1. トップ
  2. レシピ
  3. 魚介類でもレバーでもない、尿酸値を上げる真犯人は…医師「プリン体の約80%は食事由来ではない」

魚介類でもレバーでもない、尿酸値を上げる真犯人は…医師「プリン体の約80%は食事由来ではない」

  • 2025.6.25

痛風や尿路結石など、さまざまな病気を引き起こす尿酸値の高さ。医師の江部康二さんは「尿酸はプリン体が分解される際にできる老廃物。糖尿病の血糖値同様に、注意が必要だが、実はプリン体が食事由来で吸収される割合は全体の2割しかない」という――。

※本稿は江部康二『75歳・超人的健康のヒミツ』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

トイレの壁にもたれかかるビジネスマン
※写真はイメージです
摂取エネルギーが不足すると、尿酸値が上がってしまう?

糖質制限食と尿酸値について、ときどき質問があります。

尿酸値に関しては、糖質制限食実践で、低下する人、不変の人、上昇する人と、個人差が大きいものです。

もともと尿酸値が高値だったのが、糖質制限食で基準値になる人がいますが、これは問題ありません。肥満がある人が糖質制限食で減量に成功すれば、尿酸値が基準値になることは考えられます。

反対に、もともと尿酸値は正常だったのに、糖質制限食実践後に高値となる人が、ときどきおられます。

尿酸高値の一番多い原因は、糖質を制限したことではなく、結果として低カロリーになりすぎた場合です。糖質制限食開始後、急に尿酸値が上昇した時は、栄養指導で確認したところ、ほとんどの人において、摂取エネルギー不足でした。

通常、糖質制限食開始後に、いったん尿酸値が上昇した人も、摂取エネルギー不足を解消すれば、速やかに元の値に戻ることが多いので、経過を見てよいと思います。

トイレのときだけじゃない、尿酸の4分の1は消化液や汗から

尿酸は、尿から排泄されるだけでなく、消化液や汗からも排泄されます。

腎臓からの排泄は、約4分の3を占め、一番多いですが、消化液や汗からの排泄機能も、血清尿酸値の個人差に、ある程度関係しているのでしょう。

体内で尿酸を作りすぎるか、尿からの排泄が悪いため、高尿酸血症になると考えられてきましたが、これらに、腸からの排泄障害や皮膚の汗からの排泄障害も加わることとなりました。

あくまでも私見ですが、この腸や皮膚からの尿酸排泄は、生活習慣やストレスの影響を一番受けやすいような気がします。

高尿酸血症は狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化の危険因子

過去に痛風発作を起こしたことがない人の場合は、尿酸8〜9mg/dlぐらいでも、食事療法と生活習慣の改善で経過を見てよいと思います。

・すでに痛風発作を起こしたことがある場合
・尿酸値8.0mg/dl以上で、すでに腎障害・尿路結石・高血圧などの合併症のある場合
・無症状であっても、尿酸値が9.0mg/dl以上の場合

は、薬物療法の適応になります。

高尿酸血症は、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化の危険因子の1つですので、注意が必要です。

男女ともに、尿酸値が7.0mg/dlまでは基準値内です。これを超えると異常で、高尿酸血症と呼ばれます。

実は食事由来のプリン体は総量の約20%しかない

過去に尿路結石のあった人や、家系的に腎臓結石持ちの方々は、尿酸が高値となった時は、梅干しを食べるとか、わかめ・ほうれん草・大根・キャベツ・なす・しいたけなどを摂取して、尿をアルカリ性に保って、尿酸が結晶化しにくいようにして、尿酸値が基準値に戻るのを待つのが安全だと思います。尿路結石の予防になります。

ただ、低カロリーすぎると、どんな内容の食事でも、尿酸値が上昇するので、注意が必要です。

たとえば、断食(絶食)をすると、尿酸値は急激に上昇します。断食前は6mg/dlであった人が、断食中は9〜10mg/dlに急上昇したりします。

さて、糖質制限食を実践すれば、相対的に高タンパク・高脂質食となります。

尿酸値は、従来、肉の摂りすぎや、ビールの飲みすぎで高値となるということが常識だったのですが、食事由来のプリン体は総量の約20%にすぎず、体内で生合成されるプリン体約80%に比べ、かなり少ないということが判明しました。

動物性タンパク質を含む食品群、牛肉、鶏肉、サーモン、チーズ、牛乳、卵、エビ
※写真はイメージです

たとえば、私、江部康二は、2002年以来、23年間、「おかずは食べ放題だが、主食は3食ともカット」というスーパー糖質制限食実践で、1日130〜150gのタンパク質を摂取していて、かなりの高タンパク食です。

