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20年前、日本中を包み込んだ“余白で魅せる愛の歌” 名手たちと奇跡のバランスを生んだ“唯一無二な2人”

  • 2025.8.11

「20年前のあの日、どんな歌が心に残っていたか覚えてる?」

2005年の初夏、ある一曲がそっと放たれた。

それは、熱狂を煽るでもなく、大きな話題を振りまくでもない。

ただ静かに、でも確かに――聴く者の記憶に深く残る、そんな曲だった。

KinKi Kids(現・DOMOTO)の21枚目のシングル『ビロードの闇』(作詞:Satomi・作曲:林田健司)――2005年6月15日リリース。

声と音、言葉と感情がひとつの呼吸で重なり合い、精緻に磨かれた“結晶”のようなラブソングが生まれた。

ファンの間では今も、名曲として大切に語り継がれている。なぜこの曲は、年月を経ても色あせないのか。

その理由は――言葉、旋律、アレンジ、そして“ふたりの声”のすべてが、奇跡のようなバランスで響き合っていたからだ。

“言葉の繊細さ”と“感情の輪郭”を共存させたSatomiの詞

作詞を担当したのは、名バラード『雪の華』で知られるSatomi。

KinKi Kidsとは前作『Anniversary』(作曲:織田哲郎)に続くタッグだが、『ビロードの闇』では一転して、より深く、複雑な感情の層に踏み込んだ歌詞世界を描いている。

この詞が特別なのは、直接的な愛の言葉を多用せず、あえて“余白”を残すことで感情の真実味を引き出している点にある。

沈黙さえも肯定してくれるような言葉の選び方。そこにあるのは、“愛している”の一言よりもずっと深い、心の奥の声だ。

KinKi Kidsの2人がこの詞を歌うと、その余白に温度が生まれる。どちらかが語りかけ、どちらかが心を代弁しているような、一人では成立しない感情表現がそこに宿る。

林田健司のメロディが描いた“静かなるドラマ”

作曲を手がけたのは、SMAPの『青いイナズマ』『$10』などで知られる林田健司。

エネルギッシュなヒット曲を数多く生み出してきた彼が、この楽曲で選んだのは、“深度”で聴かせる構成だった。聴き進めるうちに胸が締めつけられていく。

「何も起きていないのに、心が動いてしまう」――そんな稀有な設計が施されたメロディだ。

KinKi Kidsのふたりの声は、そんな楽曲にまさに最適解。

堂本光一の凛としたストレートな歌声が“物語の輪郭”を引き、堂本剛の柔らかく深い声が“感情の揺れ”を内側から膨らませていく。

1+1が2にならない、むしろ“化学反応を起こす”ユニットだからこそ、林田の曲がここまで響く。

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※Google Geminiにて作成(イメージ)

CHOKKAKUが描いた“音の緊張感”

アレンジを手がけたのはCHOKKAKU。KinKi Kidsとのタッグでは、『愛されるより 愛したい』『カナシミ ブルー』など、心の機微を音で描き出す名編曲が多いが、この『ビロードの闇』もそのひとつだ。

冒頭から響くアコーディオンの音色が、まず圧倒的に印象を残す。フラメンコを思わせるような、情熱と哀愁の入り混じった響き。この異国的なムードが、曲全体の空気を決定づけている。

しかもアコーディオンはイントロだけでなく、最後まで一貫して楽曲を支える重要な軸として機能している。それに寄り添うように、様々な音が繊細に重なり、言葉の裏にある感情を静かに引き出していく。

過剰に盛り上げることはないが、決して単調でもない。

“静けさの中にある緊張感”を設計する、まさにCHOKKAKUならではの仕事だ。

20年後の今もなお、ファンにとって“特別”な一曲

『ビロードの闇』は、当時のチャートで1位を記録しながらも、派手なプロモーションやタイアップがあったわけではない。

それでも――いや、だからこそ、この曲は長く愛され続けている。

KinKi Kidsというデュオが、単なるアイドルの枠を超え、“ふたりでしか表現できない音楽”を届ける存在であることを証明した一曲

20年経っても色褪せないのは、技巧でも演出でもない。

そこに込められたのが、“本気の感情”だからだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。