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不朽の名作住宅を知るなら、窓を見よ。近代建築の巨匠、ライトとミースが拡張した美しい窓

  • 2025.6.27
フランク・ロイド・ライト「ファンズワース邸」外観

話を聞いた人:倉方俊輔(建築史家)

モダニズム建築によって、窓は従来の概念や形から大きく飛躍した。ここでは、2人の巨匠による「窓こそが建築を語る」名作を検証しよう。

「フランク・ロイド・ライトの〈ロビー邸〉は、プレイリースタイルと呼ばれるアメリカ的な様式の住宅作品です。どっしりと構えながらも水平に広がっていく形は、自然との融合を目指したもの。フラットな軒は深く、その下には、採光や通風の機能を担う窓が静かに連なっています」

フランク・ロイド・ライト「ロビー邸」外観
竣工:1909年。アメリカの建築家フランク・ロイド・ライトがシカゴに建てた初期代表作。水平に延びる造形が特徴の「プレイリースタイル」で、西欧の模倣ではない新たな建築様式を打ち立てた。photo/Artur Images/AFLO
フランク・ロイド・ライト「ロビー邸」内観
色も造りも精巧な窓は、当時のアメリカがステンドグラス生産の黄金期だったことの証し。窓が建築家の思想を表し、社会背景も伝える。photo/Artur Images/AFLO

特徴的なのは、その窓の多くにステンドグラスが採用されていることだ。図柄は、植物を抽象化したような意匠や幾何学模様。明るい光とともに、団欒(だんらん)の空間にふさわしい優美な雰囲気を生み出している。

「ライトの窓は、生活の美しさを象徴する窓。それは、ライトが好んだ有機的建築の思想にも通じます。必要な機能を持ちつつ、建物全体で人の心身を満たしていく。そういう建築的美学が窓に表れているのです」

一方、透明な箱のような〈ファンズワース邸〉を造ったのは、ミース・ファン・デル・ローエ。

「四方を囲むガラスは、その一部が開閉する。コンセプチュアルアートにも見える箱に、窓の機能を持たせたことで、建築として成立させているんですね。ガラスが窓であることが、箱を建築たらしめる。暗いから開けるというような従来の“窓”を否定したミースは、その細部を徹底的に美しく納めることで、ガラスの神殿のような毅然とした存在を出現させた。建築家が建築に求めた美の本質を、窓が如実に物語っています」

フランク・ロイド・ライト「ファンズワース邸」外観
竣工:1951年。ドイツ出身の建築家ミース・ファン・デル・ローエによる、シカゴ郊外の週末住宅。鉄とガラスで構成された均質で自由な内部空間を持つ。壁であり窓でもある透明なガラスが放つのは、圧倒的な物質感。サッシなどの細部を極限まで細くし、外から見えないようにすることで、神殿のような存在感を生み出した。photo/VIEW Pictures/AFLO

profile

倉方俊輔

くらかた・しゅんすけ/1971年東京都生まれ。大阪公立大学教授。『東京建築祭』の実行委員長をはじめ、近現代の建築史の研究を軸に建築の価値を社会に広める活動を行っている。著書に『東京モダン建築さんぽ』ほか多数。

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