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20年前、国民的ゲームBGMでチャートに君臨した「ネタっぽいのに本格的」異色ソング “正体不明バンド”のデビュー曲

  • 2025.10.15

「20年前、あなたはどんな音楽に笑わされていた?」

2005年、街を歩けば携帯電話から最新のヒット曲が響き、カラオケボックスでは学生も社会人も夜な夜な声を張り上げていた。そんな中、ゲームのBGMを大胆にサンプリングした“トンチキな曲”がラジオやテレビから流れてきた。

トンガリキッズ『B-DASH』(作詞・作曲:トンガリキッズ)――2005年3月16日発売

この楽曲は、人気ゲームソフト『スーパーマリオブラザーズ』のBGMを引用し、マリオを高速で走らせる「Bダッシュ」という操作からタイトルが付けられた。デビューシングルにして唯一のシングル『トンガリキッズ I』のリードトラックであり、まさに異色中の異色として音楽シーンに現れた存在だった。

ゲームと音楽が交差した瞬間

トンガリキッズは、3人組のテクノ系アーティスト。リリース当初から「誰なんだ?」と話題を呼び、結果として音楽番組にも出演するに至る。ユニットの“正体不明感”と、誰もが耳にしたことのあるマリオの旋律が重なった時、曲は一気に大衆の記憶に焼き付いた。

音楽番組で彼らが披露するステージは、パフォーマンス以上にその謎めき自体がインパクトを持ち、当時のテレビ文化と相まって強烈な存在感を放っていた。「ゲームの音がそのままチャートに?」という驚きと笑いは、世代を問わず広がっていったのだ。

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※Google Geminiにて作成(イメージ)

売れすぎた“ネタ曲”

『B-DASH』はクォーターミリオン(25万枚)を超えるセールスを記録した。テクノ系、かつコミカルなアプローチのシングルとしては異例のヒットだったと言える。ランキング上でも目立つ存在となり、同年の音楽シーンに確かな爪痕を残した。

多くの人は「ネタ曲」として記憶しているかもしれない。しかし、数字が証明するのは、ただの一発ギャグでは終わらなかったという事実。口コミやテレビ出演で拡散し、あの耳馴染みのあるメロディが「笑いながらも、つい口ずさんでしまう」体験を広めていった。

ガチクラブサウンドの血が流れていた

後に明らかになったのは、メンバーの一人「ハニホヘニハー」が実はJazztronikの野崎良太だったという事実。クラブシーンで高い評価を受けていたアーティストが関わっていたことは衝撃的な裏話だ。

野崎は、その後クラブシーンにとどまらずサウンドプロデューサーとして数々のアーティストとのコラボ、映画やドラマ音楽など活躍の幅を広げていく。表面的にはユーモア全開の曲でありながら、裏には確かな音楽的素養が潜んでいたのだ。

“遊び心”が残した足跡

『B-DASH』のヒットは、J-POPの世界に“遊び心”が大きな可能性を持つことを示した瞬間でもあった。真剣なラブソングやバラードが並ぶ中、ゲームと音楽をつなぐ異色の試みが25万枚以上を売り上げる現象になったのは象徴的だった。

今振り返れば、SNSがまだ普及し始める前の時代に、“共通の笑い”をリアルタイムで共有できる楽曲として存在したのが『B-DASH』だったのかもしれない。ふと耳にした瞬間、教室や職場、街のどこかで誰かが同じフレーズを口ずさんでいる。そんな「一瞬でみんなをつなぐ力」を持っていたのだ。

20年経った今も、この曲を聴けばあの頃の空気が甦る。遊び心と本気の境界を軽やかに飛び越えた『B-DASH』は、決して消費されるだけの一発屋ではなく、2005年という年の記憶を象徴する存在だ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。