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27年前リリース→120万枚超を売り上げた“疲れた心を癒す”頑張らないソング 口コミで広がった“安らぎの歌”

  • 2025.10.27

「27年前の冬、街角で流れていたあのメロディ、覚えてる?」

平成の空気が少し落ち着き始め、華やかだったバブルの残り香が遠のいていた1998年。景気も人の心もゆるやかに冷え込み、どこか“癒し”を求める空気が漂っていた。そんな時代に、まるで春の陽だまりのように優しく届いた曲がある。

Kiroro『長い間』(作詞・作曲:玉城千春)――1998年1月21日発売

沖縄出身の女性2人組、Kiroroのメジャーデビュー・シングルだった。最初は大きな注目を集めることもなく、ランキングの初登場も20位以下。それでも、この曲は少しずつ、確実に人々の心を掴んでいった。

心の温度を取り戻すような声

Kiroroのボーカル・玉城千春の声の魅力は、何よりもその“まっすぐさ”だ。それこそが、当時のリスナーにとって心を解かす魔法のように響いた。高音を張り上げずとも伝わる優しさ。歌の途中に生まれる“間”の呼吸。それは「頑張らなくてもいいよ」と語りかけるようで、疲れた心に静かに寄り添った。

作曲も手がける玉城は、決して楽器が得意というわけでもない。言うならば日々の暮らしの中から生まれた旋律と言っていいだろう。だからこそ、『長い間』のメロディはどこまでも自然体で、“歌うこと”が“祈ること”に近いような、柔らかな温度を持っていた

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Kiroro-1998年撮影(C)SANKEI

沖縄から届いた、あたたかな風

Kiroroがデビューする前、この曲は1996年にインディーズ盤として地元・沖縄で発売されていた。そして1998年にメジャーリリース。それが口コミや有線放送を通じて広まり、ラジオリクエストが相次ぐ。発売から約2か月ほどでランキングで1位となり、最終的に120万枚以上を売り上げるロングヒットとなった。

“テレビではなくラジオや有線から火がついた”という点も象徴的だった。派手な宣伝よりも「いい曲だから聴いてほしい」という純粋な口コミの力。そして何より、Kiroroの音楽が沖縄という土地の空気をまとっていたことが、人々に新鮮な癒しをもたらした。

音と言葉の“重なり”が生んだやすらぎ

『長い間』の魅力は、シンプルな構成の中にある。ピアノとストリングスがゆったりと重なり、玉城の声を包み込む。過度なアレンジを避けたことで、歌詞やメロディがより際立った。

もう一人のメンバー、金城綾乃によるピアノもまた重要な要素だ。彼女の柔らかなタッチは、言葉の余白を美しく支え、音と声の“対話”のように響く。それが、Kiroro特有の“やすらぎのグルーヴ”を生み出している。

この“静かな音の重なり”が、90年代後半の音楽シーンでは異彩を放った。派手なサウンドが多かったこの時代に、ここまで穏やかでスローな曲がヒットしたのは、人々が本能的に“休息”を求めていたからかもしれない。

素朴さが時代を超える

Kiroroの2人はその後も『未来へ』『Best Friend』など数々の名曲を送り出していくが、やはり“原点”はこの『長い間』にある。そこには、彼女たちが音楽に込めた“人の温もり”がそのまま息づいている。

27年経った今聴いても、あのイントロのピアノが流れた瞬間、一瞬で空気がやわらぎ、時間がゆっくり流れ出す。それは、平成の終わりから令和を生きる今でも、変わらない。

『長い間』は、特別なドラマもタイアップもなく、ただ人から人へ届いた曲。それがこれほどまでに長く愛され続けるのは、「本当にいいものは、静かに残る」という真実を証明したからだ。

たとえ時代が変わっても、この曲が流れると、誰もが“あの頃の自分”を思い出す。それは、音楽が持つ最も美しい奇跡の形なのかもしれない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。