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「デリケートな問題」“不適切な描写”に抗議が勃発する異例事態…だけど「NHKの底力を感じた」大絶賛の傑作ドラマ

  • 2025.9.20

テレビドラマの中には、時に大きな波紋を呼び起こす作品があります。今回は、そんな中から"物議を醸した名作ドラマ"を5本セレクトしました。本記事ではその第4弾として、ドラマ『コンカツ・リカツ』(NHK総合)をご紹介します。39歳の独身女性と、夫から見放された主婦が同じ屋根の下で“婚活”と“離活”に挑む――。そんな本作が弁護士会から抗議を受けた理由とは――。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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第21回東京国際映画祭に出席した桜井幸子(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):ドラマ『コンカツ・リカツ』(NHK総合)
  • 放送期間:2009年4月3日~5月22日
  • 出演:桜井幸子 (町田七海 役)

39歳になった七海(桜井幸子)は、恋人もいないまま母の幸子(松坂慶子)と二人暮らし。結婚に対して焦りを感じることもなく、気ままに過ごしていましたが、友人のるり子(国生さゆり)や後輩の美穂(大桑マイミ)に誘われて、「お見合いバー」に足を運ぶことになります。

ところが、長年のライバルで、いわゆる“勝ち組妻”の梨香子(清水美沙)と鉢合わせし、気まずい雰囲気に。さらに、娘の将来のため、親同士の代理見合いに参加した幸子が「39歳の娘は価値ゼロ」と言われ、涙ぐむ姿を目にしてしまいます――。

そんな折、梨香子は夫の正彦(津田寛治)から突然「妻として価値ゼロ」と突きつけられ、幼い息子を連れて七海の家に転がり込んできました。婚活市場で『価値なし』とされた七海と、夫に見放された梨香子。立場は異なりますが、同じように行き場を失った二人は、一つ屋根の下で共に暮らすことになります。

実家を売るまでの三か月という期限の中で、「結婚相手」としても「妻」としても価値がないとされた二人の女性が、それぞれの“婚活”と“離活”をどのように乗り越えていくのかが描かれます――。

「婚活」と「離活」- アラフォー世代の現実を描いたドラマ

『コンカツ・リカツ』は、NHK総合の金曜夜10時に新設されたドラマ枠の第1弾として、2009年4月3日に放送が始まりました。

タイトルが示すように「コンカツ=結婚活動」と「リカツ=離婚活動」をテーマに、アラフォー世代の女性たちが自分の現実と向き合う姿を描いた作品です。新ドラマ枠の幕開けを飾る作品として、“女性の本音がぶつかり合うドラマ”というコンセプトが打ち出され、大きな話題となりました。

原案は山田昌弘さん、脚本は『ガラスの仮面』『ストーカー 逃げきれぬ愛』『氷点』などで知られる野依美幸さんです。

キャストには桜井幸子さん(2009年芸能界引退)、清水美沙さん、国生さゆりさん、松坂慶子さん、津田寛治さんらが出演し、世代の違いやそれぞれの立場を丁寧に演じています。

主題歌にはLINDBERGの代表曲『今すぐKiss Me』が起用されました。90年代を代表する名曲が新たなアレンジでよみがえり、ドラマに彩りを添えています。

さらに、この作品をきっかけに広まった「リカツ=離活」という言葉は、当時の社会を映すキーワードとなりました。離婚を“未来のためのステップ”、次の人生を見据えた“前向きな選択”ととらえるようになったのです。

「リカツ=離活」は雑誌やテレビでも広く取り上げられ、2009年のユーキャン新語・流行語大賞の候補にも選ばれるなど、大きな反響を呼びました。

行政書士の助言が呼んだ波紋

『コンカツ・リカツ』は放送当時、物語の内容そのものだけでなく、予想外の形で議論を巻き起こしました。

2009年5月8日の放送回で、清水美沙さん演じる梨香子が夫の浮気をきっかけに離婚を考え、行政書士に相談する場面が登場します。そこで行政書士が「最終的には慰謝料は分割に、養育費も月々の支払いになるでしょう」と見通しを語り、助言まで行ったことが問題視されたのです。

大阪弁護士会は「弁護士しか扱えない法律相談業務にあたる」と指摘し、視聴者に誤解を与えかねないとしてNHKに抗議書を送付。ドラマの描写に対して弁護士会が正式に抗議するのは、きわめて異例のことでした。

一方で、大阪府行政書士会は「離婚についても、当事者間で争いがない場合、書類作成に必要な範囲で相談に応じることは可能」との見解を示しました。当時は司法制度改革で法曹人口が急増していた時期でもあり、職域をめぐる緊張が背景にあったとされています。

NHKは取材に対し「ご指摘の趣旨を尊重し、今後の番組制作の参考にさせていただきたい」とコメント。大きなトラブルには至りませんでしたが、このドラマをきっかけに、弁護士と行政書士の業務領域をめぐる議論が広く世間に知られるようになりました。

このことに、SNSでは「デリケートな問題」「事前のチェックが大事」という視聴者の意見も見られました。単なるフィクションを越えて、ドラマ制作の責任について考えさせられる契機となったのではないでしょうか。

「NHKの底力」視聴者を魅了した名ドラマ

本作は放送内容をめぐって思わぬ波紋を広げましたが、ポジティブな声も数多く寄せられています。「中年女性のシワまで強調されて、本気の演技が伝わった」とキャスト陣の真摯な演技を称える声や、「バブル期以降の女性の自己実現を描いた一作」と社会的なテーマと結びつけて評価する声もあります。さらに「NHKの底力を感じた」と脚本を称える声や、「再放送して欲しい」という声も多数寄せられ、幅広い支持を集めていたことがうかがえます。

このように、『コンカツ・リカツ』は劇中のストーリーだけでなく、その描写やテーマが社会にも影響を与えた「物議を醸した名作ドラマ」です。


※記事は執筆時点の情報です