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20年前、日本中が震えた“魂のロックンロール” 聴く者すべてを奮い立たせる“永遠の代表曲”

  • 2025.8.25

「あなたは、心の底から誰かのために叫んだことがありますか?」

2000年代半ば、日本の音楽シーンは洗練と軽快さが前面に出る時代だった。チャートには耳触りの良いメロディや都会的なサウンドが並んだ。

そんな空気の中、爆発するような演奏と魂を削るような歌声、そしてまっすぐすぎるメッセージが突き刺さる骨太なロックナンバーが登場する。

サンボマスター『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ』(作詞・作曲:山口隆)――2005年8月3日発売。

彼らにとって5枚目のシングルとなった本作は、初めてのTOP10入りを果たし、インディーズ時代から積み重ねてきた熱が全国に解き放たれた瞬間だった。

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インタビューに答える、サンボマスターの山口隆-2008年撮影 (C)SANKEI

熱の塊をぶつける、3人のロックンロール

サンボマスターは、山口隆、近藤洋一、木内泰史による3ピースロックバンド。流行の中心にはポップスやR&B、さらには多様なバンドサウンドもあったが、その中でもサンボマスターのように汗と涙を全身でぶつける熱量は際立っていた

ライブハウス育ちの泥臭い音、観客を射抜くような視線、そして会場の空気を一変させる爆音。そうした魅力をそのまま封じ込めたのが、この曲だった。テレビドラマ『電車男』(フジテレビ系)の主題歌に抜擢され、全国の茶の間に彼らの熱が響き渡った。

魅力の核心は“直球すぎる感情”

イントロのコードが鳴った瞬間から、全身を貫くような緊張感。山口隆の声は歌と叫びの間を行き来し、聴く者の心の壁を一瞬で壊す。歌詞は驚くほどシンプルだが、だからこそ装飾のない真実として響く。

全員で一丸となって叩きつける音の塊は、ひとつの演説のような説得力を持ち、気づけば拳を握っている自分に気づく。理屈ではなく感情で伝わる曲――それがサンボマスターの本領だ。

ドラマと楽曲の相乗効果

『電車男』は、ネット掲示板の実話をもとにした異色のラブストーリー。内気な主人公と憧れの女性の距離が縮まっていく様子は、視聴者の心を強くつかんだ。

『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ』は、主人公の心情そのものであり、見ている人の“誰かを想う気持ち”を呼び覚ました。ドラマの盛り上がりとともに楽曲の注目度も急上昇し、ランキングは自己最高位を更新。ついに初のTOP10入りを記録した。

涙が出るロックナンバー

この曲は、今もライブのハイライトとしてたびたび演奏される。イントロの一音が鳴った瞬間、客席から大きな歓声が上がり、無数の拳が一斉に掲げられる。その熱気の中で鳴らされるのは、ただ激しいだけのロックではない。

轟音の中にあるのは、人を思う優しさや、信じる気持ちの強さ。だからこそ、耳に届くたびに胸の奥が熱くなり、気づけば視界が滲んでいる。

特に後半、「愛と平和!」と叫び、「悲しみで花が咲くものか!」と叩きつける瞬間は、会場全体が一気に沸き立つ。そこから再び加速してたどり着くラスト、「世界じゃそれを愛と呼ぶんだぜ」と力強く言い切り、「LOVE & PEACE!」を繰り返す――そのとき、ステージと客席の境界は完全に消える。サンボマスターの3人と観客の声が渦のように混ざり合い、会場全体がひとつの巨大な心臓のように脈打つのだ。

それは単なる歌詞でも、決まりきったパフォーマンスでもない。魂を削り、体の奥から絞り出すように放たれる叫び。一度でもその場で体験した人間には、一生忘れられない光景になる。

20年経っても色あせない理由

ライブでは、初めて聴く若い世代も昔からのファンも肩を並べ、拳を突き上げながら同じ言葉を叫ぶ。その光景は、この曲が世代も時代も超えて生き続けている証だ。

それは、ただのヒット曲ではなく、人と人を結びつけるための“合図”として存在しているからだ。悲しみじゃ、花なんて咲かない――だからこそ、この曲は前を向く力をくれる。

この曲は20年経った今も、鳴らされるたびに胸の奥を熱くする――世界はそれを愛と呼ぶんだぜ


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。