しかしながら、尿酸値は、一貫して2.4〜3.5mg/dl(基準値は3.4〜7.0)程度と低いほうです。

尿酸は、体内の酸化ストレスに対抗する物質という説があります。

私はスーパー糖質制限食で、体内の酸化ストレスが少ないので、尿酸も少なくてすんでいるというポジティブな仮説もありかと考えています。

食事よりストレスや肥満のほうが、尿酸値への影響が多い

自らが痛風患者であり、痛風専門医でもある、元鹿児島大学病院内科教授、納光弘先生によれば、食事よりストレスや肥満のほうが、尿酸値への影響が多いことがわかってきました。

尿酸を確実に上昇させるのは、重要なものから順番に、

1.ストレス
2.肥満
3.大量の飲酒
4.激しい運動
5.プリン体の摂りすぎ

だそうです。尿酸値に影響を与えるこの5つの要素について、詳しく見ていきましょう。

1)ストレス

じつはストレスが一番、尿酸値を上昇させます。

納光弘先生ご自身が、徹底的に自分で人体実験をされて、ビールより何よりストレスが高尿酸血症の原因と断定しておられます。

納光先生は、学会の会頭を引き受けて、忙しくてプレッシャーが高かった時期が、最も尿酸値が上昇したそうです。でも、学会が終了したら、ビールを飲んでも下がったそうです。これは、もっぱら心理的ストレスですね。

一方、断食は、究極の肉体的ストレスという見方もできます。

ノートパソコンの前で悩むビジネスマン
※写真はイメージです
肥満や飲み過ぎは、やはり万病のもと
2)肥満

体重増加も尿酸を増加させる要因なので、糖質制限食で減量すると、尿酸値も低下すると思います。肥満が改善すれば、尿酸値も改善する可能性があります。

3)大量の飲酒

アルコールを大量に(日本酒で1日3合程度以上)飲めば、尿酸値は上昇し、断酒すれば下降します。

アルコールが尿酸値に影響を与える要因は2つあります。

1つは、アルコールが代謝の途中で乳酸になり、乳酸が腎臓からの尿酸排泄を抑制すること。

もう1つは、継続的に多量にアルコールを摂取した時に(日本酒で1日4合以上を毎日)、アルコールが尿酸の代謝を促進させて、尿酸値が上がることです。

なお、お酒に含まれているプリン体自体の量は、体内の尿酸プールの量に比べて少ないので、ほとんど影響はありません。

たとえば、ビール大瓶633ml中のプリン体は、たったの32.4mgにすぎません。

適量のアルコール摂取であれば、ストレスが解消され、尿酸値を下げるとも考えられます。適量の目安は、日本酒なら1.5合、ビールで約750ml、ワインならグラス2杯、焼酎のお湯割りではコップ2杯程度です。

食事・飲酒は気にしすぎないでいいが、「酒のつまみ」には注意
4)激しい運動

激しい運動は尿酸値を上昇させますが、軽い有酸素運動は大丈夫です。筋トレなどの無酸素運動も、尿酸値を上げます。

5)プリン体の摂りすぎ

プリン体が非常に多い食品は、さすがに大量には摂らないほうがいいでしょう。

しかし、日常的な食生活の中では、プリン体を気にするほどのことはなさそうです。

なぜなら、先にも触れましたとおり、プリン体は約80%が体内で生合成され、食事由来のプリン体は、約20%にすぎないからです。

プリン体の多い食品

①極めて多い(100g中、300mg以上):鶏レバー、白子など
②多い(100g中、200〜300mg):豚レバー、牛レバー、かつお、まいわし、大正えびなど

焼き鳥、白子
※写真はイメージです
プリン体を多く含む食品
編集部作成、出典=公益財団法人痛風・尿酸財団(データは帝京大学薬学部物理化学講座臨床分析学研究室 金子希代子名誉教授提供)

江部 康二(えべ・こうじ)
医師
1950年京都府生まれ。高雄病院(京都市)理事長。日本糖質制限医療推進協会代表理事。74年京都大学医学部卒業。京都大学胸部疾患研究所を経て、78年から高雄病院に勤務。2001年から「糖質制限食」による糖尿病治療に取り組む。02年、自らの糖尿病発症を機にさらに研究に力を注ぎ、「糖質制限食」の体系を確立。05年『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』(東洋経済新報社)で話題となり、以降、糖質制限のパイオニアとして活躍中。

元記事で読む
の記事をもっとみる