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築40年一戸建てに住む50代主婦「ブロック塀が…」気づかぬうちに『違法』一級建築士が警鐘する“落とし穴”

  • 2025.8.29
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「庭のブロック塀、なんとなくグラついてきた気がします。でも、取り壊すとお金もかかるし、そもそもどこまで直せばいいのか…」

そう不安を口にするのは、築40年の一戸建てに住むBさん(50代・主婦)。最近、ご近所のブロック塀が取り壊されているのを見て、自宅の塀の状態も気になりはじめたといいます。

Bさんのように、「長年何の問題もなかった」ブロック塀が、いま令和の住宅リスクとして静かに注目され始めています。
なぜブロック塀が“危ない”のでしょうか?

「2018年・大阪北部地震」での痛ましい事故

ブロック塀の危険性が社会的に注目されたのは、2018年の大阪北部地震でした。大阪府高槻市の小学校でブロック塀が倒壊し、登校中の小学4年生の女子児童が下敷きになって死亡。この痛ましい事故は、「古い塀が人命を奪う危険性」を強く印象づけました。

調査によると、この塀は建築基準法に違反していたことが判明。控え壁がなく、基礎の施工も不十分で、しかも高さは基準を超えていました。行政による緊急調査が全国で行われ、学校や公共施設を中心に、多数の“違法ブロック塀”が見つかったのです。

しかしこれは、一般住宅においても他人事ではありません。築年数の古い住宅で、かつての基準のまま放置されたブロック塀は、都市部・地方を問わず多く存在しています。

倒壊だけじゃない「越境」や「所有権不明」トラブル

ブロック塀をめぐるリスクは、倒壊だけにとどまりません。近年増えているのが、「越境」や「所有権不明」のトラブルです。

たとえば、相続で空き家を取得したところ、境界上に古いブロック塀があり、どちらの所有か分からないまま老朽化が進行していたケース。また、建て替えやリフォームの際に測量をしたら、「塀が他人の敷地にまたがっていた」と発覚し、撤去費用をめぐって訴訟になる事例もあります。

これらのトラブルは、目に見えにくく、誰もが無関係ではいられない問題です。特に近年は、大雨・地震などの自然災害が増加しており、崩れた塀が近隣に損害を与えた場合、所有者が損害賠償を負うケースもあります。

「うちの塀、大丈夫?」――見た目ではわからない危険のサイン

ブロック塀の危険性は、一見してわからないことが多いのがやっかいな点です。表面がきれいでも、内部に鉄筋が入っていなかったり、基礎が浅かったりすれば、地震の揺れで一気に倒壊する危険性があります。

たとえば、高さが1.2mを超えていて控え壁がない塀は、それだけで建築基準法に違反している可能性があります。また、厚みが10cmに満たない塀や、擁壁の上にさらに積み増しされた塀も、倒壊リスクが高いとされています。とくに高さが2.2mを超える「過積み」状態の塀は、早急な対応が必要です。

さらに、塀のひび割れや傾きが見られる場合も、構造そのものが劣化しているサイン。築年数が古く、当時の基準のまま「既存不適格」として残っている塀では、こうした問題が放置されがちです。

今すぐできるセルフチェックと相談先

ご自宅の塀に不安がある場合は、まず以下のような点をチェックしてみましょう。

  • 塀の高さは2.2m以下か?
  • 3.4m以下ごとに控え壁が設置されているか?(塀の高さが1.2m超える場合)
  • 傾きやひび割れがないか?
  • 地面との接合部(基礎)がしっかりしているか?

また、塀の構造や築年数が不明な場合は、建築時の図面を確認することも有効です。見た目だけでは判断が難しいときは、建築士や自治体の建築指導課に相談しましょう。

自治体によっては、「危険ブロック塀の撤去・補修」に対する助成金制度を設けている場合もあります。自治体のホームページなどで確認してみてください。

何気ない塀が、大きなリスクになることも

立派な家でも、安全とは限りません。

ひび割れた塀、控え壁のない高い塀、越境してしまっている塀――。
「うちには関係ない」と思っていても、ある日突然、事故や訴訟の火種になることがあります。

あなたの家の塀は、大丈夫ですか?
この機会に、家の周りをぐるっと見直してみましょう。小さなチェックが、大きな安心につながります。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。