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25年前リリース→CM露出で初トップ10を記録した“鋭いのに柔らかい”ブレイクソング 「だりだり」が浸透した“自由奔放なポップロック”

  • 2025.10.16

「25年前、街のいたるところで口ずさまれていた曲を覚えてる?」

2000年秋、CDショップの試聴機やテレビのCM、そして深夜のラジオまで、あの突き抜けるような声が広がっていた。どこか都会的でありながら、等身大の女の子の感覚をそのまま音にしたような一曲。

矢井田瞳『My Sweet Darlin’』(作詞・作曲:ヤイコ)――2000年10月4日発売

矢井田にとってランキングで初トップ10入りとなったこの作品は、まだ無名に近かった彼女を一気に世間へと押し出した。ニコン「COOLPIX 880」のCMソングとしてもテレビでオンエアされ、街中の空気を軽やかに塗り替えていったのだ。

英語と日本語の“大胆な切り替え”

『My Sweet Darlin’』は矢井田瞳にとって2枚目のシングル。前作『B’coz I Love You』でも注目を集めつつあったが、まだその名前が浸透していたとは言いがたい。だからこそ、この楽曲でのブレイクは、まさに彼女のキャリアを決定づける瞬間だった。

この曲を初めて聴いたとき、1番のAメロからBメロまですべてが英語で歌われていることに驚かされた人も多いだろう。ところがサビに入った途端、日本語で一気に開放される。しかも繰り返される「Darlin’ Darlin’」のフレーズが耳に残り、気がつけば誰もが「だりだり」と言えば伝わるほどだった。

ポップロックの軽快さに、矢井田のボーカルが持つ熱が加わり、勢いだけでは終わらない奥行きを生んでいる。勢いとキャッチーさ、その両方を併せ持つ構成は、まさに2000年代初頭の空気を象徴していた。

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矢井田瞳-2002年撮影 (C)SANKEI

ヤイコという存在感

矢井田瞳の歌声は、突き抜ける力強さと柔らかさが同居している。「型にはまらない自由さ」をそのまま音にしたような感覚が、当時のリスナーに鮮烈な印象を与えた。

デビュー間もない新人でありながら、自ら作詞作曲を手がけるシンガーソングライター。さらにギターを抱えて歌う姿は、女性ソロアーティストとして新鮮だった。

あの時代の風を思い出す

CMソングとして大量に流れたことはもちろんだが、ランキングでもしっかりと結果を残したことが、この曲を特別なものにした。シングルはトップ10入りを果たし、矢井田の名前が一気に広まっていった。その後の彼女にとってヒット街道の入り口となり、2000年代の女性シンガーソングライターシーンに新しい光を灯したのだ。

2000年といえば、街にはレンタルCDショップが立ち並び、友人同士でお気に入りの曲を語り合っていた頃だった。『My Sweet Darlin’』が流れるたびに、誰もが少し自由になれたような気がしていた。

今聴き返しても、その軽快さと衝動は色あせない。時代を象徴するヒット曲でありながら、ひとりの女性アーティストが未来を切り開いた瞬間を刻んだ作品。それが『My Sweet Darlin’』なのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。