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「美化するな」「放送していいの?」放送前から“波紋広がる”も…「NHKの実力はさすが」“リアリティを追求した”異作ドラマ

  • 2025.7.20

ドラマの中には、放送前から物議を醸し、世間の注目を集めた作品があります。それは、視聴者の好奇心を刺激し、ただのドラマでは終わらない社会現象の始まりを予感させます。今回は、そんな“放送前から話題”になったドラマ5選をセレクトしました。

本記事では第1弾として、2023年放送のドラマ『やさしい猫』(NHK総合)をご紹介します。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

“放送前から話題”になったドラマ『やさしい猫』

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(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):ドラマ『やさしい猫』(NHK総合)
  • 放送期間:2023年6月24日~7月29日

あらすじ

中島京子さんの同名小説を原作に、NHK総合で実写ドラマ化された作品。

シングルマザーの保育士・ミユキ(優香)は、ボランティアで出会ったスリランカ人男性・クマラ(オミラ・シャクティ)と恋に落ち、娘のマヤ(伊東蒼)と3人で幸せな家庭を築き始めます。

しかし、婚姻届を提出した直後、クマラはオーバーステイを理由に入管施設に収容され、母国への強制送還を命じられてしまいます。理不尽な対応に打ちひしがれる中、2人は偽装結婚まで疑われ、絶望の淵へ。

そんな彼らに救いの手を差し伸べたのは、人権派弁護士の恵耕一郎(滝藤賢一)でした。ただ家族3人で一緒に暮らしたい、そのささやかな願いを胸に、ミユキたちは国を相手取った過酷な戦いに挑んでいきます―。

『やさしい猫』が放送前に話題になった理由※ネタバレあり

『やさしい猫』は、不法滞在と入管問題をテーマとした作品。思いもよらない事情から不法滞在者になってしまった夫を救うため、奮闘する家族の様子が描かれています。その斬新な視点が注目を集め、SNSでは放送前から「ルールを守ってこの国に生きる多くの外国人に失礼」「このまま放送していいの?」「犯罪を美化してる」などの波紋を呼びました。

しかし、その一方で「いいドラマだった!!観てよかった」「入管の見方が変わった。実際に事件もおきているもんね」「NHKの実力はさすが」など、知らなかった入管問題を知れたことや家族の困難を乗り越えようとする絆の強さなどを高く評価する方も見られました。

本作が社会に問いかける事とは

不法滞在を美化しているかのような内容であるとして、放送前から物議を醸していた本作。しかし、原作者の中島京子さんは、小説執筆にあたり弁護士や元入管職員などへの綿密な取材を重ね、リアリティを追求したことを女性の生き方や社会問題などを幅広いテーマを扱うWebサイト婦人公論でのインタビューにて明かしました。

入管問題に取り組んでいる弁護士の方から取材した実話をもとにしました。警察が交通違反の検挙数を上げるためにやる「ネズミ捕り」のようなものだとも言われています。出典:「入管」と家族を考える物語『やさしい猫』がドラマ化。中島京子×小林美穂子「入管施設の被収容者への暴力はなぜなくならないのか」(婦人公論.com)2023年07月01配信

本作は、意図せず不法滞在となった個人が直面する過酷な現実や、制度そのものが持つ矛盾を描き出しています。中島さんは、不法滞在という行為そのものを肯定したいわけではなく、むしろその背景にある、多くの人が知らない制度の非情な現実が確かに存在することを、物語を通じて社会に問いかけているのかもしれません。

まだドラマ『やさしい猫』を観たことがない方、また本記事を読んで興味を持っていただけた方は、“社会に衝撃を与えた感動のヒューマンドラマ”をぜひ目撃してみてください!


ライター:天木拓海
映画・アニメ・ドラマなど、エンタメ作品を観ることを趣味としているライター。エンタメ関連のテーマを中心に、作品考察記事/コラム記事などを手掛ける。

※記事は執筆時点の情報です