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ChatGPTが恋愛において果たす役割。AIは人間関係の“補助ツール”になりうるのか

  • 2025.8.13
Bored woman using laptop in messy bedroom

ロサンゼルス在住のソーシャルメディア・ストラテジストで28歳のミカエラ・ワイルドは、辛い別れの後、スマートフォンを手にしてソファに座っていた。友人に相談するのも気が引けたし、話したいセラピストもいなかったので、彼女はChatGPTを開いて3年間の交際を振り返り、最後に「なぜうまくいかなかったのか?」という問いを投げかけた。彼女だけではない。ChatGPT、Replika、Gemini──、利用者数が急速に増加するAIチャットボットは、感情に訴える文章を作成したり、複雑な会話を事前に練習したり、不安な瞬間にアドバイスを提供したりと、人々の恋愛においてますます重要な役割を果たすようになってきている。そこで、ある疑問が浮かび上がる。私たちの感情がAIによって処理されることで、愛や親密さ、感情の成長に影響を及ぼすのだろうか。

オレンジカウンティを拠点とするデート&恋愛コーチのキンバリー・レイは、人々が求める恋愛のアドバイスに顕著な変化が見られると話す。「多くの人はAIをマッチングアプリのプロフィール作成や、うまくいかないと感じるメッセージのやり取りで活用しているようです」。しかし、レイは、AIが便利なツールになりうると考える一方で、真の親密さを阻害することもあると警告。「AIは部分的な支えにはなるかもしれませんが、同時にあなたの“本当の声”や誠実さを奪ってしまうかもしれません。人間関係は完璧に練られた会話ではなく、その場における瞬間的な“生”のやり取りの上で築かれます。言葉を磨けば磨くほど、感情的な距離が広がるリスクが高まるのです」

AI搭載のデートアシスタント「Wingmate(ウイングメイト)」が2024年に行った調査によると、若年成人の41%がAIを使って別れを切り出した経験があり、AIの利用率は男性よりも女性のほうがわずかに高いことが判明。また、若年層の57%が恋愛・デートのアドバイスについて、友人よりもAIを信頼すると答えている。メッセージの作成、曖昧なやり取りの解読、あるいは別れる際のシミュレーションなど、AIは急速に、多くの人にとって頼りになる“相談相手”になりつつあることがわかる。

A man looks smitten as he giggles whilst looking at his smart phone whilst lying in bed

オレゴン州で働く33歳のニコール・マットソンは、6月に恋人との別れを経験した際、親しい友人からのアドバイスは偏っていると考え、あえて避けた上で代わりにChatGPTを利用したそう。ChatGPTは状況を捉え直し、それまで考えてもみなかった行動パターン、愛着のスタイル、力関係を認識するのに役立ったという。「意味もなく言い争ったり、何かを誤解していると感じたら、その情報をChatGPTに入力して、『説明して』とお願いしていました。ChatGPTのおかげで、自分自身をより深く理解できるようになり、効果的なコミュニケーションをとれるようになったと思います」とマットソン。

もちろんセラピストや訓練を受けた専門家たちは、アルゴリズムにはない方法であなたの考えに疑問を投げかけることができるはずだが、AIがさらに利用しやすくなるにつれて、感情的なやり取りをAIにアウトソーシングしたいという誘惑は高まるだろう。一方で、真の癒しと人間関係の構築には、依然として人間同士の複雑な対話が不可欠だ。「通常、対人関係における問題は両者のものです。あなた自身も全体像を把握できていない可能性がありますし、アルゴリズムがあなたの側面だけを捉え、相手の視点を捉えていない場合にそれは最善のサービスとは言えません」と専門家は指摘。

ニュージャージー州在住の作家・ケイティ・モランは、ある日、人間関係に不安を感じてChatGPTを開いた。すでに友人たちに相談する気はなく、カウンセリングも次の予約まで時間があったため、まずはAIに「どうしたらもっといいパートナーになれるのか」と尋ねた。そのまま1時間ほどチャットを続けたところ「彼の沈黙に対して不安を抱く必要はない、そして彼も同等の努力をするべき。彼は最低限のことしかしないのに、あなたからは最大の優しさを期待している」とChatGPTは明言したという。「ChatGPTが忍耐強いおかげで、友人よりも話しやすく感じました」とモランは述べ、この経験によってこれまで目を背けてきた現実と向き合ったから、最終的には別れを決断したそうだ。

AIが信頼できる友人や、経験豊富なセラピストにとって代わることは決してないだろう。しかし多くの人にとって、思考を整理したり、込み入った会話のリハーサルをしたり、感情が押しつぶされそうなときに孤独感を和らげる“補助ツール”になりつつあることがわかる。AIの危険性を意識した上で活用できれば、人々が立ち止まって内省し、より明確な意図を持って人間関係にアプローチするきっかけになるかもしれない。同時に専門家は、「AIは決して人間の代わりにはならないが、相互の組み合わせで最も効果を発揮すると」考えているそうだ。モランは「AIがカウンセリングやコミュニティの代わりになるとは思いません。むしろ、“人工の親友”のような新たな存在になるのではないでしょうか」と述べている。

Text: Brianna Holt Adaptation: Nanami Kobayashi

From: VOGUE.COM

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