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35年前、日本中が心を奪われた“終末の叫び” 夜ごとに姿を変えた“伝説のロックアンセム”

  • 2025.8.17

「あのころ街の空気が、妙にざわついていた気がするんだ」

平成2年の春。バブルの熱狂がまだ残る一方で、どこか不穏な風が混ざり始めた1990年。テレビの歌番組では、明るくキャッチーなJ-POPが主流の中、ひときわ異彩を放つ存在があった。

そのバンドの名は、X(現・X JAPAN)

1990年4月21日、彼らはシングル『WEEK END』(作詞・作曲:YOSHIKI)をリリース。メジャー3枚目にあたるこの作品は、メジャーデビューアルバム『BLUE BLOOD』収録曲を大胆にリアレンジしてシングルカットしたものだった。

ヘヴィメタルをポップシーンへ押し上げた存在感

『WEEK END』は、疾走感あふれるイントロと、哀愁を帯びたメロディラインが印象的な楽曲。激しさと叙情性が同居するスタイルは、当時のXを象徴していた。

ランキングでも初週2位を記録し、最終的に約30万枚を売り上げる。当時としては異例の「過激さ」と「メロディアスさ」の両立が、多くのリスナーを惹きつけたのだ。

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ボーカルのTOSHI(1991年11月撮影)(C)SANKEI

魅力の核心は、緩急と情感の共存

この曲の最大の魅力は、スピード感と抒情性のコントラストにある。YOSHIKIが紡いだ旋律は、イントロから一気に突き抜ける高揚感を生み出しつつ、サビでは切なさを漂わせる。

HIDEとPATAのツインギターが織り成す分厚いハーモニー、TAIJIの重厚なベース、TOSHIの伸びやかなハイトーン――すべてが緻密に絡み合い、聴く者を一瞬で“終末”の世界に引き込む

ライブごとに進化する“もう一つの顔”

『WEEK END』は、時を重ねるごとに表情を変え、進化し続けてきた。

アルバムに収められた姿が“原型”だとしても、ステージ上ではその枠を超え、瞬間ごとの熱や空気をまとって生まれ変わる。

静けさの中に緊張感が漂う夜もあれば、嵐のような高揚が会場を包み込む夜もある。

同じ曲であっても、二度と同じ響きにはならない――その儚さと一期一会の力こそが、『WEEK END』を特別な存在にしてきた理由だ。だからこそ、今もなおファンの記憶に深く刻まれ続けている。

バンドの転換期に生まれた1曲

この時期のXは、華やかで攻撃的なルックスと、激しさと叙情を併せ持つ音楽性で強烈な存在感を放ち、メジャーシーンでの立ち位置を確立し始めていた。

『WEEK END』はメジャーデビュー初期の勢いと、のちの世界進出へ向けた音楽的深化の中間点に位置する楽曲ともいえる。

同年には次作『Jealousy』の制作が進行しており、メンバーそれぞれが作曲やアレンジに力を注ぎ、バンドの創作意欲は最高潮に達していた。

今なお鳴り響く“終末の鐘”

リリースから35年経った今も、『WEEK END』はX JAPANのライブ定番曲として、そしてファンにとって特別なアンセムとして生き続けている。激しいだけではなく、聴くたびに胸を締めつけるメロディと情感。

あのイントロが流れた瞬間、35年前の熱と鼓動が、今も胸の奥で静かに息を吹き返す。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。