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25年前、日本中が包まれた“幻想の春” 70万枚を超えて輝いた“孤高のポップアイコン”

  • 2025.11.11

「25年前の春、あなたはどんな夢を見ていた?」

2000年の東京。夜の街にネオンが瞬き、ケータイの着信音が時代のBGMになっていた頃。CDショップの新譜コーナーには、どこか神秘的な女性の横顔が並んでいた。そこに流れていたのが、この一曲だった。

浜崎あゆみ『vogue』(作詞:ayumi hamasaki・作曲:Kazuhito Kikuchi)――2000年4月26日発売

コーセー「VISSE」のCMソングとして放たれたこの曲は、70万枚を超えるセールスを記録し、浜崎あゆみの存在を“ポップアイコン”へとさらに押し上げた。

終わりと始まりをつなぐ、静かな春の序章

『vogue』は、電子的なリズムと切ない旋律が共存する、独特の“静かな疾走感”を持っている。リリースされた2000年春は、“20世紀の終わり”という意識がどこか街全体を包んでいた。そんな時代にこの曲が放つのは、煌びやかさの中にある「静かな終末感」

サウンドを手がけたのは菊池一仁。繊細で透明感のある旋律に、電子的なビートが重なっていく構成は、まるで時間の砂がゆっくりと落ちていくよう。ドラマティックでありながら、どこか儚い。

浜崎あゆみのボーカルも、この曲で新たなフェーズに入っていた。デビュー当時の少女的な張りを残しつつも、声の奥に“覚悟”のような陰影が宿りはじめる。それは「次の時代へ向かう彼女自身の決意」にも重なって聞こえた。

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2002年、「MTVビデオ・ミュージック・アワード・ジャパン02」に登場した浜崎あゆみ(C)SANKEI

“三部作”が描いた、ひとりの女性の物語

『vogue』は、同年に続く『Far away』『SEASONS』とともに構成される「絶望3部作」と呼ばれる作品群の第一章にあたる。幕開けとなる『vogue』では、“終わり”を受け入れる静かな強さが表現されている。

ミュージックビデオでは、廃墟のような世界で未来の子どもたちが過去を探すというSF的な映像世界が広がり、浜崎自身の内面世界と呼応していた。「アイドル」ではなく「表現者」としての彼女がさらに確立していく、その瞬間がここにある。

70万枚を超えた“共感”という名の現象

リリース当時、音楽番組ではこの曲が毎週のように流れていた。派手なダンスや煽りではなく、静かに歌い上げる姿。“誰にも寄りかからず、まっすぐに立つ女性像”が、多くのリスナーの心に響いた。

70万枚という数字は、単なる売上ではなく、時代の空気と共鳴した「共感の総量」でもあった。歌詞の中で繰り返される言葉の余韻が、まるで都市の夜風のように心をなでていく。聴く者の記憶にそっと入り込み、静かに居座る。

20世紀の終わりに見せた、“未来の浜崎あゆみ”

『vogue』の翌月にリリースされた『Far away』、そして夏の『SEASONS』へと続く流れは、まるで“映画のような三幕構成”だった。実際にミュージックビデオも3つの作品がつながる構成になっていた。この一連の作品を通じて浜崎あゆみは、「自分の言葉で世界を描くアーティスト」としての地位を確立する。

いま振り返れば、この時期の浜崎あゆみは“時代の象徴”でありながら、誰よりも孤独な場所で光っていた。彼女が描いた「vogue=流行」は、単なるトレンドではなく、時代の心そのものだったのだ。

そして、あの春の風のように

2000年の春。街を歩けば、この曲のイントロがどこかから聞こえてきた。CDのジャケットを手に取った瞬間の、あのきらめきと静けさ。それは、ひとつの時代が終わり、次の時代が始まる“境界の風”のようでもあった。

「vogue」は、あの頃の空気を今もそのまま閉じ込めている聴くたびに、あの透明な春の光が、心の奥でふっとよみがえる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。