1. トップ
  2. 30年前、日本中が夢中になった“謎解きの沼” ミステリードラマの金字塔となった新たな血筋

30年前、日本中が夢中になった“謎解きの沼” ミステリードラマの金字塔となった新たな血筋

  • 2025.7.29

「1995年の夏、金曜夜のテレビは、ひとつの謎を解く時間だった」

震災、事件、動揺。世の中が不安に包まれていた1995年――そんな時代に、“頭を使って心を震わせる”ドラマが登場した。それが『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)

言うまでもなく、本作の原点は週刊少年マガジン連載の同名漫画。原作:天樹征丸・画:さとうふみやによるその世界観は、知的好奇心とホラーテイストを併せ持つ“本格ミステリ”として、当時の読者から絶大な支持を受けていた。

それをテレビドラマというフォーマットで再構築したのが1995年の堂本剛版であり、以降に続く“金田一ドラマシリーズ”の、まさに始祖だった。

undefined
(C)SANKEI

堂本剛が演じた“初代・金田一一”の衝撃

初めて映像化されたのは、1995年4月8日に放送されたスペシャルドラマ。この単発が反響を呼び、同年7月15日から9月16日まで連続ドラマとして1stシリーズがスタート。

さらに、同年12月30日には再びスペシャル版が放送され、翌1996年には2ndシリーズも制作された。

主人公・金田一一(きんだいち はじめ)を演じたのは、当時16歳の堂本剛(KinKi Kids、現・DOMOTO)。

名探偵・金田一耕助の孫という設定で、普段は冴えない高校生ながら、ひとたび事件が起きれば天才的なひらめきを発揮する“探偵役”を、彼は等身大の演技と圧倒的な存在感で演じ切った。「じっちゃんの名にかけて」という決めゼリフは、一気に世の中に浸透していった。

ヒロインであり、幼なじみの七瀬美雪役にはともさかりえ。警視庁の剣持勇警部を、古尾谷雅人が重厚に演じ、作品にリアリティと安心感を与えた。

ドラマの熱量を決定づけた“堤幸彦の世界観”

このシリーズを語るうえで外せないのが、演出家・堤幸彦の存在。

後に『TRICK』『SPEC』『ケイゾク』などで独自の演出スタイルを確立する彼にとって、この金田一シリーズは出世作でもあった。

暗がりの中に浮かぶ犯人の影、緊迫感を煽る不穏な音楽、あえて“間”を取る演出、そして突如訪れる衝撃の展開。

映像でミステリを成立させるには何が必要かを、堤は一から設計してみせた。

それは単なる“再現”ではなく、テレビドラマとしての完成度を一段上に引き上げる試みだった。

謎を追いかけた“金曜の夜”が、確かに存在した

「オペラ座館殺人事件」や「タロット山荘殺人事件」など、原作でも屈指の人気エピソードを丁寧に実写化。“誰が犯人なのか”ではなく、“どうやって犯行が行われたのか”に焦点を当てる本格派の構成は、当時の地上波ドラマとしては異例だった。

それでも、視聴者は確実に惹き込まれた。

「明日、友達に話したくなる謎」という意味で、このドラマはまさに“話題を生むテレビ”の真骨頂だった。

“推理”という知的エンタメが、家族の団らんに入り込んできた瞬間だった。

そして、後輩たちに引き継がれていった“金田一の系譜”

堂本剛の金田一が残したインパクトは、その後のシリーズにも大きな影響を与えた。

2001年には松本潤(嵐)が2代目として登場し、2005年には亀梨和也(KAT-TUN)。そして2013年には山田涼介(Hey! Say! JUMP)、2022年には道枝駿佑(なにわ男子)へとバトンが渡された。

キャストや時代が変わっても、“謎を解く面白さ”と“映像で見せるスリル”は、常に初代からの正統な継承であり続けている。

堂本剛の金田一は、“始まりの記憶”として、今なお鮮明だ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。