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20年前、「全員主役」を貫いた8人 デビュー間もなく放った“未知のスピード”

  • 2025.12.5
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AAA-2011年撮影(C)SANKEI

2005年12月。年末の街はきらびやかなイルミネーションに包まれ、人の流れはせわしなく、それでもどこか浮き立つような空気があった。手袋の中でかじかむ指先、白い息、コンビニから漏れる温かい光。そんな日常の隙間を切り裂くように、ひときわ勢いのあるビートが響き始めた。

AAA『DRAGON FIRE』(作詞・作曲:清水昭男)――2005年12月7日発売

それはデビューしたばかりの男女混成グループが、真正面から“勢い”という名の衝動を叩きつけてきた瞬間だった。

あの頃、AAAが放っていた“未知のスピード”

2005年9月『BLOOD on FIRE』でデビューしたAAA(トリプルエー)は、毎月シングルを発売するという怒涛のシングルリリースで存在感を一気に増していた。『DRAGON FIRE』は、彼らにとって4枚目のシングルであり、まだ“未来の姿”が誰にも想像できなかった時期に放たれた、初期衝動そのもののような一曲だった。

清水昭男による作詞・作曲は、躍動的なリズムで構成され、当時のJ-POPの流れとも、ダンスミュージックの王道とも少し違う独特の熱を帯びていた。

そのサウンドに、男女がそれぞれの個性をぶつけ合うパート分けで応える。そのスタイルは当時まだ珍しく、“グループの可能性”そのものを音に変えたような勢いがあった。

炎のように立ち上がり、一気に駆け抜ける音

この曲の魅力は、やはり冒頭から最後までテンションが落ちる瞬間が一切ないことだ。

イントロから火花が散るようにホーンセクションが鳴り響き、そこにビートが重なった時点で、聴き手の呼吸が一段上がる。まさにタイトル通り“ドラゴンが火を吹く瞬間”のような衝撃がある。

AAAのメンバーが、時に重なり合いながら畳みかける構成は、グループの“全員が主役”というスタンスを象徴していた。

特にデビュー当時の彼らの歌声には、洗練よりも勢いや真っ直ぐさが勝っていて、その“荒削りのエネルギー”が逆に時代の空気に鮮烈に刺さった。

初期AAAの象徴としての“火種”

2005年のAAAは、作品を連続で発表し、そのたびに新しい表情を見せていった。『DRAGON FIRE』はその中でも特に、グループのコンセプトである“Attack All Around”を最もわかりやすく示した曲と言える。攻撃的で、前に進む力をそのまま音に閉じ込めたような作品だった。

2000年代半ばは、R&Bやヒップホップがポップシーンに自然に溶け込み始めた頃。そんな中でAAAは、J-POP的キャッチーさとダンスミュージックの熱量を独自にミックスし、ライブグループとしてのポテンシャルを早くから確立していった。

冬の街に火を灯した若さの熱

『DRAGON FIRE』がリリースされた2005年12月。街はクリスマスソングで溢れていたけれど、この曲はそのどれとも違う熱量で、冬の空気を一瞬で変えてしまった。

寒さの中に突然灯る火のように、身体の奥から温度を押し上げてくれる曲。それは20年前の若さや勢いだけでなく、音楽が持つ“瞬間的な力”を証明するものでもあった。そして今聴き返しても、あの頃のAAAの勢いがそのまま胸に跳ね返ってくる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。