通して表現してみせた。体当たりの演技とはこういうことなのだと、あらためて多くの人に印象づけた記憶に残る一作だ。

『虎に翼』『おかえりモネ』静けさと温もりの両立

一方で、朝ドラ『おかえりモネ』や『虎に翼』では、また違った一面を見せている。とくに『虎に翼』で演じた花江役は、主人公の親友兼義理の姉であり、家庭を支える女性としての責任と葛藤を穏やかに、しかし芯をもって表現していた。

ゆったりとした口調で話す花江の存在は、登場人物のなかで一種の潤滑油のような存在だった。しかし、その穏やかさの奥には、家族を守るためならば一歩も引かない覚悟が見え隠れする。抑制された芝居のなかで、目線や指先に微かな変化を宿すことで、観る者の胸に深く残るキャラクターに仕上げていた。

2023年以降の出演作では、森田の“身体を通じた演技”の表現力も際立ってきた。

2025年11月公開の映画『ナイトフラワー』では、北川景子演じる主人公のボディーガードとして、格闘家・芳井多摩恵役を演じた。寝る前にステーキを食べるなどの“増量生活”で体をつくり直し、7キロの体重増加もいとわなかった、という背景が話題になっている。戦う女の筋肉の重みを身体ごと表現する森田の姿勢には、役作りを超えた生き様が感じられる。

さらにNetflix映画『シティーハンター』では、鈴木亮平演じる冴羽獠の相棒・槇村香として、アクションや銃撃戦にも挑戦。肉体的にハードな現場でも動きにキレがあり、相手役の鈴木と並んでも遜色のない存在感だった。

役に“宿る”女優として、朝ドラヒロインへ

彼女が演じるキャラクターの多くに共通するのは、強さと優しさの同居である。たとえば『いつか、無重力の宙で』で演じた日比野ひかりは、宇宙を目指すJAXAのエンジニア。困難を乗り越えてきた経験から滲み出る前向きさや包容力で、主人公たちにとって“光”となる存在として描かれていた。役柄のなかに他者を照らす力を宿らせられるのも、森田の持ち味だろう。

また、『恋は闇』の内海向葵役もまた、表面上は明るくとも、過去の傷を抱える難しい役柄だった。ストーカー被害という心のトラウマを背負いつつも、“それでも人を信じたい”という気持ちが垣間見える芝居には、傷とともに生きる人間のリアリティがにじんでいた。

森田の演技は、役柄に自身を合わせるのではなく、役柄そのものに“なりきる”タイプに見える。言葉の抑揚、目線の動き、息遣い。すべてがその人物に最適化されている。

だからこそ、朝ドラ『巡るスワン』のヒロインに彼女が起用されたことは、キャスティングとして非常に納得がいく。刑事に憧れた女性が、生活安全課の巡査長としてどのように日常と向き合い、ときにぶつかり、誰かの“安心”のために動いていくのか。

バカリズム脚本による“ひねり”のある世界観のなかでも、きっと彼女は主人公としての芯をしっかりと担ってくれるに違いない。


出典:@nightflower_jp映画『ナイトフラワー』11.28(Fri)公開 公式X(2025年10月17日投稿)

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_