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26年前リリース→90万枚超ヒットを記録した“情熱的なのにクールな”ラテンソング 国民的シンガーが放つ“都会派アンセム”

  • 2025.10.8

「26年前、街にラテンの風が吹いていたのを覚えてる?」

1999年の秋、世紀末を前にした日本には、どこか浮き立つような空気と、不安の入り混じったざわめきがあった。CDショップの店頭には最新ヒットのポップスが並び、深夜のテレビドラマが大人たちの心を占領していた。そんな時代に、ひときわ異彩を放つラテンテイストの楽曲がリリースされ、リスナーを一気に熱狂へと誘った。

福山雅治『HEAVEN』(作詞・作曲:福山雅治)――1999年11月17日発売

この曲はフジテレビ系ドラマ『OUT〜妻たちの犯罪〜』の主題歌に起用され、放送と同時に話題をさらった。福山にとっては新たな音楽的挑戦を示す一曲であり、その挑戦は見事に大衆の心をつかんだ。

灼熱のようなリズムに包まれて

『HEAVEN』の魅力を語る上で外せないのが、そのリズムの熱さだ。1990年代後半、日本の音楽シーンにはダンスミュージックやR&Bの流れが浸透し、サウンドの幅は確実に広がっていた。そうした中で福山は、ラテン的なパーカッションや軽快に跳ねるギターのフレーズを大胆に取り込み、佐橋佳幸のアレンジによって洗練された形でまとめ上げた。熱を帯びながらもクールさを失わないそのバランスは、福山ならではの“都会派ポップ”の完成形のひとつだったといえる。

リズムが前に出すぎず、メロディの余白をしっかりと活かしている点も印象的だ。ドラムやパーカッションが刻むリズムが自然に身体を揺らし、さまざまな楽器の音が夜の街を駆け抜ける車のライトのように煌めく。こうしたサウンドが重なり合うことで、聴き手はまるで都会の夜を熱で包み込まれるような感覚を覚えたのだ。

そして、そのサウンドの上で響くのが福山のボーカルだ。低音の落ち着きと伸びやかさを兼ね備えた声は、熱気を放ちながらも決して荒々しくはなく、聴き手を安心させる包容力を持っていた。激しさと余裕の両方を同時に表現できるこの歌声があったからこそ、『HEAVEN』は単なるラテン風の挑戦にとどまらず、福山雅治の代表作のひとつとして人々の記憶に刻まれたのである。

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2007年、鳥取県伯耆町の植田正治写真美術館に登場した福山雅治 (C)SANKEI

ドラマとともに刻まれた記憶

この楽曲が強く印象づけられた理由のひとつが、田中美佐子と飯島直子が主演をつとめたドラマ『OUT〜妻たちの犯罪〜』の存在だ。桐野夏生の小説を原作とし、犯罪と日常の狭間を描いた衝撃的なストーリーは、放送当時から大きな話題を呼んだ。その映像の余韻とともに流れてきた『HEAVEN』は、視聴者の記憶に深く結びつく“ドラマの旋律”として残っている。

物語の緊張感に寄り添うように、曲の持つラテンの熱が心を揺さぶる。テレビの前で耳を奪われたリスナーは、CDショップに足を運び、この曲を手に取った。

ミリオン目前の大ヒット

結果として『HEAVEN』は、ロングセールスとなり最終的に90万枚以上を売り上げる大ヒットを記録した。世紀末の音楽シーンはCDセールスがまだ強い力を持っていた時代。だが、その中でここまでの数字を叩き出したのは、福山の存在感と楽曲の強度があってこそだった。

振り返れば1999年という年は、国内外の音楽がジャンルを越境しながら混じり合っていった時代だった。その中で『HEAVEN』は、ラテンという異国の熱を取り込みながらも、日本のポップシーンに違和感なく溶け込み、多くの人々に支持された。

今も耳にすれば、あの時代のざわめきとともに、どこか灼熱の陽射しを浴びたような余韻が蘇る。

90年代の終わりを告げる鐘のように、鮮烈な熱を残した一曲。それが福山雅治『HEAVEN』だった。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。