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25年前、日本中の心が踊った“軽快な虹色のサウンド” ひと夏の冒険と未来への光を描いた“感動の映画主題歌”

  • 2025.8.23

「2000年の夏、どんな景色を見ていましたか?」

湿気を帯びた風が頬をかすめ、アスファルトが夕日に照らされて鈍く光る。冷房の効いた映画館から出てきた人々の顔には、わずかな興奮と余韻が混ざっていた。

街角のCDショップに並んだ新譜の中で、ひときわ美しい輝きをまとっていたのが、山下達郎『JUVENILEのテーマ〜瞳の中のRAINBOW〜』(作詞・作曲:山下達郎)だった。

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山下達郎-1991年撮影 (C)SANKEI

夏の街角に響いた、達郎の“虹色の旋律”

2000年7月12日に発売されたこの曲は、山下達郎にとって通算34作目のシングル。映画『ジュブナイル』(監督:山崎貴)の主題歌として書き下ろされた。

達郎は、映像の世界観に寄り添いながら、1曲としても独立して成立する完成度を追求した。1970年代から続く彼の都会的で洗練された音作りはそのままに、少年期のまっすぐさや未来への憧れを織り込み、幅広い世代に届くメロディを描き出している。

未来と友情を映した、ひと夏の記憶

『ジュブナイル』は、後に『ALWAYS 三丁目の夕日』や『ゴジラ-1.0』など数々の話題作を手がけ、日本映画界を牽引する存在となる山崎貴の記念すべき映画監督デビュー作である

物語の舞台は2000年の夏。森の奥で不思議な小型ロボットと出会った子どもたちが、その交流をきっかけに時空を超える出来事へ巻き込まれ、やがて地球の未来に関わる大冒険へと踏み出していく――そんなひと夏の物語だ。

最新のVFXを駆使した迫力ある映像に加え、登場人物同士の繊細な感情や絆を丁寧に描き切ったことで、多くの観客に鮮烈な印象を残した。

そして山下達郎の主題歌が、物語の高揚感を静かに包み込み、温かくも切ない余韻をスクリーンの外まで運んでいった

“虹色”のように変化するサウンド

イントロは、オルゴールのように繊細な音色が静かに響き、やがて太いシンセベースと四つ打ちのキックがゆったりと脈を打ち始める。エレクトリックピアノを中心に組み立てられたトラックに、山下達郎の伸びやかなボーカルが穏やかに乗り、全体を静かにリードしていく。サビに入ると、軽快なスネアがリズムに跳ねを加え、楽曲全体に心地よい推進力が生まれる。曲のラストは、達郎ならではの緻密な多重コーラスが柔らかく重なり、聴き手の耳に深い余韻を残す。

AメロからBメロ、そしてサビへの移行は決して急がず、聴く者を自然に包み込む。その穏やかで確かな展開は、夏の夕立のあとに現れる虹を見上げている時間のように、ゆったりとした感動を与えてくれる。

歌声が描く、物語と寄り添うドラマ

山下達郎が紡ぐメロディには、都会的な洗練さに加えて、映画の物語をそのまま包み込むような情緒が息づいている。シンセベースやエレピを軸にしたシンプルな構成ながら、リズムや音色の変化で場面転換のような高揚感を生み出す。

映画を観ていなくても十分に魅力を感じられるが、物語を知ったうえで耳にすると、歌声やフレーズの奥に隠された“未来への光”や“仲間との絆”がより鮮明に浮かび上がってくる。まさに、映像と音楽が互いを高め合った一曲だ。

25年後も消えない、心に架かる虹

『JUVENILEのテーマ〜瞳の中のRAINBOW〜』は、2000年の夏を彩った映画とともに、今もなお多くの人の記憶に残る。そして25年経った今も、そのメロディは色あせない。

虹はいつか消えてしまっても、見た人の心にはその光景が残り続ける。この曲もまた、聴くたびに心の中に現れ、未来へ向かう気持ちをそっと照らしてくれる“永遠の虹”なのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。