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35年前、国民的歌手へと駆け上がった“素直になれない”強がりポップ 30万枚超の“切ない前向きソング”

  • 2025.10.27

「35年前の秋、あなたはどんな恋をしていましたか?」

1990年の街は、まだバブルの残り香をまといながらも、どこか切なげな風が吹いていた。そんな中で誕生したのが、この軽やかで真っ直ぐなラブソングだ。

中山美穂『愛してるっていわない!』(作詞:安藤芳彦・作曲:羽場仁志)――1990年10月22日発売

中山美穂が主演をつとめたドラマ『すてきな片想い』(フジテレビ系)の主題歌として放送を通じて多くの人の耳に届き、30万枚を超えるヒットを記録。彼女はその年の『第41回NHK紅白歌合戦』でもこの曲を披露し、華やかな舞台に立った。

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1989年、映画『どっちにするの。』に出演時の中山美穂 (C)SANKEI

素直でまっすぐな恋心が弾けた季節

ドラマ『すてきな片想い』で演じたのは、等身大の女性の恋模様。そこに流れたこの主題歌は、まさにその物語の“心の音”だった。

アイドルから女優へ、そしてアーティストとしても成熟期を迎えていた中山美穂にとって、この楽曲は“自分らしさ”を素直に音へと変えた瞬間だった。

安藤芳彦の詞は、思ったままを言葉にできない恋の焦れったさを軽やかに描き、羽場仁志のメロディがその感情を明るく受け止めていく。どこまでも伸びやかな旋律と、まっすぐ前を向くリズムが、聴く者の心を自然と浮き立たせた。

“疾走感”の中にある、やさしい余白

『愛してるっていわない!』の魅力は、そのタイトルにある“感嘆符”のように、ちょっとした強がりと可愛らしさが同居していることだ。

テンポのよいビートと爽やかなサウンドが印象的で、歌い出しからラストまで一気に駆け抜ける。それにもかかわらず、どこか温かい余韻を残すのは、中山の声に宿る“透明な感情”があるからだ

90年代初頭、シンセサウンドやリズムマシンが音楽シーンを支配していた中で、この曲は派手さではなく“心地よいスピード感”で勝負している。まるで秋晴れの空を自転車で駆け抜けるような軽やかさ――そこに“恋をしていた頃の自分”を重ねる人も多いはずだ。

変わらない“恋の温度”

この楽曲が今もなお愛される理由は、メロディや編曲だけではない。それは“愛してる”という言葉を敢えて言わずに伝えようとする、その感情の機微にある。

派手な告白やドラマチックな展開ではなく、ただ想いを抱えて日常を過ごす――そんなリアルな恋の姿が、平成の始まりという時代の空気と重なった。

誰かを想いながらも、言葉にできなかった日々。そのもどかしさを、明るい曲調で包み込んだこの歌は、聴くたびに“あの頃の恋”のぬくもりを思い出させてくれる。

今も変わらない“前向きな恋の歌”

『愛してるっていわない!』が流れると、どんな世代の人も少しだけ笑顔になる。それは、この曲が恋の痛みや葛藤を否定するのではなく、“それも恋の一部”として優しく肯定してくれるからだ。時代が変わり、恋愛の形が多様になっても、誰かを想って胸が高鳴る瞬間は、きっと変わらない。

あの年の秋風のように――この曲は、今もそっと私たちの背中を押してくれる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。