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「あげるって言われた」友達のカードを盗んだ息子、ウソをつく姿にショック|息子が泥棒になりました

  • 2025.8.24

平凡な母親・里香が、小学2年生の長男ユウの盗みをきっかけに直面する心の葛藤を描きます。ある朝、急に発覚したのは幼い息子の過ち。親としてわが子にどう向き合うべきか…里香は悩みながらも息子本人に問いかけます。『息子が泥棒になりました』をごらんください。

次男・リョウの告発、ユウの机の上のカードが友達のものであることが発覚。最初はウソで乗り切ろうとするユウだったが、里香の問い詰めに、ついに「ポケットに入れた」と盗みを認めます。しかし、すぐに「あげると言われた」とウソを重ね、里香は深い悲しみと絶望にさいなまれます。

盗んだ?信じたくない現実

ママリ

リョウの言葉に、私の視線は釘付けになった。ユウの机の上。そこに置かれた、確かに見慣れないモンスターカード。それは、ユウが持っているどのカードとも違う、少し古びたような、でもどこか特別に見えるレアカードだった。

私の脳裏に「ぬすんでる」というリョウの声がこだまする。

「リョウ、何を言ってるの?」

私の声は、ひどく震えていた。ユウは、私の視線に気づいて、机の上のカードを見て固まっている。顔色がみるみるうちに青ざめていくのが見て取れた。彼の小さな肩は、明らかに緊張でこわばっていた。

「だってきのう、このカード見せてもらったもん。お兄ちゃんも持ってないレアカードなんだよ」

リョウは、自分の言っていることが正しいと主張するかのように、少し興奮気味に、そして純粋な眼差しで私を見つめる。幼いリョウの言葉は、まるで鋭いナイフのように、私の胸に突き刺さった。私の大切にしている日常が、ガラガラと音を立てて崩れていくような感覚に襲われる。

私はゆっくりと、ユウに向き直った。彼の目は泳ぎ、私と視線を合わせようとしない。その態度だけで、何かが起こったことを確信した。

確信に近づく嫌な勘

ママリ

「ユウ、これ、どうしたの?」

私の声は、自分でも驚くほど冷静だった。冷静でいなければ、と思った。ここで私が感情的になっても、何も解決しない。ただ、胸の奥で、鉛のような塊がズンと重く沈んでいくのを感じた。ユウは体をこわばらせたまま、蚊の鳴くような声で呟いた。

「しらない……わかんない……」

震える声。目に見えてわかる動揺。ユウがこんな風に嘘をつくとき、必ず見せる仕草だった。その言葉は、彼の心の奥底にある罪悪感を隠そうとする必死の試みのように聞こえた。

「ユウ、正直に言ってごらん。誰かのものだよね? どうしてユウの机の上にあるの?」

私は努めて優しく、でも真剣な声で問いかけた。ユウは顔を伏せ、俯いたまま何も言わない。その沈黙が、私の心をさらに締め付けた。夫・和樹が新聞をたたみ、心配そうに私たちを見つめている。リョウも、兄の様子がいつもと違うことに気づいたのか、静かに私たちを見ていた。

悲しみと絶望

ママリ

長い沈黙が流れた。私の心臓は、まるで激しいドラムのように鳴り響いていた。

「もしかして……昨日、誰かのカードを間違えて持って帰ってきちゃったとか?」

私は「間違えて」という言葉を強調して言ってみた。もしかしたら、本当に間違えたのかもしれない。そうであってほしい、というかすかな希望にすがりたかった。ユウは顔を上げないまま、小さく頷いた。

「……違う」

彼の口から出たのは、私の希望を打ち砕くような、たった一言だった。その言葉が、私の心をさらに重くする。

「じゃあ……どうしたの?」

私はさらに言葉を重ねた。ユウの小さな肩が震えている。そして、絞り出すように、彼の口から信じられない言葉が零れ落ちた。

「……ポケットに入れちゃった」

その瞬間、私の頭の中に響き渡ったのは、ガラスが砕け散るような音だった。息が止まる。心臓が、一度止まったかのように感じた。欲しくて、ポケットに。それはつまり、盗んだ、ということ。私の息子が、泥棒したなんて。

「ユウ……それはね、泥棒っていうんだよ。人のものを勝手に持っていくのは、いけないことだよね?」

私は、震える声で、必死に言葉を選んだ。ユウは俯いたまま、ふるふると首を横に振った。

「泥棒…?ち、違うよ!えっと…ほしいって言ったら、あげるって言われて…だからポケットに…」

彼は、まるで言い訳をするかのように、慌てて言葉を繋いだ。彼の必死な様子に、私はさらに心がざわついた。あげるって言ってくれた? そんなこと、本当にあり得るのだろうか?

「そっか。じゃあ、ママはお礼しないとね。お友だちのママに連絡するから電話番号を教えて」

私がそう言うと、ユウの顔はみるみるうちに恐怖でゆがんだ。

「やだ!やだやだ!本当はウソ…ごめんなさい……」

彼は泣き出しそうな声で、私に懇願した。その言葉が、彼が嘘をついている何よりの証拠だった。私の目の前で、ユウが、今まで見たこともないような動揺と罪悪感にさいなまれていた。その姿に、私は深い悲しみと、そして、どうしようもない絶望を感じていた―――。

あとがき:揺らぐ信頼

ユウの盗みが明らかになり、彼が嘘を重ねてしまう姿を通して、親である里香の計り知れない衝撃と悲しみが深く描かれています。幼い弟の純粋な告発、ユウの動揺と嘘、そしてついに明かされる真実。それは里香にとって、息子の行動だけでなく、自分自身の育て方への問いかけでもありました。

著者:ゆずプー

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