1. トップ
  2. 25年前、日本中が勇気をもらった“軽快だけど力強い”応援ソング 30万枚を超え胸熱ドラマと共鳴した“未来へつなぐ一曲”

25年前、日本中が勇気をもらった“軽快だけど力強い”応援ソング 30万枚を超え胸熱ドラマと共鳴した“未来へつなぐ一曲”

  • 2025.10.17

「25年前、あなたはどんな空を見上げていた?」

2000年の秋、ミレニアムの最中にあった日本には、期待と不安が入り混じる独特の風が吹いていた。街のCDショップには新しい時代の音楽が次々と並び、テレビからは人々の心を軽くするようなメロディが響いていた。そのひとつが、駆け抜けるようなリズムを持つこの曲だった。

ゆず『飛べない鳥』(作詞・作曲:岩沢厚治)――2000年10月18日発売

フジテレビ系ドラマ『涙をふいて』の主題歌として発表されたこのシングルは、ランキング初登場1位を獲得。累計で30万枚以上を売り上げ、彼らの10枚目のシングルとしても大きな存在感を残した。

undefined
2000年6月、大阪市内でシークレットライブをおこなったゆず (C)SANKEI

翼はなくても羽ばたける

『飛べない鳥』は、アコースティックデュオであるゆずのスタイルを大きく広げた楽曲だ。軽快なリズムと爽やかなギターのカッティング、そして岩沢厚治の真っ直ぐに突き抜ける歌声。そのすべてが合わさり、聴く者に「飛べなくても走り出せる」という勇気を与えてくれる。

メロディには切なさではなく、前向きに生き抜くエネルギーが込められている。だからこそ聴いた瞬間に背筋が伸び、自然と笑顔になる。

ドラマと共鳴したエンディング

ドラマ『涙をふいて』は、不慮の事故で親を失った子どもたちを、ひとりの男が引き取り、下町の小さな工務店を舞台に奮闘する物語だった。愛情と根性で育て上げようとするその姿に、毎週多くの視聴者が胸を熱くした。

毎週のラストに流れる『飛べない鳥』は、ドラマの余韻を温かく包み込み、観る人の感情を未来へとつなげていった。画面の中の物語と、テレビの前の私たちの日常が、この歌を通してひとつに重なった。

主題歌としての存在感を超え、時代の空気そのものを刻んだ点が、この曲の強さを証明している。

作詞・作曲を手がけた岩沢厚治は、ゆずの中でも芯の強い楽曲を生み出してきた人物だ。北川悠仁の柔らかな作品と対比されることで、そのストイックな筆致と疾走感が際立つ。『飛べない鳥』では、その個性が最大限に発揮され、ゆずの幅広さを示す象徴となった。

ミレニアムを照らした1曲

2000年という新世紀の入口で、『飛べない鳥』は多くの人にとって未来を歩くための応援歌だった。アコースティックな温もりとバンド的な迫力が融合したサウンドは、街の喧騒にもよく似合い、どこにいても前を向かせてくれる音楽として愛された。

四半世紀が過ぎた今でも、この曲を耳にすれば、当時の街のざわめきやドラマのシーン、そしてあの秋の空気が鮮やかに蘇る。飛べなくても、走ることができれば未来は開ける――そのシンプルで強いメッセージは、変わらず心を支えてくれる。

『飛べない鳥』は、ただのヒットソングではなく、“時代と共に生き続ける応援歌”として、今もなお輝きを放ち続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。