1. トップ
  2. おでかけ
  3. 「ゴッホ・インパクト―生成する情熱」が箱根のポーラ美術館で開催中

「ゴッホ・インパクト―生成する情熱」が箱根のポーラ美術館で開催中

  • 2025.7.6

こんにちは。フリーキュレーターのSEIJIです。価値観や表現方法が多様化しているアートの世界を、ニュースや展覧会、作家や作品に注目したコラムにしてお届けする「今どきのアート」。近頃気になったのがこちら。

開館以来初のフィンセント・ファン・ゴッホをテーマとした展覧会「ゴッホ・インパクト―生成する情熱」が箱根のポーラ美術館で開催中!

出典:シティリビングWeb

さあ、日本ではファンの多いゴッホの展覧会です。印象派の展覧会で見かけることが多いゴッホですが、作家であるゴッホをテーマにした視点に興味を抱きました。

その見どころは情熱/受難(=パッション)の画家ゴッホの「パッション」は、鑑賞者にどんなふうに感じられたのか。あなた自身がそのパッションを感じてみてください。

ポーラ美術館のゴッホ・コレクションとおもな展示作品

ポーラ美術館では、アルル時代の風景画《ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋》やサン=レミ時代に身近な自然を捉えた《草むら》、そしてオーヴェール時代の静物画《アザミの花》の3点の油彩画を収蔵。これらの作品とともに今回展示されているおもな作品に触れてみます。

オランダで牧師の父のもとに生まれたゴッホは、伝道師という聖職に就くという夢を諦めたのち、画家の道を志します。暗い色調で占められたこの時代の作品において際立っているのが、「労働」の主題です。敬虔の念を込めて農民たちの姿を描き出した画家であるミレーのように、労働に従事しながら日々の生活を営む農民たちを取り上げたゴッホは、厳しい現実を前にした彼らに対する共感をありのままに表現したのです。

出典:シティリビングWeb

フィンセント・ファン・ゴッホ《座る農婦》1884-1885年、諸橋近代美術館

パリで画商として活躍していた弟であるテオのもとにゴッホがやってきたのは、1886年のことです。この年には最後の印象派展となった第8回展が開催されており、点描技法を駆使したスーラやシニャックの作品が話題を呼んでいました。芸術の都で印象派や新印象派といった新しい絵画の潮流に身を投じたゴッホは、最新の技法による実験に明け暮れ、色彩にあふれた作品の数々を制作します。画家にひときわ影響を与えた日本の浮世絵に慣れ親しんだのも、この都市でした。

出典:シティリビングWeb

ジョルジュ・スーラ《グランカンの干潮》1885年、ポーラ美術館

1888年、陽光と色彩にあふれる南仏のアルルに到着したゴッホは、自らがユートピアとみなしたこの土地で、精力的に絵画制作に励みます。この地で制作された《ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋》では、画面の大半を占める空と運河の青に対して橋と土手には部分的に黄色が、土手に生い茂る草や橋上の低木林の緑のなかにはアクセントとして赤が置かれています。ゴッホは、自らの得意とした補色の効果を確かめようとしていたのです。「耳切り事件」ののちにゴーガンとの共同生活が破綻、ゴッホは失意のなかでアルルを去ったのです。

出典:シティリビングWeb

フィンセント・ファン・ゴッホ《ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋》1888年、ポーラ美術館

たび重なる精神の不調から、ゴッホは南仏のサン=レミにあるサン=ポール・ド・モーゾール療養院に入院しました。何週間ものあいだこの敷地のなかに留まらなければならなかったゴッホは、いくども発作を起こしながらも、病状が落ち着いた際には療養院の庭での戸外制作に取り組んでいます。さまざまな諧調の緑を用いて描かれた《草むら》はこの庭で描かれた作品であり、範囲を限定して庭の一角を取り上げることで、色彩の効果や草むらそのものの存在感が高められています。

出典:シティリビングWeb

フィンセント・ファン・ゴッホ《草むら》1889年、ポーラ美術館

日本における西洋美術の受容において決定的な役割を果たしたのが、1910年(明治43)に創刊された文芸雑誌『白樺』です。ルネサンスからポスト印象派まで、さまざまな時代や地域の芸術を紹介したこの雑誌に魅了された画家のひとりが、岸田劉生でした。色彩の豊かさや筆触の力強さがみなぎる《外套着たる自画像》は、ゴッホの影響を如実に示した作品であり、外光派の影響から脱却した劉生が迎えた新たな時代が高らかに宣言されています。

出典:シティリビングWeb

岸田劉生《外套着たる自画像》1912年(明治45)、京都国立近代美術館

また、オランダを拠点とする映像作家であるインドネシア出身のフィオナ・タンの映像作品を紹介。今回鑑賞できる「アセント」は各個映像インスタレーションおよび写真インスタレーションからなる2部構成の映像作品であり、約4,000枚に及ぶ写真を軸として江戸時代から現代にいたるまでの富士山にまつわるイメージで構成されています。

《アセント》の上映はB2F 展示室3で開催(上映時間:77分)。機材メンテナンスなどのやむを得ない事情により上映時間が変更になることがあります。

出典:シティリビングWeb

フィオナ・タン《アセント》2016年、ベルナール・ビュフェ美術館

美術館からのメッセージ

「わずか37年の生涯のなかで、数多くの絵画を制作したゴッホの名声を築き上げているのは、うねるような筆触とあざやかな色彩による独自の様式、そして何よりもその劇的な生涯に対する評価であると言えるでしょう。

今日にいたるまで変わることのないゴッホからの影響を糧としながら、芸術家たちはそれぞれの時代にふさわしい新たな情熱を、どのように生成してきたのでしょうか。本展ではこのような歴史を振り返るとともに、現代を生きるわたしたちにとって「ゴッホ」がいかなる価値を持ち得るのかを検証します」

出典:シティリビングWeb

美術館外観

2025年11月30日(日)まで。会期中は無休。展覧会の詳細は下記のURLからご確認ください。

ポーラ美術館

https://www.polamuseum.or.jp/sp/vangogh2025/

プロフィール/SEIJI(小太刀正史)

フリーキュレーター。MeDEL個人事務所主催。学芸員の目線から美術館の情報を発信する活動を始める。自身もオブジェ作家として活動歴あり。

OBJECT東京展入選 From A The art日本オブジェ部門佳作 日本文化デザイン会議

ETDA展参加など。

元記事で読む
の記事をもっとみる