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40年前、夏の終わりに口ずさんだ“切ない曖昧ラブソング” CMで広がり世代を超えて愛される“普遍の一曲”

  • 2025.8.31

「40年前の夏の終わり、どんな歌を口ずさんでいた?」

1985年の日本。バブル経済が始まる直前の時代で、街はどこか未来へ向かう浮き立つ空気に包まれていた。

街頭にはカラフルなファッションを身にまとった若者が集い、駅前のレコード店の棚には歌謡曲とニューミュージックが混ざり合い、テレビの音楽番組では新しいアイドルと実力派バンドが並んで歌っていた。

そんな中で、サザンオールスターズがリリースした一曲は、灼けた季節の熱をやわらげ、秋風を先取りするような“切ないラブソング”だった。

サザンオールスターズ『メロディ(Melody)』(作詞・作曲:桑田佳祐)ーー1985年8月21日発売。

バンドにとって23枚目のシングルであり、累計で20万枚を超えるセールスを記録した。2024年にもユニクロのCMソングとして再び耳にされ、世代を超えて知られる一曲となっている。

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サザンオールスターズのボーカル・1980年撮影(C)SANKEI

夏の終わりを映した“切なさの旋律”

サザンオールスターズが生み出すバラードの最大の魅力は、単なる「恋の歌」にとどまらない情緒感の美しさにある。『メロディ(Melody)』もその典型だ。軽やかなフレーズに遊び心ある言葉が散りばめられていながら、曲全体にはどこか翳りが差し、夏の終わりから秋の入口へと向かう空気を纏っている。

桑田佳祐の声が描き出すのは、はっきりと説明できる感情ではなく、“余韻として残る気配”。その曖昧さこそが聴く人の記憶を揺らし、聴くたびに別の景色を思い起こさせる。

サザンの楽曲が世代を超えて愛され続ける理由は、この「美しい情緒の揺らぎ」にあるのだ。

言葉遊びと旋律の妙

桑田佳祐の作詞作曲は、英語と日本語を自由に往来する独特のスタイルで知られる。この曲でも「strawberry woman」「nlueberry lady」といった果実を冠したフレーズが印象的だ。

軽妙な言葉遊びの背後に漂うのは、ほんのりとした甘さとほろ苦さ。聴き手は思わずその“曖昧な感覚”に引き込まれる。

切なさと温かさが同居する余韻を残し、曲名の通り“旋律そのもの”で語りかけてくる。言葉とメロディの一体感が、この曲を単なるスローナンバーではなく、耳に残る特別な存在にしている。

時代をまたいで響く“旋律の記憶”

シングルは20万枚を超えるセールスを記録し、ランキングでも確かな存在感を示した。当時はアイドルやニューミュージック勢の派手なヒットが連日話題をさらっていた時代。そんな中で『メロディ(Melody)』は、決して爆発的な売れ方ではなかったが、じわじわと聴き手の心に染み込み、長く記憶に残る一曲となった。

“夏から秋へ”という季節の情緒を刻み込み、派手な盛り上がりよりも余韻や切なさを大切にする楽曲が、多くの人の心に寄り添ったのである。

さらに年月を重ねてもこの曲は生き続けた。ユニクロのCMで流れたとき、当時を知る世代には懐かしさを、初めて耳にする若い世代には新鮮さを届けた。時代をまたいで聴かれるのは、流行や文脈を超えた「旋律そのものの力」があるからだ。

時代を超えて響く“メロディ”

『メロディ(Melody)』に流れているのは、まさに夏の終わりの切なさだ。強い陽射しが少しずつやわらぎ、賑わいの後にふと訪れる静けさ。その移ろいの瞬間を、桑田佳祐の声と旋律がやさしくすくい上げている。

1985年に生まれたこの曲は、40年を経た今もなお、聴くたびに同じ感覚を呼び覚ます。季節が変わるたびに感じる胸のざわめきや、過ぎ去った時間への郷愁。その揺らぎは、時代が変わっても人の心に普遍的に宿るものだ。

単なる一曲のヒットではなく、誰にとっても“あの季節”を思い出させる永遠の情緒として、これからも響き続けていくだろう。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。