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25年前、日本中が震えた“異様に普遍的なラブソング” 平成屈指の歌唱力が刻んだ“静かな衝撃”

  • 2025.8.18

真夏の夕暮れ、湿った空気を切り裂くように響くピアノの音色。その向こうから、まっすぐで力強い声が届く。耳に入った瞬間、景色がふっと静まり返る――そんな体験をしたことがあるだろうか。

2000年7月26日、その感覚を国中に広げたのが小柳ゆき『be alive』(作詞:小柳ゆき・樋口侑/作曲:原一博)だった。

小柳ゆき、初のランキング1位を獲得した瞬間

『be alive』は、彼女にとって5枚目のシングルであり、初めてシングルチャートで1位を掴んだ記念碑的な作品だ。

カネボウ「T'ESTIMO(テスティモ)」のCMソングとしても大量にオンエアされ、その印象的な歌声は、テレビを通して何度もお茶の間に届いた。

最終的には約50万枚のセールスを記録し、第33回日本有線大賞ではグランプリとなる「日本有線大賞」を受賞。数字と賞の両面で、その存在感を証明した。

名作曲家・原一博との化学反応

作曲を手掛けた原一博は、BoA『VALENTI』(2002年)など数々のヒットを生み出した名手であり、小柳の前作『愛情』でもタッグを組んでいる。

原の紡ぐメロディは、豪奢すぎず、かといって簡素でもない。シンプルな中に張り詰めた緊張感を漂わせ、歌い手の感情を最大限に引き出す構造を持っている。

『be alive』でもその特性は遺憾なく発揮され、小柳の声が持つ“圧”を引き立てる舞台を整えていた。

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2000年7月、単独ライブで歌う小柳ゆき (C)SANKEI

歌声が持つ“圧倒的な直進力”

小柳ゆきの歌声は、単なるパワーや音域の広さに留まらない。低音の深みから高音の突き抜けまで、全てが一本の糸で貫かれているかのように、音の芯がぶれない。

そのため、聴き手は彼女の歌を“音楽”としてではなく、“感情そのもの”として受け取ってしまう。

特にサビにかけてのクレッシェンドは圧巻だ。声量だけで押し切るのではなく、呼吸のタイミング、母音の伸ばし方、音の抜き方まで計算された表現が、聴く人の胸を直接震わせる。

これこそが、彼女の歌唱を唯一無二たらしめている理由だ。

バラードの枠を超える存在感

『be alive』は確かにバラードソングだが、その印象は“静かな歌”に収まりきらない。抑制の効いたAメロ、わずかに温度を上げるBメロ、そして一気に解放されるサビ――その構成はまるで短編映画のクライマックスを体験しているようだ。

小柳の声がその物語を進行させ、終盤には聴き手の中で感情の余白がじわじわと満たされていく。

今も響く理由

発売から25年経った今も、『be alive』は当時のままの熱を保っている。

それは、流行のアレンジや一過性のテーマに依存せず、“声”そのものが作品の中心に据えられているからだ。だからこそ、世代や時代を超えて新しいリスナーにも届き続ける。

小柳ゆきの歌声は、ただ耳に残るのではなく、心の奥で鳴り響く。その感覚は、初めて聴いた日からずっと変わらない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。