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30年前、日曜の夜を彩ったエンディングテーマ 派手さゼロの“呼吸”を感じる“穏やかな名曲”

  • 2025.11.12

「30年前、日曜の夜にテレビから流れたあの曲を覚えてる?」

異国の街並み、優しいナレーション、そして一日の終わりに静かに響く歌声――それが、旅番組『世界ウルルン滞在記』のエンディングに流れていた徳永英明の『未来飛行』だった。

徳永英明『未来飛行』(作詞・作曲:德永英明)――1995年11月1日発売

ミディアムテンポの穏やかなナンバー。大げさな展開ではなく、まるで夕暮れの風のように、どこまでも優しく心に触れる曲だった。

異国の“優しさ”とともに流れた時間

1995年から2007年まで放送された『世界ウルルン滞在記』(TBS系)は、俳優やタレントが海外でホームステイし、その土地の文化や人々の温かさに触れるドキュメンタリー番組だった。

華やかさよりも“人と人とのふれあい”を大切にする構成で、多くの視聴者が日曜の夜に心を癒やされた。『未来飛行』は、その“旅の余韻”をそっと受け止めるように流れた。

異国の光景が静かにフェードアウトしていく中、徳永の伸びやかな歌声がまるで「またどこかで会おう」と語りかけるように響いたのを、覚えている人も多いだろう。

“祈るように歌う”声のあたたかさ

『未来飛行』の魅力は、何よりもその歌声にある。徳永英明の声には、強さよりも包み込むような“透明な温度”がある。息を含んだトーンの中に、迷いや希望が同居しているようで、聴く人それぞれの心に寄り添ってくる。

メロディはミディアムテンポで穏やかに進行しながら、サビではふっと空が開けるような開放感が訪れる。“未来”という言葉が重く響く時代に、決して押しつけることなく、「生きることを肯定してくれる」ような響きがあった。

1990年代半ば、日本社会はバブルの終焉を経て、価値観が大きく揺れ動いていた。そんな時代に、徳永が紡いだ“飛ぶ”というイメージは、現実から逃げることではなく、“もう一度前に進むための静かな決意”として受け止められた。

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徳永英明-2006年撮影(C)SANKEI

“旅立ち”と“再会”の間にあるもの

徳永はこれまでも、日常の中の心の揺らぎを描いた作品を多く生み出していた。『未来飛行』もその流れの中にありながら、より穏やかで、より普遍的な感情をテーマにしている。

激しい愛や悲しみではなく、誰もが抱く“明日への不安と希望”を音にしているのだ。編曲はシンプルで、派手な打ち込みもなく、どこか“呼吸”を感じる音作りが特徴的だ。だからこそ、番組の映像と一緒に流れた時、まるで音楽そのものが“旅人の心”を代弁しているように聴こえた。

変わらない“心の風景”

『未来飛行』は、発売から30年経った今でも、当時の番組映像とともに思い出される曲だ。旅先で出会った人々との別れ、静かな笑顔、そしてそのすべてを包む歌声。そこにあるのは、国境や時代を越えた“人間の優しさ”そのものだ。

この曲が教えてくれるのは、“遠くへ行くこと”が目的ではなく、“誰かと心を交わすこと”こそが旅の意味だということ。そして、どんな別れのあとにも、新しい“飛行”が待っているという静かな希望だ。

日曜の夜、テレビの画面の向こうで誰かが笑っていたあの時間。『未来飛行』は、その記憶をやさしく包み込み、今もなお心の中で流れ続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。