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25年前、日本中が息をのんだ“新世代ロック” 静けさと熱が共鳴した“唯一無二のグルーヴ”

  • 2025.11.10

「25年前の秋、どんな音が夜の街に流れていたか覚えてる?」

2000年の東京は、ミレニアムを目前に控え、ざわめきと期待が入り混じっていた。携帯電話が鳴り響き、CDショップの試聴機からは新しい時代のサウンドが次々と流れていた。そんな喧騒の中で、ひときわ異彩を放ったのがLOVE PSYCHEDELICOだった。

LOVE PSYCHEDELICO『Last Smile』(作詞・作曲:LOVE PSYCHEDELICO)――2000年11月1日発売

デビューからわずか1年ちょっと。3枚目のシングルにして、彼らの“哲学”が最も鮮やかに刻まれた一曲だった。英語と日本語が滑らかに溶け合い、洋楽のようでありながら確かに日本の空気をまとっている。静かなリズムの中に宿る情熱。それが、時代の境目に立つ人々の心を静かに掴んだ。

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2013年、「ジョンレノンスーパーライヴ」に登場したLOVE PSYCHEDELICO(C)SANKEI

“ブルースの香り”がした新世代のロック

LOVE PSYCHEDELICOは、KUMIとNAOKIの男女2人によるユニット。彼らのサウンドを初めて耳にした時、多くの人が「日本にもこんな音があるのか」と驚いたはずだ。

60〜70年代のロックやブルースをルーツに持ちながら、それを現代的な感性で再構築している。『Last Smile』では、アコースティックギターの心地よいカッティングと、乾いたスネアの響きが印象的。

無理に盛り上げないのに、気づけば体がリズムに揺れている――そんな“余白のグルーヴ”が魅力だ。

KUMIのボーカルは、柔らかく、少し掠れた声でリスナーの耳を包み込む。彼女の英語詞と日本語詞が自然に行き来する独特のフロウは、どこかヒップホップ的な要素も感じさせ、単なる技巧ではなく、感情の流れそのもの。英語が意味を伝える前に“音として”感情を届ける、そのセンスがこのユニットの真骨頂だった。

“静けさ”の中にある強さ

当時の音楽シーンは、R&Bやロックの要素を取り入れたアーティストが次々と台頭していた。華やかなサウンドの裏で、リスナーたちは“本物の温度”を求め始めていた時期でもある。

そんな時に現れた『Last Smile』は、派手さのないアプローチで、多くの人の心に深く残った。曲全体が淡々としているようで、実は細やかな感情が波のように押し寄せてくる。ギターの残響、ドラムの間合い、そしてKUMIの息遣い。すべてが繊細に配置され、聴くたびに“沈黙の説得力”を感じさせる。

いつまでも終わらない“夜の残響”

このシングルはクォーターミリオン(25万枚)を達成し、デビューからの勢いを確固たるものにした。アルバム『THE GREATEST HITS』に収録され、広く支持を集めるきっかけにもなった。彼らの音楽に流れるのは、国や言語を超えた“共感のリズム”。聴く人それぞれの夜に、静かに寄り添う音だった。

2000年という年は、インターネットが少しずつ普及し、人々の生活も音楽の聴き方も大きく変わり始めていた。そんな中で『Last Smile』は、CDを手に取り、ジャケットを眺めながらじっくり聴く――そんな“アナログな時間”の最後の輝きでもあった。

静かなのに、熱い。孤独なのに、優しい。その矛盾が、この曲の永遠の美しさなのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。