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25年前、発売前から話題を呼んだ【切ない希望のCMソング】とは? 歌姫が感情を爆発させた“静かなバラード”

  • 2025.11.10

「25年前の初夏、あなたはどんな夜を過ごしていた?」

2000年の東京。街を照らすネオンが少し冷たく感じられる夜、携帯電話の着信音があちこちで鳴り始めた頃。喧騒の中でふと耳に届く、静かでやさしい旋律があった。

浜崎あゆみ『Far away』(作詞:ayumi hamasaki・作曲:Kazuhito Kikuchi、D・A・I)――2000年5月17日発売

本人出演のツーカーセルラー東京のCMで流れたこの曲は、発売前から多くの人の心に“何か懐かしいもの”を残していた。映像の中のあゆの姿は、当時の日本が抱えていた“希望と不安の交錯”を象徴していたようにも思う。

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2000年、自らがデザインした携帯電話「TU-KA A MODEL」の会見に登場した浜崎あゆみ(C)SANKEI

月明かりのように、そっと寄り添う歌

『Far away』は、前作『vogue』、次作となる『SEASONS』と並んで「絶望三部作」と呼ばれる作品だ。いずれも、2000年前後の浜崎あゆみを象徴する重要な楽曲であり、彼女が“表現者”へとさらに進化していく過程を映している。

メロディは、流麗でありながらもどこか儚い。浜崎の透明感のあるボーカルが、まるで月光が水面に反射して揺れるような美しさとして広がっていく。

彼女の歌声には、“届かないもの”への切なさと、“それでも前に進もうとする意思”が同居していた。明るくも暗くもない中間の温度。その曖昧さこそが、当時の彼女を支持した多くの若者の心情と重なっていたのだろう。

“静”の力を知った歌姫

浜崎あゆみといえば、圧倒的な存在感と感情の爆発を想起する人が多いかもしれない。だが『Far away』では、そのエネルギーをすべて内側に向けている。語りかけるような歌い出し、抑えた呼吸、そしてサビでふっと解き放たれる声。

そのコントラストが、曲全体に独特の緊張感を与えている。強さを誇示するのではなく、静けさの中にある芯の強さを見せたこと。それが、この楽曲の最大の魅力だった。

当時、テレビや雑誌で華やかに輝いていた“浜崎あゆみ”とは異なる、もう一人の“あゆ”がここにいた。自分の弱さを認めながら、それでも前へ進もうとする姿。彼女はこの作品で、時代の中で生きる人々の“素顔”を代弁していたのかもしれない。

CMが映した“遠くを見るまなざし”

ツーカーセルラー東京のCMの中で流れる『Far away』は、単なるCMソングの域を超え、映像と音楽が溶け合う“物語”を生み出していた。発売前からオンエアされたこともあり、曲を聴く前に“情景として覚えている”という人も多かっただろう。

彼女の視線の先にあるのは、過去なのか、未来なのか。それを明確に語らないことで、聴き手の想像が自由に広がっていく。そんな余白こそが、この曲を特別な存在にしている。

遠く離れても、届く場所

『Far away』は、聴くたびに印象が変わる曲だ。最初は切なく、次に優しく、そして今はどこか懐かしい。時間の経過とともに、聴く人自身の思い出が重なっていく

25年が経った今でも、街の片隅でこの曲が流れると、不思議と立ち止まりたくなる。それは、あの頃の自分が“まだそこにいる”と教えてくれるような感覚だ。静けさの中に息づく希望。遠く離れた記憶の中でも、確かに灯り続ける光。『Far away』は、そんな“変わらない優しさ”をそっと教えてくれる一曲だ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。