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曲の印象が変わるシンクロ性に“称賛の声”「違う様に聞こえる」「歌詞が凄すぎる」人気アニメ×ミセスの名曲に“秘められた意味”

  • 2025.12.30
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Google Geminiにて作成(イメージ)

国民的アーティスト・Mrs. GREEN APPLEの楽曲『ライラック』。名曲として知られ、耳にしたことがある人も多いだろう。しかし実はこの曲が、『忘却バッテリー』のアニメオープニングテーマとして起用されていることを、意外と知らない人がいるのも事実だ。

SNSでは「アニメの曲なの知らなかった」「OP見てびっくりした」という驚きの声の他、「作品知ると違う様に聞こえる」「歌詞が凄すぎる」という称賛の声も上がっている。

記憶喪失の捕手と剛腕投手が織りなす物語

『忘却バッテリー』は、『少年ジャンプ+』にて2018年4月から連載されている野球漫画である。原作はみかわ絵子、試合制作は高嶋栄充が担当し、2024年にはアニメ化も実現した人気作だ。

物語の中心となるのは、記憶喪失となった天才捕手・要圭と、彼を信じて疑わない剛腕投手・清峰葉流火。中学時代、この二人は“怪物バッテリー”と呼ばれ、圧倒的な実力で対戦相手から自信を奪ってきた。しかし、智将と呼ばれた捕手の要は突然の記憶喪失で人格すら変化し、物語は大きく動き出す。

一見すると二人だけの物語に思えるが、この作品の魅力は“周囲”にもある。かつて彼らに敗れ、野球を諦めた者たちが再び集う構造は、痛みを抱えながらも前に進もうとする青春そのものだ。記憶を失った圭と、彼らを忘れられない過去を持つ球児たちが同じグラウンドに立つ姿は、皮肉でありながらも希望に満ちている。

『ライラック』とシンクロする青春

そんな物語を彩るのが、Mrs. GREEN APPLEの『ライラック』だ。曲単体で聴けば、瑞々しい青春を連想させる名曲。しかし歌詞を物語と重ね合わせると、その親和性の高さに驚かされる。

たとえば「君を待つよ ここでね」というフレーズは、記憶を失った圭を、マウンドでひたすら待ち続ける葉流火の姿と重なる。また2番に登場する「嘘つきにはなりたくない」という言葉は、アニメ第11話のタイトル「俺は嘘つきだ」と共鳴し、作品を知る者に深い余韻を与える。

ここにさらに『ライラック』の花言葉、“友情”と“思い出”を重ねると、より味わい深い意味が浮かび上がる。記憶を失った圭は“思い出”を持たず、しかし彼を支える葉流火との絆は“友情”として確かに存在している。また、この二人の存在によって一度野球を諦めた仲間たちが再びグラウンドへ戻ってくる構図も、まさに花言葉そのものだ。忘れてしまった者と、忘れられない傷を抱える者たちが一緒に歩き出す。その姿は、ライラックが象徴する“友情”と“思い出”の再生を体現しているかのように眩しく映る。

曲と物語を重ねた先に

『忘却バッテリー』は確かに要と葉流火を中心とした物語だが、登場人物それぞれが主人公であり、彼らの挫折や再起が丁寧に描かれている。そのドラマを支えるオープニングとして『ライラック』はただの主題歌以上の力を持つ。

何も知らずに聴いても胸を打つ一曲。だが作品と合わせて体験すれば、その響きはさらに鮮やかになるはずだ。


ライター:柚原みり。シナリオライター、小説家、編集者として多岐にわたり活動中。ゲームと漫画は日々のライフワーク。ドラマ・アニメなどに関する執筆や、編集業務など、ジャンルを横断した形で“物語”に携わっている。(X:@Yuzuhara_Miri