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90年後半から日本中を魅了してきた“演技の天才努力家” 月9女王の1人として輝いた“圧倒的ヒロイン”

  • 2025.7.2

「31年前、日本のエンタメ業界を牽引する存在が地上波デビューしたのを覚えてる?」

1994年にテレビドラマデビューを飾り、日本の映画、テレビドラマ、舞台などで幅広く活躍している女優ーー松たか子。その演技力と多様な役柄をこなす才能で、日本中を魅了し、多くのファンに愛され続けている。

今回は、そんな松たか子の経歴を軸に、その魅力について改めて振り返っていきたい。

歌舞伎一家からのデビューと、“月9の女王”としての初期キャリア

松たか子が生まれたのは、歌舞伎役者の一家。父に二代目 松本白鸚(前名・九代目 松本 幸四郎)、兄に十代目 松本 幸四郎(前名・七代目 市川染五郎)を持ち、自身も1993年の『人情噺文七元結』にて初舞台を踏んだ。世間に広く知られるようになったのは、地上波デビュー作であるNHK大河ドラマ『花の乱』(1994年)だ。これをきっかけに彼女はメディアに登場し、徐々に知名度を上げていくこととなる。その演技は、当初から静かながらも深みのある表現力を持っていた。

1996年には、テレビドラマ『ロング・バケーション』(フジテレビ系)に出演。このドラマは、1990年代の日本における恋愛ドラマブームの象徴とも言える作品で、松たか子はその中で、少し天然な一面を持つ清楚なお嬢様というキャラクターを見事に演じ、視聴者に強い印象を与えた。このドラマは視聴率が好調で、松たか子の知名度と人気を一気に押し上げ、恋愛ドラマの黄金期を築いた作品でもある。

1997年にはテレビドラマ『ラブジェネレーション』(フジテレビ系)で、広告代理店で働くマイペースなOL・上杉理子を演じ、主人公・片桐哲平を演じた木村拓哉とともに主演を務めた。恋に不器用ながらも、真っ直ぐで芯の強い理子のキャラクターを瑞々しく演じ、等身大の働く女性としての葛藤や、恋に悩む姿が多くの視聴者の共感を呼んだ。

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(C)SANKEI

故・藤子不二雄Aの漫画を原作とした1998年のテレビドラマ『じんべえ』(フジテレビ系)では、血の繋がらない父娘の愛情と葛藤を描く物語の中で、彼女は主人公・高梨陣平(田村正和)の娘、高木美久を演じた。この作品で彼女は、従来の恋愛ドラマとは異なる、より人間関係に深く踏み込んだ役どころに挑戦。多感な少女の心の機微を丁寧に演じきることで、女優としての表現力の幅をさらに広げたのだ。

2001年から始まったテレビドラマ『HERO』(フジテレビ系)で型破りな検事・久利生公平(木村拓哉)の事務官・雨宮舞子を演じ、その存在感を不動のものにした。松たか子は、舞子の生真面目さの中に秘められた不器用さや、久利生への淡い恋心といった複雑な感情を細やかに表現。時にサポートし、時にコミカルな掛け合いを繰り広げる二人の関係性は、多くの視聴者を魅了した。

これらの月9ドラマでの成功により、さらに彼女の名は広く知られ、その地位は揺るぎない不動のものとなる。1990年代後半から2000年初頭にかけて、彼女は“月9の女王”の一人であったと言っても過言ではないだろう。

コメディからサスペンスまでーー幅広いキャラを演じた映画での活躍

テレビドラマでその存在感を圧倒的に見せつけた松たか子は、2000年代中盤から後半にかけて、映画の世界でもその多様な才能を遺憾なく発揮し始める。

2006年公開の三谷幸喜監督作品『THE 有頂天ホテル』では、老舗ホテルを舞台にした群像コメディの中で、ホテル従業員の一人である竹本ハナをコミカルかつ人間味豊かに演じた。彼女の演じるハナは、個性豊かな登場人物たちの中で時に冷静に、時に感情的に振る舞い、作品に軽妙なリズムと温かみをもたらした。この作品で、コメディセンスも持ち合わせていることを証明してみせたのだ。

翌2007年には、リリー・フランキーのベストセラー小説を映画化した『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』に出演。主人公・ボク(オダギリジョー)の恋人役という、物語に寄り添う繊細な役どころを演じ、感動的な親子の物語の中で確かな存在感を示した。大人の女性としての包容力と、時に見せる脆さが観客の共感を呼んだ。

そして2010年、彼女のキャリアにおいて大きな転機となる作品が公開される。湊かなえのミステリー小説を中島哲也監督が映画化した『告白』だ。松たか子は、自身の娘を殺された中学校教師・森口悠子という、衝撃的で強烈なキャラクターを演じた。娘を失った悲しみと、生徒たちへの冷徹な復讐心を胸に秘めた森口の姿を、抑制された表情の奥に狂気をはらむような鬼気迫る演技で表現。それまでの彼女の清純なイメージを打ち破るような新境地を開拓し、女優としての演技の幅と深さを世に知らしめることになった。この作品での演技は高く評価され、松たか子の代表作の一つとして語り継がれている。

これらの作品を通じて、松たか子はコメディからヒューマンドラマ、そして骨太なサスペンスまで、ジャンルを問わない演技力を持つ稀有な女優であることを、改めて証明したのだ。

舞台での挑戦から勝ち得た声優としての成功

松たか子の演技は、テレビドラマや映画にとどまらず、舞台の演技でも卓越した才能を発揮し、中でもミュージカルでの成功が大きな転機となった。

特に2009年、初のミュージカル単独主演を果たした『ジェーン・エア』での演技は、松たか子の舞台俳優としての実力を世に知らしめるきっかけとなった。それまでも、『ミス・サイゴン』(2004年)や『ひばり』(2007年)などで、舞台での主演をこなし、高い評価を得てきた彼女の、スキルを総結集した作品となった。彼女が舞台で見せる演技は、テレビや映画とは異なり、よりダイナミックで繊細な表現が求められる中で、見事にその役を体現している。この成功は、松たか子が今後も舞台での活躍を続けるための強固な土台を築き、彼女の演技キャリアの新たな側面を開拓するきっかけとなった。

さらに、2014年には、ディズニー映画『アナと雪の女王』でエルサ役の声優を務め、活動の幅を広げた。歌手活動やミュージカルで鍛えられた歌唱力と、彼女にしかできない繊細な演技は、声優としても評価された。

これまでも、そしてこれからも、日本のエンタメ業界を牽引する“演技の天才努力家”

松たか子は、1990年代から現在に至るまで、ヒロインから強い女性、シリアスな役柄まで幅広いキャラクターを演じ、常に新しい挑戦を続けてきた。ただの演技力にとどまらず、個々の役柄に対する深い理解と感情を込めることができる女優として、時代ごとの変化に適応しつつ、役者としての深みと幅を増し続け、その都度、観客に新鮮な感動を与えてきた。

映画、テレビドラマ、舞台と、あらゆるジャンルで多彩な役をこなす彼女は、今後も女優としての挑戦を続け、ますますその演技力に磨きをかけて、今後も日本のエンタメ業界を牽引し続ける存在であり続けるだろう。まさに“演技の天才努力家”たる彼女が、次に命を吹き込む役柄に期待せずにはいられない。


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