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20年前、ドラマ主題歌で異彩を放った“孤独のラテンソング” 痛みを抱えた“夜の熱”が宿る一曲

  • 2025.11.13

「20年前の秋、あの手拍子が流れた瞬間を覚えてる?」

冷たい風が街角のネオンを揺らし、どこか切ない季節の匂いがした2005年。TBS系ドラマ『今夜ひとりのベッドで』で、ひときわ異国の香りを漂わせる曲が流れた。情熱と孤独が交差するようなそのメロディは、静かな夜に寄り添う“赤い灯”のようだった。

ポルノグラフィティ『ジョバイロ』(作詞:新藤晴一・作曲:ak.homma)――2005年11月16日発売

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2015年、TOKYO FMに出演したポルノグラフィティ(C)SANKEI

揺らめく恋の鼓動が聴こえる

タイトルの“ジョバイロ”はスペイン語で“私は踊る”という意味。その名の通り、曲全体にはラテンのリズムが流れ、情熱的でありながらもどこか影を帯びた独特の世界が広がっている。

ギターが刻むリズムは、夜の街を漂う香水のように妖しく、サビへ向かうたびに熱が帯びていく。まるで、恋の痛みを抱えたまま踊り続ける誰かの姿を思わせるようだ。

ボーカル岡野昭仁の歌声は、力強さと繊細さが同居している。高揚するサビで感情を解き放ちながらも、言葉の端々にはかすかな哀しみがにじむ。激情の中に“抑えきれない孤独”を感じさせる歌い方こそ、この曲の最大の魅力といえるだろう。

“ラテン”を自分たちの音楽にした瞬間

作曲を手がけたak.hommaが生み出すメロディには常に“動き”があり、ギターのフレーズやコード進行が、聴く者を自然に身体ごと揺らす。そこに新藤晴一の詩が重なることで、単なる恋愛ソングを超えた“情景のある音楽”へと昇華している。

当時のポルノグラフィティは、ロックバンドでありながらも多彩なジャンルを柔軟に吸収していた時期。『ジョバイロ』では特にその姿勢が鮮明で、ラテンのリズムと日本語の響きを見事に融合させている。

そのバランス感覚は、情熱を日本語で描くという難題を軽やかに乗り越えた稀有な成功例といってもいい。

ドラマと共鳴した“夜のリアリズム”

主題歌として使われたドラマ『今夜ひとりのベッドで』は、大人たちの恋愛を描いたヒューマンドラマ。この曲の“踊るような哀しみ”は驚くほど寄り添っていた。ドラマで流れるたびに、登場人物たちの孤独や情熱が重なり、まるで音楽が心情の続きを語っているように感じられた。

同年の年末、『第56回NHK紅白歌合戦』で披露された際も、その妖艶で情熱的な世界観がひときわ異彩を放っていた。派手な演出をせずとも、音の一つひとつに“物語”が宿っていたのだ。

時代が移っても消えない“夜の熱”

2000年代半ば、日本の音楽シーンはバンドからソロ、デジタルサウンドへと多様化していく時代だった。そんな中で『ジョバイロ』は、ポルノグラフィティがバンドとしての音楽的挑戦を恐れず、メロディと物語性の両立を追求していた証のような曲でもある。

派手でもなく、明るくもない。けれど聴くほどに体温が上がる。“踊る”という言葉の奥に潜む、心の鼓動や痛みまでも音にしたような作品だった。

いま改めて聴くと、リズムは確かに時代を映しているのに、不思議と古びない。それは、恋や情熱が時代を超えて繰り返される“永遠のダンス”だからかもしれない。静かな夜、イヤフォンから流れるあの曲に、20年前の情景がふっと蘇る。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。