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〈Balming Tiger〉プロデューサーのサン・ヤウンが選ぶ、いまセンスがいいもの

  • 2025.6.20
Anri Yamada イラスト
BRUTUS

定義しにくくすること、“混乱”から生まれることもある

2025年現在、最もクリエイティブシーンに熱があるのは韓国と言っても過言ではないだろう。音楽から映像、アートまで日々斬新な作品が生み出され、K-POPはそれら様々なものを取り込んだ総合芸術として世界的な音楽の一ジャンルを築き上げている。

「K-POPはその誕生から、全世界のあらゆる大衆文化をミックスする中で誕生した突然変異のような存在だと思います。だからこそ、“K-POPはこんなジャンルだ”と定義しにくく、それが持つ無国籍性、無境界の概念が好きなんです」

そう語るのは、“オルタナティブK-POP”を標榜するバンドであり、クリエイティブエージェンシーでもあり、ミュージシャンから映像作家、アーティストまでが集うコレクティブ〈Balming Tiger〉のリーダーであるサン・ヤウン。

2024年は、BTSのリーダーRMのソロアルバムをプロデュースし、バンドとしてはイギリスの権威ある音楽フェスティバル『グラストンベリー・フェスティバル』に出演するなど、最先端のクリエイティブを生み出している人物だ。

「センスという言葉が抽象的で難しいお題ではありますが……」と前置きしつつも話してくれた〈Balming Tiger〉のコンセプトにはその一端が垣間見えてくる。

「私たちは、K-POPに“オルタナティブ”という言葉をつけて、より一層定義しにくくすることで、私たちが作り出している、どんな独創的なスタイルでも、変な音楽でも、包括できる名前を作ろうとしたんです」

定義できないようにすることで多面的であること、それがサン・ヤウンが考えるセンスでもある。「何より私が大切に思っているのは、見る人の視線によって違って見えてくるということ。子供の目で見るとただ楽しい内容ですが、大人の目で見ると違って見えるもの。そんなものを作りたいですし、リスペクトします」

一方、ビートルズをチームの最高の手本とする彼にとってセンスのいいチームビルディング、プロデュースとはなんだろうか。

「例えば、映画を作るとします。主演俳優の役割を誠実に遂行し、監督にすべての演出の権限を与えることを好む俳優もいれば、主演俳優の役割だけでなく、演出にも関わりたい俳優もいる。色々な方法にはすべて長所と短所がありますが、相手のやりたいことに合わせて、様々なコミュニケーションを状況に合わせて転換できること、それが私が考えるいいプロデューシングの定義です」

シン・ジュンヒョン
【MUSIC】シン・ジュンヒョン 1938年生まれの“韓国ロックの父”と呼ばれるギタリスト。欧米のロックを取り入れながらも韓国のアイデンティティを表現した第一人者。作曲家としても数々のヒットソングを手がけている。「70年代の韓国にもこのような進歩的で素晴らしい音楽があることが誇らしい。自分の活動の自信につながります」
パク・チャヌク
【MOVIE】パク・チャヌク 『JSA』『オールド・ボーイ』など国際的に評価される作品を手がける韓国の映画監督。右は韓国で2022年に公開された『別れる決心』。第75回カンヌ国際映画祭にて監督賞を受賞した。「毎回進歩的で、実験的な試みをしていて韓国の観客のレベルを上げてくれた映画監督だと思います」
マインド・ゲーム
【ANIMATION】マインド・ゲーム 2004年に公開された、アニメーション監督の湯浅政明の劇場アニメデビュー作。実験的な手法が多く用いられ、中でも3D、2D、実写を織り交ぜた映像表現は、国内外で評価された。「初めて観た時、あまりに驚いて口を閉じることができないくらいすごいと思いました」
チャウ・シンチー
【MOVIE】チャウ・シンチー 香港出身の俳優、映画監督。2023年に公開されたNetflix『モンキー・キング』では製作総指揮を務めた。「彼の風刺とユーモアにセンスを感じます。映画の中で、そこに注目して観ていると、いつの間にか純粋な感動を得られます。ベスト3は、『カンフーハッスル』『最強の出前人』『少林サッカー』です」
ジョン・ブライオン
【MUSIC】ジョン・ブライオン アメリカのニュージャージー州出身の作曲家、音楽プロデューサー。フィオナ・アップル、ブラッド・メルドー、フランク・オーシャンらのアルバムを手がける。映画『レディ・バード』などの劇伴も多数。「平凡な日々さえ特別にしてくれる、彼の音楽にはそんなパワーがあります」
大友克洋
【MANGA】大友克洋 ウェス・アンダーソンはじめ世界的なクリエイターたちがリスペクトを公言する、日本を代表する漫画家、映画監督。代表作は、『童夢』や『AKIRA』などで、作中に登場するメカニックのデザインなども評価が高い。「名作の数の多さには本当に驚きます。そのうえ、一つ一つ緻密で繊細な話なのも素晴らしい」
おやすみプンプン
【MANGA】おやすみプンプン 漫画家・浅野いにおによる作品。2007年から13年まで発表された。全13巻。主人公の少年プンプンの半生をシュルレアリスム的表現を用いて描いている。「とても深いところにある感情と内容を描き出す作品なので、読んでいる間にずっと心地悪い感じもあり、その体験自体がすごいものでした」
ビートルズ
【MUSIC】ビートルズ 言わずもがな、世界の音楽に影響を与え続けるロックバンド。「町の友人であり、偶然出会ったミュージシャンたちが一緒に影響を与え合いながら世界最高に成長したアーティストだということが偉大です。彼らの活動や作品を通して、よいチームとは何かということを考えさせられます」

profile

SAN YAWN(ミュージシャン、プロデューサー)

サン・ヤウン/オルタナティブK-POPバンド〈Balming Tiger〉のリーダー、プロデューサー、クリエイティブディレクター。最新曲は「Wash Away」。BTSのRMのアルバム『Right Place, Wrong Person』のプロデュースも行う。

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