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20年前、日本中が心を奪われた“夏のドラマティックソング” 時代を彩った歌姫の“転換点となった一曲”

  • 2025.8.24

「真夏の太陽が、こんなにも音楽を輝かせることがあるだろうか」

2005年の夏、日本中の街角や海辺でひときわ存在感を放っていた一曲があった。波の音、強い陽射し、遠くに見える入道雲——その全てが、この曲のイントロとともに鮮やかに蘇る。

浜崎あゆみ『fairyland』(作詞:ayumi hamasaki・作曲:tasuku)——2005年8月3日発売。

彼女の通算36枚目のシングルとなった本作は、同年の「NHK紅白歌合戦」において7度目の舞台を飾る曲となった。

南国ロケが描いた“視覚で感じる音楽”

『fairyland』を語る上で欠かせないのが、その圧倒的なスケールのミュージックビデオだ。

ハワイで撮影された映像は、青く広がる海と空、燃えるような夕焼け、そして壮大な炎のシーンが連続する。制作費は当時としては破格の2億円以上ともいわれ、映像作品としての完成度も話題になった。

曲の始まりを彩るのは、エフェクトのかかった歌声と、ハープのようにきらめくシーケンス音。その透明感のある響きが、まるで水面に光が跳ねるように広がっていく。やがて柔らかなシンセサウンドが包み込み、サビにたどり着く頃には、南国のまぶしい夏景色が一気に目の前に広がる。

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2005年、「第22回ベストジーニスト2005」表彰式での浜崎あゆみ (C)SANKEI

浜崎あゆみの“転換期”に現れたサウンド

2000年代前半の浜崎あゆみは、恋愛や孤独をテーマにしたエモーショナルなバラードで強い存在感を示してきた。だが『fairyland』では、そのベクトルを大きく外へと開き、解放感とスケール感を前面に押し出している。

作曲を手がけたのはtasuku。透明感と広がりのあるメロディに、HΛLによる重層的で緻密なアレンジが重なり、シンプルな構造ながら聴くほどに奥行きを感じさせるサウンドに仕上がった。

サビでは、あゆの歌声がまっすぐに突き抜け、夏の光をそのまま抱きしめたような開放感が広がる。そこに潜む“過ぎ去る季節への切なさ”が、聴く者の心をふと締めつけ、20年経った今も鮮明な記憶として残り続けている。

20年経っても色あせない理由

『fairyland』は、ステージで披露されるたびに南国の空気をまとい、夏らしい世界観を鮮やかに描き出してきた。観客が一斉に声を上げるような曲ではない。それでも、その瞬間、会場全体は確かに“あの夏”の物語に包まれていた。

この曲は、ただ夏をモチーフにしたポップソングではない。映像、音、そして情景が緊密に結びつき、一篇の物語として息づいているからこそ、時代を超える力を持ち続けている。

耳にした瞬間、あの日の海風や陽射しの匂いがよみがえり、胸の奥に淡い切なさが差し込む——それは2005年の夏を知る世代だけに限られない。

今のリスナーにとっても、『fairyland』は変わらず夏の魔法として、記憶のどこかを静かに照らし続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。