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25年前、静かに50万枚を売り上げた“ロングセールスな別れのバラード” 亡き祖父へ思いを馳せた“声と余白”

  • 2025.8.31

「25年前、どんなバラードに涙した?」

2000年という年は、世紀の変わり目で、どこか落ち着かない空気が街に漂っていた。街角のCDショップにはポップスやダンスナンバーがずらりと並ぶ。華やかさとスピード感があふれる音楽シーンの中で、ひときわ静かに、しかし深く心にしみ込む曲があった。

聴いた瞬間、誰もが自分自身の“思い出”や“大切な人”を重ねてしまうような歌。

花*花『さよなら 大好きな人』(作詞・作曲:こじまいづみ)ーー2000年10月25日発売

メジャー2枚目のシングルとしてリリースされたこの曲は、田村正和主演のテレビドラマ『オヤジぃ。』(TBS系)の主題歌にもなり、日本中の心に静かに広がっていった。

胸に沁みる“声”と“余白”の力

『さよなら 大好きな人』を耳にすると、印象に残るのはやはり2人のハーモニーとピアノの旋律だ。聴き手はその響きの中に余白を感じ、自分自身の記憶や感情を自然に重ね合わせることができる。重なり合う2人の歌声は、温かさと切なさが同時に胸を締めつけるように迫ってくる。

この曲を書いたこじまいづみは、16歳の頃に亡くした祖父への思いを歌に込めたという。

そんな大切な思い出から生まれたからこそ、この曲は多くの人に愛された。祖父を想う気持ちがまっすぐに歌となり、そこに飾りや理屈はない。大切な人への思いがそのまま音に乗ったからこそ、聴いた人は自分の記憶や感情と自然に重ね合わせ、涙がこぼれるように心を揺さぶられたのだ。

当時、この曲に“別れた恋人”や“叶わなかった恋”を重ねて歌った人も多かった。カラオケで切ない気持ちを吐き出すように声を震わせたり、深夜のラジオで流れてくる歌にひとり涙したり――聴き手それぞれの「さよなら」の物語が、この歌を通じて共鳴していった

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花*花-1999年撮影 (C)SANKEI

静かに積み重ねた“ロングセールス”

発売からすぐにランキング上位へと駆け上がったこの曲は、その後も息の長いヒットとなった。翌2001年に入ってもチャートに残り続け、50万枚を超えるセールスを記録していた。

2000年当時、ダンスナンバーや派手なラブソングが主流を占める中、華やかさではなく、静けさで勝負した楽曲が大きな支持を得たことは、時代のバランスを映し出す出来事だったかもしれない。

25年経っても色褪せない“別れの歌”

『さよなら 大好きな人』は、時代を超えて歌い継がれている。様々な節目の場面で、ふと口ずさまれることも少なくない。それは、この曲がただの“流行歌”ではなく、“人生の一部”として心に残り続けるからだ。

25年経った今でも、この曲を耳にすると、そのとき隣にいた人や、もう会えない人の姿が不意に蘇る。

別れの痛みと同時に、その人を大切に思った時間の尊さを思い出させてくれる――そんな音楽だからこそ、これほど長く愛されているのだろう。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。