1. トップ
  2. 20年前、日本中を盛り上げた“やりたい放題ヒップポップ” 世代も時代も超えて愛される“規格外の名曲”

20年前、日本中を盛り上げた“やりたい放題ヒップポップ” 世代も時代も超えて愛される“規格外の名曲”

  • 2025.8.23

「街を歩けば、あのイントロがどこからともなく聞こえてきた」

2005年、初夏の街には開放的な空気が漂っていた。サンダルの足音とともに流れるのは、ポップス、ロック、そしてすでに音楽シーンの主役となっていたヒップホップ。

ストリートの熱気とメインストリームの音楽シーンが混ざり合い、ジャンルの境界がゆるやかに溶けていった頃、KREVA『イッサイガッサイ』(作詞・作曲:KREVA)が放たれた。

メジャー4枚目のシングルとして、2005年6月15日にリリースされたこの曲は、日常と高揚感を同じ温度で描き出し、多くのリスナーを夏の入り口へと誘った。

ヒップホップの枠を飛び越えたポップな衝撃

KREVAはKICK THE CAN CREWでの成功を経て、ソロとしてのキャリアを着実に築き始めていた。この曲では、持ち前の精緻なライミングとリズム感に、開放的でキャッチーなメロディを融合。

クラブでもカーステレオでも、さらに深夜のコンビニ前でも映えるような“生活密着型ヒップホップ”として、多くの人の耳と心を捉えた。

特に耳に残るのは、緻密に組み立てられた固い韻と、驚くほど平易な言葉の共存だ。

リリックは構造的にも攻めていて、韻の精度は圧倒的。それでいて、耳に届くフレーズは誰もが情景を思い浮かべられる身近な言葉ばかり。

まるで難易度の高い技を、何気ない顔で決めてしまうスポーツ選手のように、KREVAは高等テクニックをさらりと聴かせる。その“技術の見せない巧さ”こそが、この曲を特別な存在にしている。

undefined
2008年、インタビュー取材でのKREVA (C)SANKEI

サウンドが生む高揚感

トラックはシンセとビートの粒立ちが鮮明で、真夏の太陽のような明るさと、夕暮れの風のような心地よさが同居している。

ループの心地よさに乗せてKREVAのラップが流れ、最後まで一気に聴かせる構成。ヒップホップ特有のルーズさを保ちながらも、ポップスのような明快な展開が加わり、リスナーを飽きさせない。

時代を超えて愛される理由

2024年にはフジテレビ系『2024FNS歌謡祭 夏』で、Number_iとのコラボレーションとして披露され、大きな話題に。リリースから20年経ってもなお、世代を問わず一緒に口ずさめる“国民的ヒップホップ”として生き続けている証拠だ。

それは、この曲が時代や流行に左右されない普遍的な幸福感を描いているからだろう。日常の中のちょっとした瞬間を切り取る視点は、2005年のリスナーにも、2024年の若者にも変わらず響く。

記憶に積もる、真夏の幸福

『イッサイガッサイ』は、派手さよりも“共有できる喜び”を前面に押し出した楽曲だ。

盛り上がるための曲でありながら、押し付けがましさはなく、聴く人それぞれの思い出や情景と自然に溶け合う。

あの頃の夏の匂い、夕暮れの色、友達の笑い声——それらを一斉に呼び戻してくれるビートとメロディ。

20年経った今も、この曲のサビがふと頭をよぎるたび、あの頃の自分が少しだけ近くに戻ってくるような気がする。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。