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35年前、紅白出場→スターダムへと駆け上がった「レトロなのにキレッキレで新しい」お祭りソング 和装パフォーマンスで魅せた“異色のデビュー曲”

  • 2025.10.15

「35年前の夏、街に響いていたのはどんな音だっただろう?」

バブルの残り香がまだ街を覆っていた1990年。花火大会や盆踊り、真夏の夜に人が集う場所には、派手な衣装をまとった新しいアイドルグループの歌声が鳴り響いていた。デビューと同時に大きな注目を集めたのが6人組の男性アイドルグループ「忍者」だった。

忍者『お祭り忍者』(作詞:原六朗・荒木とよひさ、作曲:原六朗・馬飼野康二)――1990年8月22日発売

熱気の中に現れた“お祭りソング”

この曲は、1952年に美空ひばりが歌った『お祭りマンボ』(作詞・作曲:原六朗)の一部を引用し、新たなメロディーと歌詞を加えて生まれた作品だった。昭和の名曲をベースに、平成流のアレンジを施したことで、世代を超えて耳に残るキャッチーさを持つ一曲に仕上がっていた。懐かしさと新しさの両方を同時に感じられるという点が、この作品の最大の魅力でもあった。

さらに、デビュー曲ながら2種類のシングルを同時発売するという大胆な仕掛けも話題を呼んだ。B面にはそれぞれ異なるオリジナル曲が収録され、ファンにとっては選ぶ楽しさもあった。結果として、2枚合わせて20万枚以上のセールスを記録する健闘を見せたのだ。

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1990年、第21回日本歌謡大賞で最優秀放送音楽新人賞受賞で歌う忍者 (C)SANKEI

軽快なリズムと華やかなパフォーマンス

『お祭り忍者』の魅力を語るうえで欠かせないのが、そのサウンドの“軽快さ”だ。鷺巣詩郎の手腕による編曲は、和のテイストをポップスに巧みに融合。お囃子のリズムを取り入れつつも、アイドルソングらしい親しみやすさを前面に押し出した。気づけば一緒に口ずさみたくなる中毒性のあるサビは、当時の夏祭りのBGMとしてもよく似合っていた。

さらにテレビで披露されたパフォーマンスでは、和装をベースにした華やかな衣装と息の合ったダンスが加わり、視覚的なインパクトも絶大だった。名前のとおり“忍者”をテーマにした動きや振り付けは、バラエティ番組や歌番組で一度見ただけでも強く印象に残った。

デビューと同時に掴んだ紅白の舞台

『お祭り忍者』はリリース同年、大晦日の第41回NHK紅白歌合戦で披露されることとなる。新人アイドルグループが初年度から紅白に立つのは快挙であり、グループとしての存在感を一気に世間に知らしめた瞬間でもあった。華やかな舞台に映える彼らの姿は、まさに“お祭り”そのものだった。

この一曲で忍者は一気にスターダムへと駆け上がり、その後も数々の楽曲で活動を続けていく。ジャニーズの中でも独自の位置を築いたグループとして、記憶に残る存在となったのだ。

時代と共鳴した“異色のデビュー”

1990年という時代は、昭和の文化を懐かしみながら、新しいポップカルチャーへとシフトしていく時期だった。そんな転換点で登場した『お祭り忍者』は、過去と未来をつなぐ象徴的な存在だったといえる。美空ひばりの楽曲から受け継いだフレーズに、新しい時代の息吹を吹き込むことで、世代を超えて親しまれる“お祭りソング”へと昇華した。

今でも「お祭り」と聞けば、この曲を思い出す人は少なくない。あの夏の熱気とともに、軽快なリズムが脳裏によみがえる。時代を越えて響くエンターテインメント性こそ、この曲がデビュー曲にして特別な意味を持つ理由なのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。