1. トップ
  2. 20年前、日本中が耳を澄ませた“翼を授けるラブソング” 2人の声が織りなした“奇跡のハーモニー”

20年前、日本中が耳を澄ませた“翼を授けるラブソング” 2人の声が織りなした“奇跡のハーモニー”

  • 2025.8.24

「2005年の夏、あなたはどこで何をしていましたか?」

真夏のアスファルトに揺れる陽炎、途切れることのない蝉の声。街角では最新型の携帯電話が並び、CDショップの試聴機からは様々な新曲が流れていた。

その中に、耳にした瞬間に立ち止まりたくなるような美しい声があった。

CHEMISTRY『Wings of Words』(作詞:森雪之丞・作曲:葛谷葉子、谷口尚久)――2005年7月27日発売。

彼らにとって15枚目のシングルとなったこの曲は、アニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(TBS系)の第4期オープニングを飾り、二人のハーモニーが織りなす柔らかな輝きを、ひときわ美しく放っていた。

翼のように舞い上がる二人の声

CHEMISTRYの最大の魅力は、個々の歌声の力強さだけでなく、それらが重なった瞬間に生まれる響きの豊かさだ。『Wings of Words』では、その魅力が極限まで引き出されている。

川のせせらぎのように滑らかに流れる旋律に、二人の声が寄り添い、離れ、再び重なっていく。その過程はまるで翼を広げ、空を滑空するかのようで、聴く者の心をそっと解き放つ。

イントロから響くストリングスが柔らかい光を差し込み、バンドサウンドがそれを包み込む。そこに重なる二人の声は、決して競い合うことなく、お互いの余白を尊重しながら溶け合う。その調和こそが、この曲の本質的な魅力だった。

言葉と旋律が抱きしめ合う瞬間

作曲を手がけた葛谷葉子と谷口尚久は、極端な起伏を避けながらも聴き手の心を引き上げるメロディを設計。そこに森雪之丞の言葉が乗ると、物語のような立体感が生まれる。

「空は飛べないけど 翼ならあげよう」という象徴的なフレーズは、直接的な愛の告白ではなく、そっと背中を押す温かいエールとなって響く。

二人の歌声はその言葉に寄り添い、まるでメロディと詩が一体化して羽ばたいていくようだ。

undefined
2002年、サッカーW杯 FIFA主催公式コンサートで歌うCHEMISTRY (C)SANKEI

成熟が生んだ“声という楽器”

2001年のデビュー以来、CHEMISTRYはR&Bを基盤に都会的で洗練された楽曲を発表し続けてきた。

『Wings of Words』がリリースされた2005年は、彼らがアーティストとして成熟期に差し掛かっていた時期。単に歌唱力を誇示するのではなく、曲の空気感やメッセージを最大限に生かすための引き算を知った歌い方が、この作品にも反映されている。

特にこの曲では、ハーモニーが単なるコーラスではなく、楽曲全体を構成する重要な“楽器”として機能している。ひとつの声だけでは描ききれない感情のニュアンスを、二人の声が補い合い、聴き手の中で完成するような設計になっているのだ。

ハーモニーが導いた静かな高揚

シングルは発売直後から多くのリスナーの耳を惹きつけ、ランキング上位にランクイン。派手なプロモーションに頼らずとも、二人のハーモニーと緻密なアレンジが生む完成度の高さが支持を集めた、当時のJ-POPシーンでも貴重な存在だった。

バラードの持つ静けさと、ミディアムナンバーの推進力を兼ね備えたこの曲は、聴くたびに新たな発見があり、長く愛され続ける要素を持っていた。

時を越えて羽ばたき続ける声

音楽の聴き方はCDからサブスクへと変わり、街の景色も様変わりした。それでも『Wings of Words』を耳にすると、2005年のあの夏の空気が鮮やかによみがえる。

二人の声が溶け合った瞬間に生まれるあの温度感は、時を経ても揺らぐことがない。

空は飛べなくても、翼はある――そのメッセージは、時代や環境が変わっても、誰かを信じ、支えたいと願う気持ちにそっと寄り添ってくれる。だからこそ、この曲は単なるヒット曲ではなく、聴く人それぞれの心に羽ばたき続ける“個人的な名曲”として残っている。

余韻を運ぶ翼

『Wings of Words』は、メロディや歌詞の美しさだけでなく、そのすべてを包み込むハーモニーが最大の魅力だ。二人の声が出会い、交わり、また離れる。その一瞬一瞬が宝石のように輝き、聴き終えた後にも温かな余韻を残す。

静かに背中を押す歌――その羽音は、これからも聴く人の胸の奥で優しく響き続けるだろう。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。