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「これぞNHKの真骨頂」「ドラマ史に残る傑作」“度肝を抜くクオリティ”に絶賛の嵐…「世界中の人に観てほしい」語り継がれるワケ

  • 2025.10.30

ドラマや映画の中には、息をのむ展開で、見る人の心を強く揺さぶる作品があります。今回は、そんな中から“衝撃走る名作”を5本セレクトしました。本記事ではその第4弾として、ドラマ『花へんろ ~風の昭和日記~ 第一章』(NHK総合)をご紹介します。大正から昭和へと移りゆく時代のうねりの中、四国の商家に生きる人々の喜びと哀しみを丁寧に描いた本作の魅力とは――?

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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SK-Ⅱ 誕生35周年 PRイベント 桃井かおり(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):『花へんろ ~風の昭和日記~ 第一章』(NHK総合)
  • 放送期間:1985年4月13日 -1985年5月25日
  • 出演: 桃井かおり

大正12年(1923年)、四国・松山の町に暮らす静子(桃井かおり)は、東京の音楽学校に進学したいという夢を抱き、ひとりで家を出る決意をします。叔母のウメ(故・沢村貞子さん)から旅費を借り、船着場へ向かいますが、その矢先に関東大震災が発生し、東京行きを断念。行くあてがなくなった静子は、ウメのもとに身を寄せることになりました。

ウメは、のんびりした夫・源太郎(故・下條正巳さん)に代わって大店「富屋」を切り盛りする、しっかり者の女性です。彼女は聡明で芯のある静子を気に入り、次男の勝二(故・河原崎長一郎さん)との縁談をすすめます。やがて静子は富屋に嫁ぎ、商家での新しい生活を始めることになりました。

ウメの采配によって、富屋は「勧商場」(現在のデパート)として開店します。しかし、開店初日に大正天皇が崩御。慌ただしい中で新しい時代――昭和が幕を開けることに――。

そんなある日、静子は女遍路(故・樹木希林さん)を助けます。彼女は幼い娘を連れていましたが、まもなく姿を消し、娘だけを富屋に残して去ってしまいました。静子はその子に巡子と名づけ、家族とともに育てはじめます。半年後、母親が戻ってきますが、娘に会うことなく立ち去ろうとします。その姿を見た静子は、巡子を自分の子として育てる決心を固めるのでした。

昭和という新しい時代の幕開けとともに、四国の片隅で生きる人々の喜びと哀しみ、そして家族の絆を、静子のまなざしを通して描いた物語です。

向田邦子賞に輝いた傑作…“花へんろ”が紡ぐ時代の記憶

『花へんろ ~風の昭和日記~ 第一章』は、1985年にNHKの『ドラマ人間模様』枠で放送された連続ドラマです。脚本を手がけた故・早坂暁さんは愛媛県松山市の出身で、自身の生家『富家勧商場』をモデルに、庶民の視点から昭和という時代を描きました。母親をモデルにした主人公・静子を中心に据えた物語には、自伝的な要素が色濃く反映されています。『夢千代日記』と並ぶ早坂さんの代表作です。

出演は桃井かおりさん、河原崎長一郎さん、故・中条静夫さん、佐藤友美さん、樹木希林さんなど豪華な顔ぶれがそろい、故・渥美清さんの語りが作品に深みを添えています。

『花へんろ』は本作・第一章を皮切りに、時代の移り変わりとともに展開する長編シリーズです。1986年放送の第二章では、世界恐慌の影響や静子の出産など、昭和初期の苦難が描かれました。続く1988年の第三章では、放浪の俳人・種田山頭火の来訪を通して、日本が戦争へと向かう激動の時代が描かれています。

その後、1997年には戦後を舞台にした『新・花へんろ』が放送され、敗戦後の人々が再び立ち上がる姿と希望が描かれました。さらに2018年には、早坂暁さんの第一稿をもとに制作された『花へんろ 特別編 春子の人形』が放送されました。13歳で亡くなった早坂さんの妹をモデルにした物語で、芦田愛菜さんが主演をつとめています。

作品は放送当時から高く評価され、早坂さんは第4回向田邦子賞を受賞。演出を担当した故・深町幸男さんも、第36回芸術選奨文部大臣賞(放送部門・テレビドラマ演出)を受賞しています。これらの受賞は、NHKドラマとしての完成度と芸術性の高さを示しました。

「昭和とは どんな眺めぞ 花遍路」という一句をテーマに、遍路道を舞台に庶民の昭和を描いた本作は、NHKドラマ史に残る名作です。

戦争と平和を見つめた“庶民の昭和史”ーー語り継がれるワケ

ドラマ『花へんろ ~風の昭和日記~ 第一章』は放送から約40年経った今でも語り継がれる名作です。なぜ、ここまで愛され続けるのか、それは四国の遍路道沿いにある商家・富屋を舞台に、大正12年から昭和初期にかけて生きた庶民の暮らしと家族の絆を丁寧に描いている点が理由のひとつです。早坂暁さんが自らの母をモデルに脚本を書いた本作は、時代に翻弄されながらも懸命に生きる人々の姿を通して、「庶民の昭和史」を温かく伝えています。戦争と平和、血縁を超えた家族愛、そして生きる力――これらが物語の根底に流れるテーマです。

主人公・静子を演じた桃井かおりさんは、強さと優しさをあわせ持つ女性を自然体で表現し、「素敵」「桃井さんの演技が際立っている」と多くの称賛を集めました。

さらに、沢村貞子さんや樹木希林さんなど名優たちの存在感ある演技が、時代を生きた人々の姿をいっそう鮮やかに映し出し、「実力派俳優が揃った見応えのあるドラマ」と高く評価されました。

シリーズ全体を通しては、昭和のはじまりから戦後までを描き、戦争に翻弄されながらも前を向いて生きる人々の姿を見つめています。「戦後を生きた女性たちの力強さに胸が熱くなった」「静かに戦争を問うドラマ」「反戦の思いが込められた名作」といった声も多く、作品の深いテーマ性がうかがえます。

一方で、「子どものころ大好きだった」と懐かしむ声も多く、放送から年月が経った今もなお愛され続けている本作――。「花へんろはNHKドラマの最高峰」「ドラマ史に残る傑作」「これぞNHKの真骨頂」と称され、「再放送してほしい」「世界中の人に観てほしい」という声も絶えません。脚本、演出、音楽、俳優、語り――そのすべてが高い水準で融合した『花へんろ』シリーズは、“衝撃走る名作”の名にふさわしい、NHKドラマの到達点といえる作品です。


※記事は執筆時点の情報です