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NHK大河ドラマで活躍した“影の功労者”に称賛の声「さすがすぎる」「なんという脚本」“ただの新展開”ではない【最新話】

  • 2025.11.26
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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』11月23日放送 (C)NHK

大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第45回「その名は写楽」は、ただの新展開ではなかった。“写楽”の誕生という文化史に名を刻む出来事の裏に、亡き者たちの志と残された者たちの慟哭が静かに編み込まれた回だった。SNS上でも「よくやった!」「さすがすぎる」「なんという脚本なんだ」と話題を呼んだ影の功労者について触れながら、45回を振り返る。

仇討の矛先は“世間”へ

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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』11月23日放送 (C)NHK

物語の発端は、松平定信(井上祐貴)によるある依頼だった。蔦重(横浜流星)に、ともに敵討ちをしないか、と持ちかけた定信だったが、彼の真意は別のところにある。死んだと思われていた平賀源内(安田顕)が、実は生きている……そんな噂を流してほしいというのだ。

乗り気ではない蔦重。しかし、刀を携えた侍たちに囲まれ、“すでにお前は巻き込まれている”と静かに告げられると、逃げ場がない。彼はふたたび、“この世の理不尽”と対峙することになった。

妻・てい(橋本愛)の“やるしかない”という言葉に背中を押される蔦重。その言葉は、命を落とした春町(岡山天音)に対する悼みにも似た決意だった。敵を斬るのではない。敵討ちの矛先は、歪んだ体制に飲み込まれそうな“世間”そのものにも向けられている。

SNS上でも、ていの機転に「よくやった!」と賛辞の声が挙がっている。

“写楽”誕生に託された共同作業

蔦重は決意する。“写楽”という謎の絵師をでっち上げることにより、源内の生存説を江戸の町にばらまく策だ。

その舞台に選んだのが、芝居町で行われる『曽我祭』。役者が素顔を晒して町を練り歩くこの日、観客は役者絵を手にその姿を追う。もし、前衛的な蘭画風の役者絵を“源内の作”として流通させれば……噂は瞬く間に拡散される。ここに、後世“写楽”と呼ばれる謎多き絵師の名が産声を上げるのだ。

「しゃらくさい」……喜三二(尾美としのり)のふとした言葉から着想を得た“写楽”の名は、“この世の楽を写す”という皮肉と美学が入り混じる蔦重らしい画号だ。

その創作には、耕書堂の面々……北尾重政(橋本淳)、政演(古川雄大)、南畝(桐谷健太)らが集い、ある種の“共同幻想”を紡ぎ出していく。このシーンに、蔦重の生き様と“仲間”という幻想の力が凝縮されていた。

一方、歌麿(染谷将太)は耕書堂から離れ、静かに筆を取る日々。しかし、かつてのように拘りを持ってダメ出ししてくる者もなく、彼の胸には空虚が広がるばかり。“この絵は、ほんとうに良いのだろうか?”そう感じてしまう迷いが、絵の前に佇む彼の姿からにじみ出る。

そんな歌麿のもとに現れたのが、ていだった。彼女は『歌撰恋乃部』を差し出す。それはかつて歌麿が描いた、蔦重に対する“恋文”のような作品だった。

ていは語る。よそにも素晴らしい本屋はある。でも、あなたのことをここまで深く考えているのは蔦重だけだ、と。それは、夫である蔦重への純粋な信頼であり、彼に恋心を抱く歌麿への率直な賛辞でもあった。ていは重ねる。男と男の業と情が生み出す、因果なる絵をこの目で見てみたい、と。

彼女は、男たちの因果のはざまに立ちながらも、自分なりの矜持と美意識をもってふたたび歌麿を現場へと引き戻してみせた。芸術とは、ときにそうした“第三者の激情”が火をつけるものだ。

“写楽”は誰の顔を写すのか?

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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』11月23日放送 (C)NHK

耕書堂に戻ってきた歌麿。彼の再登場は、ただの“復縁”ではなかった。かつての蔦重と歌麿が交わした熱、その軋轢、その未完の夢。すべてが“写楽”という名に託され、あらためて筆をとる決意の合図だった。

写楽が写すのは、役者の“素顔”だ。しかし、その顔は、芝居小屋の外で笑い、怒り、涙し、葛藤する“人間の貌(かお)”でもある。歌麿にしか描けない、蔦重にしか仕掛けられない、ていにしかつなげられない。その一点が、第45回の主軸だった。

そして、次回予告では『曽我祭』の喧騒が映し出される。写楽のデビュー戦は、江戸の風景を変える一手になるのか。描かれるのはただの役者の顔か、それとも命を落とした者の志と、生きる者の想いを混ぜ合わせた“人間”の貌なのか。

『べらぼう』第45回は、文化史と人情劇を交差させながら、まさに“絵の力”で時代を動かす物語を描いてみせた。


NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』 毎週日曜よる8時放送
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_