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25年前、平井堅が“声の緩急だけ”で描いた“問いかけソング”とは? 愛と欲を揺らす“都会的サウンド”

  • 2025.11.8

「25年前の秋、あなたはどんな“恋”をしていた?」

まだ携帯電話の着信音がモノラルだった2000年。夜の街には、CDショップの試聴機からR&Bのビートが静かに漏れていた。そんな時代の空気の中、ひとりのシンガーが“愛か、それとも欲か”という、人間の奥底に潜む問いを投げかけた。

平井堅『LOVE OR LUST』(作詞:平井堅・作曲:平井堅、松原憲)――2000年10月18日発売

愛と欲の狭間で生まれた“都会の祈り”

『LOVE OR LUST』は、平井堅にとって10枚目のシングル。8枚目『楽園』から続く洗練されたサウンドをさらに深化させ、より官能的で、より人間的な領域へと踏み込んだ作品だ。

作曲には松原憲、編曲には中野雅仁が参加。滑らかなグルーヴの中に、「抑えきれない感情の揺れ」が丁寧に織り込まれている。タイトルが示す通り、“愛”と“欲”というふたつの衝動が交錯するこの曲は、リスナーに明確な答えを提示しない。むしろ曖昧なまま、その曖昧さを美しく響かせる。

平井のボーカルは、低音では囁くように、サビでは一気に解き放たれるように広がる。声の緩急だけで“人間の本音”を描くその歌唱が、彼の表現力を決定づけた。

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2001年、日本武道館で歌う平井堅(C)SANKEI

ジャズでもポップでもない、“感情の音楽”

イントロのピチカート的な音が鳴った瞬間、空気が変わる。そこに漂うのは、夜の湿度、誰にも見せられない心のざわめき。リズムはR&Bのビートを軸にし、“満たされない恋”のリアルを淡く描いていく。

平井堅はこの時期、新世代R&Bシーンが台頭していく中で、独自の立ち位置を確立しつつあった。『LOVE OR LUST』は、その挑戦の象徴ともいえる。

30万枚が示した“静かな熱狂”

このシングルはクォーターミリオン(25万枚)を達成。派手なタイアップがないにもかかわらず、“口コミで広がる平井堅現象”を印象づけた一枚だった。2000年という時代は、アナログとデジタルの境界にあった。

25年経った今、夜の街でふとこの曲が流れると、心の奥の静かな場所が疼く。それは恋の記憶でも、後悔でもない。ただ、“誰かを強く想うこと”の美しさと怖さを思い出させる――そんな永遠の余韻だ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。